164話 三河を潰せ
天文16年(1547年夏)――16歳
そういえば、秀吉、死んじゃいました。
好きになったアイヌの女性を熊から守ろうとして……大怪我で亡くなったそうだ。
秀吉は前世の歴史では、信長の後を継いで天下統一を成し遂げる英傑だ。
よもや熊に殺されるような人生ではないはず……理由はなんだろう?
蝦夷国で、英傑を便利使いしていたからかな?
とにかく、今までありがとう……
秀長くんはまだ12歳だから、俺が責任持って面倒見るからね。安心してくれ。
だが、そういうことなら、うちの若手武将なんかは、蝦夷国に置いておかないで、信長の元で天下統一に活躍させた方が良いのかな?
どうなんだろう?
しかし神様に聞くのは止めておこう。
とんでもなく怖いことを……さらっと言われそうで怖い……。
ところで……
北畠の広大な領地の中に、ポツンと1ヶ国だけ三河領が残っている。
三河の元康くんは子供なのだけど、その存在に妙に危険を感じるんだよ。
だから、今川館を攻撃した時に松平家の人質を確保し、どこかの田舎で静かに暮らしてもらうつもりだった。しかし、三河に逃げられてしまった……これも運命なのかな。
松平家は潰すことに決めている。
これからの歴史の流れに元康くんはいらない。むしろ、今の歴史の流れに悪い影響を及ぼしそうな気がする。
理由が判らず、秀吉が死んでしまったこともあるからね。きっと何かあると思う。
俺の第六感アラームが、“コイツは危険”と……ピコピコしている。
今日は、勘助と幸隆と3人で、 “三河をどうするか”会議だ。
「先の大戦で、ポツンと1ヶ国だけ残ってしまった三河領をどうするかなのだが、こうするのはどうだろう? 三河に米商人を派遣する。その商人に三河の米を高値でも良いので買い占めさせる。そうすると三河には銭が入り、米が少なくなる」
「買い占めるのに使った銭は、滅ぼした松平家から回収すればいいから、気にする必要はない。でも奴らも銭を使いたいだろうから、焼酎でも売ってやろう。最後に焼酎くらいは、たっぷり飲ませてやろうじゃないか」
「なるほど……そうしておいて、秋の米が収穫された折に、“忍者撹乱隊”を三河へ潜り込ませ、米蔵に火を放たせて回らせるおつもりにございますな」
(勘助わかってるね)
「そして、“忍者撹乱隊”に噂を流させるのですね。『松平家の米蔵に火をつけたのは一向宗』、『一向宗の米蔵に火をつけたのは松平家』」
(幸隆わかってるね)
「当然、三河領を“陸上封鎖”に加えて“海上封鎖”しておく必要があるぞ。急にやると勘ぐられるからな。そうすれば、三河領には徐々に米がない状態になっていくはずだ」
「両者が盛り上がってきたところで、“忍者撹乱隊”に“松平家の兵士の格好をして一向宗信者を襲わせる”、逆に“一向宗の格好をさせて松平家家臣を襲わせる”のですね。腹が減るとイライラしますからな」
(そうそう、勘助、その通り。いや〜、我が軍師たち、優秀!)
「これで、一向宗と松平家の泥沼の抗争が勃発だ。食い物の恨みは……なんとか……と言うからな。激しい潰しあいが始まるだろう。こちらは国境を固めておきながら、いつでも出撃できるように待機だ」
「いい頃合いを見て国境に配備した兵を三河に突入させる。ヘトヘトになって生き残っている残党を始末して、はい、お終いということですね」と幸隆。
(そうそう、幸隆、いや……どんどんプランが決まっていく)
「どんどん作戦が決まっていくな。忍者撹乱隊は“旧武田忍者”を使ってやってくれ。彼らにも、見せ場を作ってやろう。それと霧山城で訓練中の武田特殊部隊は、“甲州特殊部隊”という名前にしよう」
「ついでだが、越後の軒猿の生き残り連中や、尾張の饗談も仲間に入れてほしいらしい。特殊部隊がどんどん増えるな。楽しみだ! 名前は“越州特殊部隊”に“尾州特殊部隊”とでもしておこう」




