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第24話 勇者、別れの時が近いことを悟る

 解散式が終わり、晩餐会が始まると、姉さんに「叙爵おめでとう」と言われた。


「苦しゅうないぞ」と言ったら「……調子に乗ってるわね」と呆れられた。


 どうやら、俺はレオンより上の身分になったらしい。レオンは公爵家では? と思ったが、レオンは跡継ぎではないので、侯爵本人である俺より下になるらしい。

 姉さんは侯爵の姉だ。これからは身分違いなんて気にすることはない。残り時間はあとわずかだけど……。


 そうこうしているうちに、音楽が流れ始め、ダンスが始まった。

 レオンは早速姉さんを誘って踊り始めた。

 よし、次は俺の番だ。レオンの動きをしっかり見ておく。さすが貴族だ。文句なしにうまい。


 一曲だけ踊って戻ってきた。


「姉さん、俺も!」


 声をかけたが……


「いいけど、踊れるの?」


 見くびられている。「ちゃんと見てたから」と言ったが信じていないようだった。

 だが、姉さんの予想以上には踊れていたみたいだ。「結構やるわね」と言われた。

 猛特訓した剣の足捌きが、ダンスにも役立ったのかもしれない。


 俺の次はオーブリーと踊っている。その様子を見ていると……


「レオン様、一曲お願いできます?」


 アデリーナが現れた。レオンは当然断る。だが、


「先ほどは踊っていらしたでしょう?」


 あくまで食い下がる。それでも、サーヤは護衛対象だから問題ないと言われて去っていった。

 さっきはあんな嫌味を言っておいて、どういう神経をしてるんだろう?

 執着されているレオンが気の毒になった。


 気づくと、姉さんは第一騎士団長と踊っていた。姉さん、人気で、休む間がない。

 ようやく戻ってきたところに……


「僕とも踊っていただけますか?」


 ヘンリクだ。間近で見ると、やはりすごい美少年だった。俺でも見とれてしまいそうになる。


「お前はダメだ」

「えっ!?」


 なぜかレオンが断っている。ヘンリクは困惑している。気の毒に……。

 だが、姉さんがこのチャンスを逃すはずがない。


「意地悪を言わないでください。……ヘンリクさん、お願いします」


 そう言って、ヘンリクの手を取って行ってしまった。

 これは……あとで一悶着あるな。姉さんはそれをわかっていながら、ヘンリクと踊る方を選んだのだろう。推しへの執念がすごい。


 ヘンリクのダンスは軽やかだ。姉さん、楽しそう。

 後ろの方で声がする。


「……楽しそうだな」


 レオンだ。声が低い。オーブリーがなだめているが、明らかに納得していない。

 レオンの周囲にどす黒いオーラが渦巻いている。

 姉さんが戻ってきた瞬間……


「サーヤ、もういいな。テラスに行くぞ」

「えっ、ちょっと……」


 強引に連れ出した。ついに我慢の限界に達したようだ。いや、よくここまでもったと褒めたほうがいいかもしれない。


                 +++++


 俺がダニエラと踊っている間に二人は部屋に戻ったらしい。

 二人に残された時間は短い。


(姉さん、ここに残るとか言わないよな……)


 姉さんは現実的に考えられる人だ。恋人一人と日本に残してきたすべてを秤にかければ答えは決まっていると思うが、わずかに不安になる。


 俺とオーブリーも宿舎に戻ることにした。


「あの二人、ちゃんと別れられると思います?」

「レオンが心配だな……」

「……ですよね」

「最初からわかっていたことだし、覚悟はできていると思うが……」


「俺も、オーブリーさんと離れるの淋しいッス」

「俺もだ」

「教育係がオーブリーさんでよかったです」

「そう言ってもらえると嬉しいよ。ケントには、本当に苦労をかけて、すまなかった」

「いえ、今となっては、いい思い出ですよ」


 姉さんも、いい思い出はたくさん作ったと思う。それでも……


(帰るとき、泣くだろうな……)


 それだけは、俺にもどうしようもないことに思えた。

 叙爵なんてされても、この『別れ』の切なさだけは、侯爵の権限でもどうにもできない。


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