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フォーフーム戦機  作者: 女又心
第三章 橙陸のアンダーソン

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アンダーソン攻略戦

「――アライバルアットアンダーソン。メテオシーケンス、解除します。ユーハブコントロール」


「あ、あいはぶこんとろーる?」


 アンダーソン突入と同時に周囲を埋め尽くす地層をしばらく掘り進み、ある程度(ひら)けた空洞に出たところでレイチェルはヴァームラウスのコントロールを正博に引き渡した。


 シミュレーターでの経験を活かし、すぐさま正博はカメラを暗視モードに切り替え、視界を確保する。


「ほえー。リアルだとは思ってたけど、ほんとシミュレーターでやったのと大差ないや」


「あたしの調整したシミュレーターは完璧よ、がシーラお姉様の口癖でしたから。ですが、シミュレーターと違ってここではやり直しがききません。気を引き締めていきましょう」


「おっけー合点承知の助!」


 正博は機体の腰部スカートアーマーからレーザーガントマホークを一挺取り出すと、それを右手に携えながらヴァームラウスを漸進させる。


 特殊センサーが捉えた核の反応を頼りに道なりに機体を進めていくと、早々に洞穴の袋小路に突き当たった。


「どうしよ。まだ先は長いし、ここは無難に引き返しとく?」


「ちょっと待ってください……」


 レイチェルが各種センシングを行う。


「……周辺に熱源、なし。地盤強度、安定。進行方向に空間の存在を検知。――オールグリーン。大丈夫です、行けます。このまま正面の壁を突破しましょう」


「了解! そんじゃま――道を切り拓け、スパイラルカノン!」


 正博の掛け声に合わせてヴァームラウスの両肩の砲身が火を吹き、撃ち出された円錐螺旋状の掘削弾が進路上の岩壁を破砕――向こう側に広がる空洞へと繋がる大きな風穴をぶちあけた。


 消し飛び切らずに残ったわずかな瓦礫を路傍にのかしつつ、正博は機体に開通させたばかりの(すい)道を(くぐ)らせる。


 その後も、物陰に潜む敵機やトラップの存在に用心しつつ、正博の駆るヴァームラウスは地下へ地下へと(もぐ)っていく。


 ――が。


「……静か、だね」


「はい……不気味なまでに」


 シミュレーターでは、後方から迫り来る大岩や、敵機が延々湧き続ける巣穴、ドミノ倒しの如く連鎖的に崩れていく回廊など、多彩な仕掛けが組み合わさって侵入者を待ち受けていた。


 それらのことごとくが、一切ない。


 道中の経路はほぼほぼ一本道で、敵機の配置も皆無なため、何かしらの罠に誘導させられているとも考えにくかった。


「突入時に、運よく安全な抜け道を探り当てていた、とか?」


「まさか。先方がわざわざそんなものを用意する道理がないですよ。意味不明です」


「だよねぇ……」


 張り合いのない出だしに、ついつい注意力が散漫になりそうになるのを自戒しつつ、正博はコアの反応に向かって機体の歩を進める。


「こちらの油断を誘うのが目的か、あるいはコアそのものに何かとんでもない仕掛けがあるのか……。オーランドやインザクアの時はどうだったんだろう」


「どちらも、当時のフィードバックは得られず仕舞(じま)いですからね……」


 そう呟いて、レイチェルが遠い目をする。


「レイルバインの未帰還事故――思えばあの一件から、全ての歯車が狂い始めたような気がします」


「レイチェル……」


 コックピット内に辛気臭い空気が蔓延しかけたところで、不意に視界が晴れ、だだっ広い大空洞へと抜け出る。


 そのフロアはこれまでの道中と異なり、地面、壁面、天井の至る箇所が整地されたように滑らかな質感をしていて、場の異質さをかえって際立たせていた。


「……ひょっとして、ここのどこかにコアが?」


「そのよう、ですね……この空間の規模と、コアの反応を見る限り、いい加減目視できてもおかしくなさそうですが……」


 特殊センサーが反応を示す方向に二人して目を凝らしていると、



 突として、橙色に光り輝く小型の球体が地の底から()り出してきた。



 透明な外殻に包まれた結晶状のそれは、まるで偶然ヴァームラウスと鉢合わせたかのように、びっくり仰天した様子でぴょいんと飛び跳ねるなり、高速でその場から遠ざかっていく。


 その一部始終を、正博とレイチェルは呆気に取られながら目で追っていた。


「も、もしかして、今のが……?」


「は、はい……アンダーソン・コア、だと思います。……盲点でした。先入観で、てっきり大型の防衛機構だとばかり思い込んでいたので……」


 すっかり毒気を抜かれていた二人は、程なくして本来の目的を思い出す。


「……って、あかん、ぼーっとしてる場合じゃない! 早くあれを追わないと!」


「そ、そうでした!」


 わずかに出遅れて、ヴァームラウスはコアの追跡を開始する。


「そっか……コアって移動するんだもんね。よくよく考えてみたら、そんなに大きな物体が、音や振動、周辺環境への影響もなく地中を自由に移動できるわけないか」


「で、ですね。仮に、ヴァームラウスと同程度のステルス機能を用いるとしても、カバーできる大きさには限度がありますし……」


 無意識の思い込みをレイチェルと一緒に反省しつつ、正博は機体に急ぎコアを追わせるが、両者間の距離は一向に縮まる気配もなく。


 むしろ、ジリジリと離されているのが実情だった。


「くっ! なんてすばしっこい!」


「通常速度は僅差であちらの方が上みたいです。かと言って、この見通しのいいフロアでは地形を活かしてターゲットをうまく追い込むこともままならないですし……」


「となると、残る道は――」


 自身が至った結論で問題ないか、確認を取るように正博は肩越しに後ろを振り返る。


 目が合うなり、レイチェルも頷く。


HDCE(高密度圧縮展開)、今が使い時だと思います」


「だね。障害物度外視の最大全速短期決戦、これっきゃない!」


 地中潜行時は必然的に、双方共に移動速度が若干低下する。


 だが、HDCE中のヴァームラウスであれば、一切の抵抗を無視して掘進することが可能だ。


 その唯一無二の利点(アドバンテージ)に望みを託すしかなかった。


「今すぐ発動しますか?」


「待って。一旦地面に潜って、相手の見えない所から強襲を仕掛けようと思う。向こうが動きを止めてこのフロアに留まるようなら、そのまま奇襲に切り替えればいいし、こちらの狙いに沿って地中や壁内に逃げ込んでくれるのであれば、後は予定通り、ひたすら全速力で追い詰めてくつもり」


「なるほど、了解です。では、ヴァームラウスの潜伏が完了次第、圧縮展開を始めますね」


「うん、よろしく!」


 言うなり、バリアフィールドに覆われたヴァームラウスが、ずぶずぶと地中に潜行していく。


 やがて、頭頂部まですっぽり機体全体が地面の下に隠れると、示し合わせた通り、レイチェルがバリアフィールドをオーバーロードさせる。


「高密度圧縮、全面展開!」


「さあて、(やっこ)さんはどう動く……?」


 それまで一心不乱に逃げ回っていたアンダーソン・コアは、追跡者たるヴァームラウスの姿が見えなくなると、どこか安心したように、再び地面の下へと舞い戻って行った。


 現れた時同様、高速で地中を移動し始めたコア目掛け、ヴァームラウスは間を置かず追撃を開始する。


「彼我速度差は逆転、こちらの方が上回りました! この調子であれば、過負荷限界の制限時間内に問題なくターゲットを捕捉可能です!」


「いいよいいよ! 希望が見えてきた!」


 どこか呑気に蛇行しているコアを、ヴァームラウスは脇目も振らず一直線に猛追していく。


 そして、コアとの距離が目と鼻の先まで迫った矢先、



 突如として、異変は起きた。

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