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第17話 勇者、仲良し四人旅が始まる

 バレンタインデーの二日後……。

 俺たちは四人でヴルカリスへと出発した。


 馬車の中で、「姉さん、魔獣王の写真見る?」と言ったら「見る!」と言って隣に移動してきた。

 一緒にスマホの画面を見る。

 ちょうど聖剣を首筋に突き立てたところだ。突き立てた後でしばらく固まっていたのが幸いして、その瞬間の写真をうまく撮れたらしい。

 自分で言うのもなんだが、とてもかっこよく見える。


「……かっこいいじゃない」


 姉さんもそう言ってくれた。


「でも、そのときはもうだいぶ弱ってたんだよ」

「それでもよ。近づくだけで怖いでしょ、こんなの」


 確かにそうだ。足が震えたことは言わなかったけど。


「正直、ここまでやれるとは思ってなかったわ」


 見くびられていたのかと思って「ひどくない?」と言うと、「褒めてるのよ」と言われた。


 オーブリーも、


「いや、ケントは本当によくやった。あの短期間であそこまで戦えるようになるとは思わなかった」


 と褒めてくれた。


「そうだ、これ、ありがとう。まだ余ってるよ」


 俺はそう言ってモバイルバッテリーを返した。


「私のスマホはもうほとんど残量ないから、ずっと使ってなかったの。充電しようかな。レルナの写真とかも見てほしいし」


 姉さんはそう言って自分のスマホを取り出し、モバイルバッテリーをつないで電源を入れる。俺は、その画面を見て目を疑った。

 こないだまでビョルン・アンドレセンだった待受画面がヘンリクになっている。


「姉さん、これ……」

「ん?」

「まずくないか?」

「見られないようにするけど……」


 横から覗き込んだオーブリーも一瞬固まったが、すぐに目を逸らした。見なかったことにするようだ。

 姉さん、正気か? 何でこんな地雷を仕込んでるんだ?


「見られないとか無理だから……」

「そう?」


 二人でひそひそ話していると、レオンがこちらを気にし始めた。


「せめて日本に帰ってからにしなよ」

「……わかった、そうする」


 姉さんは、しぶしぶ待受をビョルンに戻した。

 いや、そこはレオンの写真じゃないのかよ?

 美少年に対してどんだけ貪欲なんだ……。

 やはりちょっとレオンが気の毒になった。


                 +++++


 昼食に入った店は、姉さんたちが前回も来たところらしい。

 扉を開けると、店主が驚いたように言った。


「……レオン様」


 レオンは覚えられていたらしい。そして……


「……そちらは、もしかして勇者様で?」


 俺が勇者だとわかったらしい。


「そうだ。よくわかったな」


 レオンが言うと……


「お姉様と似ていらっしゃいますから」


 店主の言葉に、俺は少し照れくさかった。

 自分では似ていないと思っていたけど、この世界の人から見れば、俺たちの絆は隠しようもなく滲み出ているのかもしれない。


 あまりメニューは多くないらしく、煮込み料理が出てきた。だが、文句なしに美味い。そして……


「こちらは、ささやかですが」


 注文していないのに、大皿いっぱいのサラダが運ばれてきた。


「この国を救ってくださったお礼です。本当にありがとうございました」


 感謝されると素直に嬉しい。


「ありがとうございます!」


 礼を言って頭を下げた。

 とても温かい雰囲気の店だった。


                 +++++


 夕方、カリエンティラという宿に到着した。

 夕日に照らされたそれは、まるで城のようだった。姉さんによると、中もすごいらしい。


 レオンに姉さんと一緒の部屋がいいかと聞かれた。


「俺はオーブリーさんとでいいッス」

「気を遣わなくていいぞ」

「いや、馬に蹴られて死にたくないんで」


実際、二人に気を遣ったというのもあるが、オーブリーと一緒に過ごしたいというのもあった。姉さんとは、日本に帰ってからも会えるのだから。


 ダイニングで夕食をとりながら、明日の予定を立てた。

 俺とオーブリーは渓谷へ、姉さんたちは部屋でのんびりするらしい。

 明後日は、オーブリーの実家に誘われた。領地はお兄さんが管理しているらしい。

 勇者にたちに会いたいと言ってくれているそうだ。


 義姉はレオンのファンだと聞いて、姉さんは一瞬引いていた。アデリーナ嬢や観劇のときのことがトラウマになっているのかもしれない。


「姉さん、この後、温泉入りに行っていい?」


 と言うと、


「いいわよ。ね?」


 とレオンに同意を求める。


「……ああ」


 レオンはそう答えたが、わずかな間があった。やっぱり俺たちと一緒に入るのは気に入らないのだろうか?

 俺はパレオなしで一緒に入ったこともあるけどな! 十年以上前だけど……。


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