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フォーフーム戦機  作者: 女又心
真章 誰がために

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真実

 チェイサーの話によると、彼(彼女?)の母星ではある時期を境に、世界各地で謎の失踪事件が多発するようになったそうだ。


 高度な技術力を誇る彼ら星間文明は、その神隠し現象が謎の異星体――つまりアンフィビアンによって引き起こされていることを何とか突き止めたものの、思念体として活動可能な奴らに対抗する手段はなく、一方的に住民のアブタクトを許す状況がしばらく続いたという。


 そこで彼ら星間文明は苦肉の策として、星全体を不可侵の絶対障壁で覆い、その内に閉じ籠もる籠城作戦を決行に移した。この絶対障壁は思念体の侵入を拒む程の代物であると同時に、ある有益な副次的効果を彼らにもたらす。


 その副次的効果とは、絶対障壁内に生じる時空の歪みが、思念体の状態維持に支障を(きた)すというもの。具体的に言うと、奴らの昇華を阻害し、思念体として活動できなくさせてしまうのだ。


 偶発したこの特性の影響により、たまたま絶対障壁内に閉じ込められたアンフィビアンは思念体を維持できず、また実体にも戻れないまま消滅したらしい。


 この予期せぬ結果を受け、星外にいた生き残りのアンフィビアンは、チェイサーの星からの資源回収を断念。貯蓄したエネルギーが枯渇する前に、次なる新天地を求めて外宇宙へと旅立って行った、とのことだった。


『現在、この星(地球)を襲っているアンフィビアンは、その際に退却した一分子だと目されます。なお、アンフィビアンが発生した経緯は不明ですが、知的生命体を捕食する生態の性質上、その絶対数はそう多くないと思われます』


「まあ、そうだよね。数が増え過ぎれば、いつか同胞とのエネルギーの奪い合いは免れないし、場合によっちゃ共食い・自滅の一途だもん」


 チェイサーの話を傾聴していた正博は、ふと思い付いた疑問を口にする。


「それにしても、アンフィビアンには、捕らえた知的生命体を繁殖して増やすって発想はなかったのかな? 新しい星を探すよりも、そっちの方が大分効率的というか、手っ取り早いような気がするけど」


『その点については我々も長年不思議に感じていましたが、この星で得られた()()()()を解析した結果、おぼろげながら仮説を立てることができました。おそらく彼らは、外見上の雌雄の区別はできても、生殖の概念は理解していません。故に、手に入れた知的生命体を後生大事に冷凍保存しているのだと思われます』


「……あるものって、なんですか?」


 つっけんどんなレイチェルの問いに対し、珍しくチェイサーは話をはぐらかす。


『それについては改めて後程。今その件に言及すると色々とややこしくなりますので』


「…………」


 レイチェルの懐疑的な視線を物ともせず、チェイサーの語りは再開する。


 かくして、(から)くもアンフィビアンの脅威を退(しりぞ)けることに成功した星間文明であったが、当時の彼らでは奴らを完全に撃滅することはできず、絶対障壁に閉じ籠ってやり過ごすのが関の山だった。


 結果的にアンフィビアンを野に放つ形となってしまった星間文明は、せめてもの罪滅ぼしとして、まだ見ぬ宇宙の同胞らの手助けとなるべく、チェイサーら追跡機構の派遣を決定した。今、正博たちの目の前にいるチェイサーは、その内の29番目に製造・派遣された個体らしい。


 追跡機構に課せられた主な役割は次の三つ。


 一つは単純に、逃走したアンフィビアンの行方を追跡すること。


 次なる役目は、派遣先でもし万一アンフィビアンの被害に遭った星を見つけた場合、その星の住民が抵抗を試みているようであれば、彼らに対策技術や情報を授け、そのアシストを。何が起きているか理解できず抵抗にすら至らない未開の星については、彼らに代わって戦うピンチヒッターを、それぞれ状況に応じて行うこと。


 そして最後の役割が、この一連の過程で得られたデータを本国や他端末にフィードバックし、対アンフィビアンに関する情報精度の向上を図ること、だという。


「……ってことは、あれ? ええっと、この場合、地球はどっちのケースに当てはまるんだ?」


 うんうんと考えを巡らせる正博に、しかしチェイサーは、静かに首を横に振って見せると、


『残念ながら、この星は、そのどちらにも該当しませんでした』


「へ? どういうこと?」


『……これから明かす内容は、あなたたちにそれなりの覚悟を強いる可能性が高いです。話も長くなりましたし、ここは一寸(ちょっと)一服、小休止を挟みましょう』


「は、はあ……」


 にわかに怪しくなってきた雲行きに、正博は知らず固唾を飲んでいた。





 休憩を兼ねて、チェイサーは正博たちをドーム状の施設外へと連れ出した。


 数分程歩いて浮島の外縁部まで辿り着くと、そこからは結界の外に広がる純白の世界が目に入る。


「ここに来た時からずっと気になってたんだけど、何がどうなって、地球は今こんなことになってるの?」


 正博の至極真っ当な疑問に、チェイサーは片手を挙げて応じる。


『そう焦らずとも、今から順番にお話ししますよ。全ての事柄は密接に繋がっているのです。後になって、やっぱり聞かなければよかったなどと愚痴をこぼさないことを祈ります』


「お、脅かさないでよ……」


 引きつった笑みを浮かべてたじろぐ正博を特に気にした様子もなく、チェイサーは語りを再開する。


『……先程の話の続きですが、この星の上層部は、他の星では見られなかった別の方法で延命を模索していました』


「別の方法?」


 聞き返した正博に、チェイサーは『はい』と頷く。


『アンフィビアンの暗躍に独力で気付く高い技術力を有しながら、()の存在による無差別な命の略取に恐怖したこの星の上層部は、アンフィビアンに対し早々に全面降伏の意を示した上に、あろうことか、新しい時代を作る若い世代――即ち、あなたのような生体エネルギーが豊富な子どもたちを、進んで奴らに提供したのです』


「……………………え?」


 その言葉の意味を理解するのに、正博は数秒の時間を要した。


「……それって、要はつまり……一部の大人たちが、我が身可愛さのあまり、僕たちをアンフィビアンに売り渡したってこと?」


『包み隠さずに言えば、その通りです。身寄りのない子どもたちを保護の名目で引き取ったり、経済的に困窮している家庭から大金と引き換えに子どもを譲り受けたり……とまあ、ありとあらゆる方法でかき集めた――こう言ってはなんですが――いてもいなくても困らない子どもたちを人身御供にすることで、この星は束の間の平穏を手にすることに成功していました』


「……そ、んな、こと、って……」


「で、では、光一さんや葉月さんも、同じ理由で……」


 それまでほぼ無言を貫いていたレイチェルも、流石にこのショッキングな打ち明け話には驚きを隠せなかったようで、口元を手で押さえながらひどく衝撃を受けているようだった。


 ただでさえ救いのない真相に加え、続けてチェイサーの口から発せられた言葉の内容は、更に想像の斜め上を行くものだった。


『他に類を見ない非道な行いを目にした私は、高い知性を持ちながら道徳的に未熟なこの星を救う価値がないと判断し、本国もその見解を支持しました。そして、慎重に審議を重ねた結果、この星を救援するのは止め、逆に活用することでアンフィビアンのサンプルを捕獲し、その生態解明に繋げていく方針にシフトしたのです』

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