271話 アカプルコに行くには補給基地が必要
「さて、今度は東側の攻略についてだ。アカプルコとフィリピン間のガレオン船の航路がある。いずれイスパニアが発見するはずだ。その航路が見つかれば、イスパニア艦隊がフィリピンにやってくるようになる」
「その航路の説明をする。アカプルコを出ると、貿易風を使ってこの辺りを西に移動するのだ。距離は約12,000km。そのまま60日から90日でフィリピンに到着する」
「ハワイという島国で、水と食料を補給することもできるが、奴らがどうするかは分からない」
「今度は帰りの航路だ。フィリピンを出ると、黒潮海流に乗って日本の沖合のこの辺りを通って北上する。今度はこの辺りで東に向かう北太平洋海流を使って、アメリカ大陸のこの辺りまで航行する」
「次に南に向かう海流に乗ってアカプルコに到着だ。日数は90日から130日くらいだ。この航路には補給できる島はない。あるとすれば日本だな。なかなかに苦しい航海となる」
「蝦夷丸は蒸気の力で移動できるため、航路は自由に選ぶことができる。日本から出航して、この辺りを通ってアカプルコに向かうこともできる」
「しかし石炭を満載して出航しても、石炭のみで航行すれば、半分の行程までたどり着けるかどうか分からない。とにかくアカプルコは遠いのだ!」
「そこで、帆走と石炭航行を併用する。そうすると、アカプルコ港まで到達できるかできないかギリギリだ。その場合は40日から50日程度の航海となるだろう」
「しかしアカプルコで石炭補給ができないから、アカプルコから帰れなくなってしまう。大問題だ!」
「したがって、航路の途中に補給拠点を絶対に設けなければならない。ちょうど良い位置にあるのが、先程のハワイという島国だ。場所はここになる。ここに石炭や食料を貯蔵しておけば良いということになる」
「使える海流や偏西風がないため、キャラック船で直接ハワイ島へ石炭を運ぶのは難しい」
「そこで、石炭の運搬には蝦夷丸を使うことになる。効率よく運ぶためには、日本とハワイ島の中間にある無人島・ウェーク島に、まず石炭と食料を備蓄しておく必要がある」
「そのうえで、ウェーク島とハワイ島の間を何度も往復し、少しずつハワイ島へ石炭を蓄えていくのだ」
「こつこつと進めねばならない骨の折れる作業で、この地道な任務を3年前から里見義弘に任せている。里見衆には本当に苦労をかけている」
「里見家にやってもらいたいことがある……と言われていたのは、ハワイの石炭貯蔵なのですな。気楽に言われていたので気にしていませんでした。申し訳ありません」と勘助。
「しかし、ハワイはなかなか良いところみたいだぞ。一度行った里見家の者たちは、また行きたがるそうだ」
「毎回たっぷりとお土産を持っていくこともあり、ハワイの王からは大歓迎されているそうだ。島の住民たちも、石炭運びの対価として日本の産品を渡しているので大歓迎されているらしい」
「ちなみに義弘は、ハワイの王の娘を妻にもらっていて、ハワイ島に義弘の屋敷もあるそうだぞ。何だかハワイ島の方にいる期間の方が長いらしいぞ」
「話を戻すと。我らにとってその島が重要な補給拠点ということは、イスパニアを始めヨーロッパ諸国にとっても、将来的には同じことを考えるだろう。我らのため、平和な島の住民のため、ハワイ諸島は日本で守らないといけない」
「補給の問題はそれでいいとして、次は新イスパニア領をどう攻略するかだ。その新イスパニア領だが、元々はアステカ帝国という大きな国があって、その国がイスパニアに滅ぼされたという話はしたと思う」
「これから話すことは、豊穣神様から聞いた話だ。アステカ帝国というのは大きな国だったそうだ」
「首都テノチティトランには20万人くらいの人が住んでいたという。人の多さは日本の京の都くらいのかな。ちなみに首都テノチティトランは湖の中に作られた街なのだ。アステカ帝国が支配する地域には1,000万人の民が住んでいたという」
「イスパニアは、そんな大きな国を滅ぼしたのですか?」と信長が驚いている。
「アステカ帝国の支配地域の中には、アステカ帝国を良く思わない連邦国があったのだ。4つくらいの国から構成されるトラスカラという国がその筆頭国だ」
「イスパニアはアステカ帝国の攻略に当たり、まずトラスカラを味方に引き入れることから始めたのだ」
「イスパニア軍自体は、たったの1,000人程度だった。しかし反アステカの国を次々と味方に引き入れることに成功する」
「首都テノチティトラン最終攻略戦では、周辺国から10万の兵が集められる。10万の兵に攻め込まれてテノチティトランは陥落するのだ。イスパニアの戦略が優れていたということだ」
「武器についてだが。アステカ帝国の武器は槍、盾、弓だ。金属製の鎧はない。槍も石の槍だ。狩りの道具の延長だな」
「それに対してイスパニア軍は金属製の鎧、剣、槍、クロスボウ、銃、大砲、馬だ。馬による攻撃もかなり有効だったようだ。イスパニアの武器の優位性があったということだ」
「新イスパニア領の総督はルイス・デ・ベラスコという男だ」
「アステカ帝国の最後の皇帝はクアウテモック。皇帝は勇敢な男だったらしいが、イスパニア軍に捕まり殺されている」
「アステカ帝国が滅ぼされて既に約30年が経つから、クアウテモックの子孫は、もういないかもしれないな」




