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フォーフーム戦機  作者: 女又心
真章 誰がために

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白の世界

 時は再び、アンダーソン攻略戦の最中まで遡る――



「えっ!? コアの反応ロスト!?」


「ち、違います! これは……!」


 唐突に身を襲う浮遊感。


 間もなく訪れる落下する感覚に、正博の頬は意思とは無関係にひくつく。


「お、落ちてる……? 巨大なクレバスにでも嵌まった?」


「どこかに飛ばされたのはコアではなくわたしたちの方です! ここ、アンダーソンじゃありません!」


「はいぃ!?」


 地中を掘り進んでいたはずの機体は、いつしか一面真っ白の空間に投げ出されていた。


「ひ、ひとまず! HDCE(高密度圧縮展開)は一旦解除しとこう!」


「りょ、了解です……!」


 レイチェルの操作に従い、ヴァームラウスを内包するエネルギー球体の発光現象が徐々に収まっていく。


 自由落下に任せるままのヴァームラウス内で、正博とレイチェルは取り急ぎ状況把握に努めた。


「アンダーソンじゃないって……なら、未知の次元断層ってこと!?」


「いえ、それが!」


 一瞬、躊躇するようにレイチェルは言葉を詰まらせる。



「……計器類によれば、ここは通常空間、成層圏を抜けた先の日本上空、みたいなんです」



「日本だって!?」


 驚愕の事実に面食らった正博は、慌てて眼下の光景をコックピットモニター越しに食い入るように見下ろす。


 彼らが今いる高度10キロ弱の位置では地表に近過ぎて、特徴的な日本列島の全像を確認することはできない。


 いや、そんなことよりも、


「……これが、本当に僕の知る地球なんだとしたら……一体、この星に何が起きてるっていうんだ……?」


 白い空。


 白い海。


 白い大地に、白い街。


 ヴァームラウス以外の一切が白で彩られた奇怪な世界。


 そこに、生命感は微塵も感じられなくて。


「……こんな場所で、人類は今も生き残ってるっていうの……?」


「――ッ!? 正博さん、お気を確かに! こちらに猛スピードで接近する機体反応があります!」


「このタイミングで!?」


 そこで正博は、とある可能性に気付き、ごくりと生唾を飲み込む。


「……まさか敵は、アンダーソンのコアを囮にして、僕らをこの空間に誘き出したのか……?」


「数は二機……――え? そ、そんな……」


 何やら愕然としている様子のレイチェルを正博は振り返る。


「今度はどうしたの!?」


「ま、正博さん……」


 非常に困惑した面持ちで、レイチェルは正博の顔を見返す。



「……近付いてる二機の反応……識別信号が、レイルバインとギルクラスターのものなんです」



「へ? それって、前の二組が実は生きてたってこと?」


 正博の疑問を他所に、急接近した二機は、両機の間にヴァームラウスを挟み込む形で、依然落下し続けるこちらの機体を取り囲む。


 スラスターもなしに慣性制御で自在に飛行浮遊する()と黒のHSを、正博は怪訝そうに交互に見比べる。


「この二体には、ちゃんと色があるね……。そ、それにしても、随分と雰囲気の異なる兄弟機なんだね、レイルバインとギルクラスターって」


 同意を求めるように正博が後方を振り向くと、後席に座すレイチェルは、見るからに顔面を蒼白とさせていた。


「……レイチェル?」


「……あれは、レイルバインとギルクラスターではありません」


「えっ?」


 レイチェルによると、レイルバインの識別信号は黒い道化チックなHSから発せられているという。


 そして、もう一方の紅いHSから、ギルクラスターの反応は出ているとのことだった。


 その騎士甲冑を思わせる全身は赤を基調としており、銀のフェイスシールドの奥には黒いバイザーが見え隠れしている。


 この赤騎士風HSは、身の丈を超える大剣を無造作に肩に担いでおり、その威容は棒立ちにもかかわらず、対峙する正博たちを牽制するのに十分な威圧感を発揮していた。


 得体の知れない正体不明機を前に、正博が素朴な疑問を呈する。


「敵がわざわざ、こちらの識別信号を偽装したってこと? 僕たちの動揺を誘うために?」


「もしくは、鹵獲した二機のコアブロックを流用しつつ、それ以外の外装やシステムを刷新して自軍に取り入れている、などでしょうか」


 そこまで言って、レイチェルは不可解そうに爪を噛む。


「……ただ、説明がつかないんです」


「説明?」


「はい。……レイルバインはまだ分かります。オーランド解放後に自爆し、残骸がインザクアに墜ちているので。……一方、インザクアの消失は、これまでギルクラスターの自爆特攻による捨て身の戦果だと思われていました。機体は完全にロスト……なのに、そのコアブロックが無事、あるいは、識別信号が解析可能な状態で、今も向こうの手の内にある。ということは……」


「……ギルクラスターの鹵獲後に、敵がインザクアの次元断層を自ら解いた?」


 レイチェルの言葉を受けての正博の推理に、彼女は頷く。


「今回の、わたしたちを次元断層の内側(地球)に招き入れるような動きといい、一体何がしたいのか……敵の目的が、全く見えないんです。そもそも、単なる防衛機構ならいざ知らず、そうした何らかの意思を持った敵性存在が、今も地球に残っていること自体、にわかには信じられなくて……」


「そ、そう言えばそうだよね。博士の話だと、地球を次元断層で覆った敵性体は外宇宙に去ったってことだし」


 錯綜する事態に二人が戸惑いを隠せずにいると、それまで沈黙を保っていた赤と黒のHSから、それぞれ警告メッセージが送られてきた。


『その機体は完全に包囲されている。速やかに武装を解き、こちらの指示に従われたし。当方に害意はない』


『なお、こちらは既に、(アンチ)バリアフィールド、並びに、自爆装置(スーサイド)キャンセラーを実用化している。無駄な抵抗は推奨しない』


「……な、なんか、さらりとすごいこと言ってない?」


「そ、それに、今の声は……」


 目まぐるしい展開の移り変わりに、正博とレイチェルはお互いの顔を見合わせる。


「ど、どうする……?」


「どの道、陸戦に特化したヴァームラウスに空中戦は不可能です。ここは大人しく、相手の言うとおりにするしかないと思います」


「だ、だよね。諸々判断するためにも、可能なら先方から何かしら情報を得たいところだし」


 レイチェルとの簡単な意識合わせを終えた正博は、ヴァームラウスに武装をパージさせ、機体の両手を挙げて降伏の意を示した。

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