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【改訂版】戦国時代の忍者に転生させられちゃいました  作者: ゲンタ


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172/268

172話 あなたがやるのよ

天文17年(1548年夏)――17歳


そもそもさ、豊穣神様って……この日の本が担当じゃないのかな?

他の国にまで手を出したら、その国の神様に怒られるんじゃないの?


神様って、縄張り争いとかないのかな……?

というか、この神様は、いったいどこまで管轄してるのかな?


『問題ないわ』


……即答なの?

あいかわらず俺の心の声、ぜんぶ聞こえてるんだな。


転生してきた当初なんて、俺にほとんど興味なかったくせに!

期待なんかこれっぽっちもしてなかったくせに!


『今はあなたに期待しているわよ』


『……そうですか。大変ありがたく存じます』


思えば、ここまで俺は本当によく頑張ってきたと思うんだけどな。

頑張った人には休暇とか、ご褒美とか、ちょっとした優しさとか……あってもいいと思うんだよ、うん。


……なのに、俺の切実な心の叫びには、なんの反応もなし!?

そういう感じ? そういう主義? 神様……。


『信長は、この時代きっての英傑ですよ! 私なんかより、ずっと、ずっと優秀です。私は本当にただの人。そこらにいる普通の人間です。やっぱり……英傑に任せた方がいいんじゃないかと……』


『本当に、英傑だと思っているの?』


『……そりゃまあ。確かに……信長だって完璧ではないですよ。でも、頭は切れるし、決断力もある。カリスマ性もあるから、癖の強い部下たちも彼には喜んで従ってるんです』


『それだけじゃないわよね……?』


『……まあ、心が……多少、若干……繊細なところがありますけど……でも、それが逆に部下たちには魅力になってまして……』


『それで?』


(いくさ)で人をたくさん殺すと、繊細な心には多少……』


『多少、なにかしら?』


『……心が、多少病むかも……』


『あなたは、たくさん殺してきたのに、病んでいないわよね?』


『……“戦国の殺人王”みたいな言い方、やめてほしいな……』


(あれ……待てよ……じゃあ俺って、どういう人間なんだ? 鈍感……?)

(それとも、戦国時代が転生先だから現実感が薄いとか?)

(いやいや、そんなことない。俺だって人間だよ。罪の意識だってあるし、心の負担もある)


……だいたいさ、人を楽しんで殺せる奴なんて、いるわけないだろ。俺だってそうだ。だけど、何もしなければ――無関係な民が、理不尽に死ぬ。


だから俺がやるしかなかったんだよ。

無理してもやらなきゃ、守れなかったし、誰かが、やらなきゃいけなかったんだ。


『はっきり言うわよ――』


『信長は、心が弱いのよ! 頭が良いだけじゃ足りないの。信長は、あなたの部下でいる方が能力を発揮できるタイプ! ほんとは分かってるでしょ? 氏親? あれは、ただの凡人でしょ!』


(あら〜、神様……言い切ったよ……)


まあ……確かにな。

俺の責任で“(いくさ)=大量殺人”を請け負ってるからこそ、信長は迷わず、心の傷を負うことなく、その天才ぶりを存分に発揮できてるんだろうな。


……ちくしょう。論破すんなよ。

やりますよ、はいはい。やりますとも!


***


仕方がない……やるべきことは、さっさと片づけるしかないか。

軍師の勘助と幸隆、それに将軍・信長を交えて、日本統一に向けた戦略会議だ。


それにしても――

なんでこいつら、楽しそうな顔してるな。

休養がほしくて苛ついてる俺とは正反対じゃないか……。


……いいよな。お前らは。

俺にだって……

そろそろ、休みを寄越せよな……


俺は西国の現状説明を始める――


「まずは西国の現状を説明する。“忍者調査隊”や“正直屋系列店”からの報告によれば、いま数カ国を支配している大名は、大内、尼子、大友、三好の四家だ」


「勢いがありそうなのは……島津、龍造寺、毛利、長宗我部あたりか。それ以外の大名は、どこも規模が小さい。しかも大名たちも、相変わらず領地争いばかりしてるようだ」


(いくさ)をやれば農民兵が死ぬ。農民兵が死ねば田畑は荒れる。作り手が減れば、米の収穫も減る」


「米が足りなくなれば、隣国に(いくさ)を仕掛けて奪いに行く。そしてまた農民が死ぬ。延々とこの同じことを繰り返してる」


「……その間に疲弊していくのは、いつだって民だ。無意味に死んでいく。バカの極みだな、あいつらは!」


「領地を治める力もない。ただ搾り取ることしか頭にない」


「そんな連中に土地を与え、好き放題やらせていたら、この国はいずれ崩壊する。

無能な大名どもには、さっさと国政の舞台から退場してもらわないと困る」


「信長。今の段階で、将軍家である北畠家から『臣従せよ』と命じたら……西国の大名たちはどう出ると思う?」


「……“忍者調査隊”の情報によれば、ほとんどの大名が“臣従したがっている”とのことです」


「それはなぜだと思う?」


「え? 西国の大名が臣従するだけでは……不十分なのですか?」


「西国の大名が“早く臣従したがる”理由……それこそが、むしろ問題なんだ」


俺は地図を見つめながら言葉を続ける。


「奴らは、北畠幕府もいずれ室町幕府と同じ道をたどると見ている。つまり、“将軍家の中でいずれ内紛が起きる”と、最初から確信しているわけだ」


「『今のうちに臣従しておけば、領地は安堵される。将軍家の内輪揉めが始まったときに、上手く立ち回れば、自領も権力も拡大できる』……それがやつらの本音だ」


勘助が静かに言葉を挟む。


「確かに、そのような目論見で臣従されても、国の土台が腐りますな。無条件での臣従は許してはならぬでしょう」


「また、領地の保有も一切認めず、“役職と職務に応じた収入を銭で支払う”仕組み──この制度に従わせることが、最低限の条件でありましょう」


「つまり……連中から、領地をすべて取り上げることが絶対に必要なのだ」

言い終わって俺はため息をついた。


更に続ける……

「当然、従うわけがないよな。『先祖代々、命を賭して切り取った領地を何だと思っているのだ!』と、怒り狂うに決まっている」


「だが──それでもやらねばならんのだ!」


「『領地を取り上げられても、臣従せざるを得ない』と、大名たちに思わせるだけの“絶対的な優位”を示すことが必要だ」


信長と勘助が同時にうなずく。

静かな会議室に、重く深い空気が流れていた。


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