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四人で繋いだもの

こんにちは。少し遅くなってしまって大変申し訳ございません!

今回はようやく静紅が勇気を出すお話です。

楽しんで頂けたら幸いでございます!

キーンコーンカーンコーン。


午前の授業の終わりを告げるチャイムが鳴った。

心臓が跳ね上がる。

今日は朝集会があって点呼がなかったせいで助けてくれた三人の名を知ることができなかった。

心を落ち着かせるために視線を意味もなく動かすと、あのしずくとぶつかって恐喝してきた張本人と目が合ってしまった。うわ、最悪だ…!

しずくは慌てて目を逸らす。この後何か言われなきゃいいけど…

恐る恐るもう一度チラッと見てみるともうあいつはこっちを見ていなかった。とりあえず安心する。

あいつは古田 霧夜(こだ きりや)という無駄にかっこいい名前らしい。昨日の学食で生徒達が話してるのを小耳に挟んだのだ。

あ、てか、あいつに怯えてる場合じゃなかった!


今日は、しずくと、お姉ちゃんと、それから…しずくを助けてくれた人達と学食に行くことになっている。…いやしずく次第なんだけど。

正直今朝の夢のこともあって怖いし緊張するけど、このままじゃ何も変われないもんね…!うん!


しずくは深呼吸をひとつして立ち上がった。

これはもう勢いだっ!

しずくはバッと隣を向いて、隣の席の助けてくれた子のうちの一人の明るい茶髪でヘアピンを付けた女の子を、誘おうとした。

誘おうとしたんだけど。

口が動かない。開いたまま固まっちゃってる。…恐怖だ。

どどどどうしよう!?今更こんな、露骨に?あの夢のせいだ。


しずくが心の中で慌てふためいていると、茶髪の女の子はしずくに気付かず立ち上がって教室の扉に向かって歩き始めた。


ああ、行っちゃう。これ、ダメだ、


「ー友達になるんでしょ!?そんな怖がってたって何も始まんないから!」


今朝お姉ちゃんに言われた言葉が頭の中に響き渡った。


そうだった、また忘れるとこだったよ。姉貴。

もうあんな風にはなりたくない。


「っ待って!」


気づけばしずくは茶髪の女の子の手を掴んでいた。


茶髪の女の子がゆっくりと振り返った。


「お、転校生ちゃんじゃん。どしたん?」


穏やかな口調にしずくは安心する。そしてちょっと息を吸って言った。


「あ、あのっ、しず…わたしと一緒に学食でご飯食べてくれないかな?その…この前のお礼を言いたくて。わたしのお姉ちゃんもいるんだけど」


心臓がもうバックバクである。こ、怖い。


「全然ええよー。うちもしずっちと話してみてかったし。誘ってくれてありがとー」


しずくが何百通りも想像した返事のされ方よりすごい軽い返事が返ってきてしずくは一瞬後半に言われたことの理解ができなかった。


「え、あ、いいの?…え?てか、しずっち?」


「うん。静紅だから、しずっち。可愛っしょ?」


ニコッと笑って彼女は言った。かわいい。思わず頬が緩む。

しずっち。うん、悪くないかも。


「あ、お礼といえば、しずっち多分あの二人にもお礼言えてないっしょ。うちが誘ってくるから、先学食行っといて〜」


そう言い残して女の子は行ってしまった。

あの二人というのはしずくを助けてくれたあの男子二人のことだろう。なんて察しが良くて優しいんだぁ…

てかなんか、喋り方がちょっと変わってたような…?関西弁?訛り?とは多分ちょっと違う…まぁ、いっか。個性だし、今はそんなのどうでもいい。


しずくは無事やり遂げた気持ちとあの子と話せたという気持ちが重なってスキップしながら学食へ向かった。鼻歌なんかも歌っちゃったりして。

お姉ちゃんは先にテーブル席に座って待っていた。


「おまたせ」


「おっ、ちゃんと誘えたの?」


「も、もちろん!そりゃもう完璧に!」


ギリギリだったけどね☆


「それで、その子達は遅れてくるってー」


「へぇー。早く来ないかなぁ。どんな子達だろ♪」


お姉ちゃんはしずくを助けた子達に会えるのが楽しみらしく上機嫌だ。


「あ、そういえば…お姉ちゃん、星宮さんとかと一緒にいなくて良かったの?」


星宮さん達は、お姉ちゃんの新しくできた友達。


「うん、事情を説明して断ってきたの。」


「それならよかった」


そう言いながらしずくは時計を見た。…そろそろかな。


「お待たせ〜」


声をした方を見ると、しずくを助けてくれた三人が学食で注文した食べ物を持って立っていた。

茶髪の女の子はどうやらお姉ちゃんに興味津々みたい。あの赤髪のギャップがえぐい男子(仮)はしずくとお姉ちゃんを交互に見ている。

そして心読める意外と頼りになる系男子(仮)はその後ろに隠れてチラッとこっちを見ている。

いや、なぜそっちが緊張しているんだ…

しずくの緊張が戻ってくる。落ち着け、落ち着け…


「あっ、こんにちは!私、静紅の姉です!」


お姉ちゃんがここぞとばかりに笑顔で挨拶をした。し、しずくも負けてられない。


「あ、とりあえず、座ってよ」


しずくが促すと、茶髪の女の子はしずくの隣に、赤髪の男子はお姉ちゃんの隣に、その子の隣に心読める意外と頼りになる系男子(仮)が座った。


「えっ、しずっちのお姉さん?めっちゃ可愛いいんですけど!後で一緒に写真撮ってよー」


茶髪の女の子が目を輝かせてお姉ちゃんに急接近している。めちゃ積極的だな…


「そんなことないよー。あ、てかみんな静紅を助けてくれたんだよね。」


お姉ちゃんが切り出した。ここしかない。

しずくは言う。


「うん。本当にありがとう。すごく助かったよ!」


「私からも礼を言わせて。本当にありがとうね。」


そう言って二人で頭を下げる。


「いやいや、あれを助けるのは当然だよ!俺、転校してきたばっかの子にアイツらがあんなことしだすからびっくりしたわ。」


「そーそー、あんなのいじめだし。うちらがやらないとって思ってさ」


「……」


「みんな偉すぎでしょ〜、中々できないよそういうの」


赤髪の男子と茶髪の女の子が口々に言った後にお姉ちゃんが言う。優しいなあ、ほんと…

でもしずくは見逃さないぞ。この心読める(以下同文)男子がまるで他人事のようにこのやり取りを見ていることを。


「本当にありがとう。あ…そういえば皆名前なんて言うの?」


ようやくしずくは聞けた。お姉ちゃんがほっとしたような顔をする。


「えっと、うちは立花 水萌(たちばな みなも)!よろ〜」


「俺は星宮 宙(ほしみや そら)。よろしく!」


「え、えと…津野 蓮月(つの はづき)、です。…よろしくお願いします」


ふむふむ、茶髪のヘアピンの女の子がみなもちゃんで、心読める意外と頼りになる系男子がはづき君。で、この赤髪の男子がそら…みんな、漢字どう書くのかな。後で聞いてみるか…って、あれ、星宮なんて珍しい苗字、なんかどっかで…


「え?星宮…って、もしかして君、夏南の弟?」


お姉ちゃんが気づいて言った。そしたら案の定、


「…姉ちゃんのこと知ってるんですか?」


という答えが帰ってきた。


「知ってる知ってる!その子私の友達なんだよー」


お姉ちゃんが笑顔で言った。しずくはそらくんの顔を改めてまじまじと見つめた。夏南さん同様に整った顔立ちをしている。なるほど確かに、二人は似てる気がする。口元とか、パーツの配置とか。

そもそも、二人共同じ赤髪だ。地毛だったんだぁ。

…地毛か。いいな、いい色で。


「…そうなんだ…」


そらくんは浮かない顔を浮かべている。


「…なんでそんな顔してるの?」


思わず聞くと、代わりにはづきくんが、


「あー…こいつ夏南さんとあんま仲良くなくて…」


「そうなんだ…夏南すごい良い子なのに…」


お姉ちゃんがちょっと悲しそうに言う。


「こんなに似てるのにねー」


「はぁ!?どこが!?」


みなもちゃんが茶々を入れてそらくんが怒ってる。

思わずクスッと笑ってしまった。


「ははっ、皆面白いね!…あ、申し遅れたね。私は氷華だよ。よろしくね!」


お姉ちゃんの優しくて頼もしい雰囲気にみんな和んでいた。


その後しばらく話していたら昼休み終了五分前のチャイムが鳴った。しずく達はお姉ちゃんと別れて教室への階段を上る。


「あー楽しかった!まじでひょーちゃん美人だったぁ」


…ひょーちゃん。


「え、ひょーちゃん…ってお姉ちゃんのこと?」


「そ!かわいっしょ?あんたらもそう思うよね?」


「うん、可愛い笑」


「いやまた勝手にあだ名つけたのかよ…まぁ可愛いかもしれないけど」


宙くんがケラケラ笑っているけど蓮月くんは呆れている。


ふふ、なんかいいな、この空間。


途中で他学年の人とすれ違った。その人達はこちらを見て何故かコソコソと話をしていた。…なんだろ。


まあ、いいや。今はそんなの、どうでもいい。


しずくがやるべき事はまだ残ってるんだから。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

午後の授業が終わった放課後。

しずくはずっとタイミングを見計らっていた。

帰りのホームルームが終わって、皆が流れるように昇降口へ向かって行った。その中に、水萌ちゃん達三人の背中は見当たらない。

先生も出張があるからと言って足早に出て行った。

今日は木曜日だから…部活停止日。らしい。三人が何部に入ってるかは知らないけど、部活がないならタイミングがずれることは無いはず。


既にほとんど人が居なくなった教室を見渡した。

陽の光が窓から室内に差し掛かっている。

そして、教室にはゆっくりと話しながら帰り支度をしている水萌ちゃんと宙くん、そしてぼーっと窓の外を座って眺めて二人を待っている蓮月くんがいた。


よ、よし、今だ。今こそ授業中ずっと脳内シュミレーションしていたアレを実行するとき。


「ね、ねぇ、三人とも!」


しずくは声を張り上げた。三人は少しびっくりした表情でこっちを見る。まぁ当たり前だよね。


しずくは深呼吸して三人に歩み寄る。


夢で見たのと同じ光景。ずき、と胸の奥が傷む。


点数稼ぎ。表面だけ。本当はしずくに興味なんてなかった。騙された。


夢の中の言葉と表情が頭の中でぐるぐるしている。

これ、やばい、結構本当に本当にだめかも。


「どしたん、しずっち。ゆっくりでいいから」


え、と顔を上げると、優しく微笑んでいる水萌ちゃんがいた。宙くんは、特に促すわけでもなく黙ってしずくの言葉を待ってくれている。蓮月くんは戸惑いつつもしずくの言葉を聞こうと席から立ち上がりこっちに近づいてくる。


しずくはふっと気が緩み、どうにでもなれ精神で、言葉を口にした。


「しずくと!友達になってください!」


そう言った瞬間、教室が静寂に包まれた。

しずくは祈るように目を瞑った。


「く、ふはっ!」


その静けさを破って、宙くんが急に笑い始めた。

つられて水萌ちゃんも笑い始める。

しずくはわけが分からず固まった。

蓮月くんも一緒に固まった。なんだこれ面白いな。


いや、そんなことより…これってまずいのでは!?


「はー、しずっち面白すぎ!」


水萌ちゃんが笑いながらしずくに歩み寄り、下を向いて固まっていたしずくの顎に指をかけ、そのまましずくの顔を持ち上げた。水萌ちゃんと正面から見つめ合う形になる…って、ななななにこれ!?どういうシチュエーション!?っていうか水萌ちゃん顔が良いっ…!じゃなくて、どうしてこうなった!?流行ってるのかなこれ…


「しずっち…君って子は、ちょっと素直すぎない?現代っ子ってもっとこう、そういうのってオブラートに言うっしょ?そもそも言わなかったりするし。…でもね、うち的にそういうの、嫌いじゃないっ!」


水萌ちゃんの手は相変わらずしずくの顎に添えられたまま、そう言われた。

流石に露骨すぎたのかな。

なんとか状況が頭に追いついてきて、再び思考を巡らす。

…あれ、てか今、「嫌いじゃない」って言われた?


「…なあ立花、あんた最近少女漫画読んだだろ。影響受けすぎ」


蓮月くんが呆れ顔で水萌ちゃんに言い放った。

空くんはその傍でまた笑っている。

蓮月くんって意外と人に面と向かって物言えるんだ。ずっとオドオドしてるのかと。


「あちゃ、バレた?いやぁなんかイケてるじゃん?ちょっとやってみたくなっちゃって。あ、しずっち、ごめ〜」


水萌ちゃんが笑いながらしずくの顎から手を放そうとした。


「…へっ?」


…でも、その手は再び動かなくなった。

しずくが掴んだから。


もしこのままナシにされたら、嫌だ。


嫌いじゃないんだよね、水萌ちゃん?


「ということは友達になってくれるってこと?」


「…マジ?」


蓮月くんと宙くんが目をぱちくりさせている。


しずく達はさっきと同じように見つめ合う。


「お…おもしれー女っ!」


それこそ少女漫画的なことを水萌ちゃんがしずくに言い放つ。そして、しずくが今いちばん気になっていること。


「いいよ!友達!なってやろうじゃん!?」


「…っ!本当!?」


「うん!なんかおもろそーだし!あっ、もちろん、宙達もいいよね?」


「ああ、俺ら?うん!もちろんいいぜー!楽しそうだし。な、蓮月?」


「え、俺も…?いや、その、いいんだけど、」


「やったー!!」


しずくは蓮月くんの言葉が終わる前に、自然と集まっていた三人に抱き着いた。とにかく本当に本当に本当に嬉しかった。


「わ、しずっち、くすぐったいってー。」


「へっ!?…え、あっ、」


蓮月くんがめっちゃキョドっている。…何だろうこのお気持ち。…好奇心?みたいな。


「いやー静紅って意外と積極的なんだな。あ!てかさっき水萌がやってた顎クイかっこよかったから俺も静紅にやってみていい!?」


「はあ!?いやお前やめとけって、そんな女子に軽率に触れるなよ…」


「なんでだよ蓮月ぃ、あっじゃあお前にやってみていい?女子じゃなかったらいいでしょ?」


「なななんで俺なんだよ!?」


「くふっ」


宙くんと蓮月くんの掛け合いが面白くて思わず笑ってしまう。

ああでもそっか、しずくもこの中の輪に入っていいんだね。


友達だから。


「さ、帰ろ、しずっち!」


水萌ちゃんがそう言ってしずくに手を差し伸べてくれる。


「うんっ。あ、ちょっと待ってすぐ準備するから。…おし、帰ろ!」


しずくは水萌ちゃんの手を取る。


「おー、準備できた?えてか手繋いんでるじゃんなかよしー!!俺も俺も!」


「ちょ真似すんなしー!」


「えっいやなんでまた俺まで、あーもう何だこれ」


しずく達は四人で手を繋いだ。なんだかおかしくてまた笑った。四人で笑った。

この瞬間がずっと続いたらいいのに、と思った時、


「ちょっと君達、てかおい静紅!楽しそうなのはいいけど道は塞がないでよー?」


エッ?と振り返ると、なぜかそこには学生鞄を持ったお姉ちゃんがいた。


「お、オネエチャン、なんでここに、」


「なんでって、今日一緒に帰るって約束したのにあんたが全然来ないからでしょ!」


やばいっ、嬉しさと楽しさのあまり忘れてた。


「あっ三人とも。ごめんねお騒がせしちゃって。…ていうか、めっちゃ仲良くなったね。実はさっき静紅がハグしてたの見えちゃって。ふふ…お姉さん嬉しいよ」


「な、ななな…っ」


お姉ちゃんがニヤニヤした顔でしずくをチラッと見た。か、からかいやがってぇ…!


「すみません俺用事あるんで帰ります!!」


「ちょっ、蓮月!?あ、静紅に氷華さんじゃなー!」


「ま、また明日ねしずっちとひょーちゃんー」


「ええっ!?ちょっとみんな待ってよー!」


ほらぁみんな逃げちゃったじゃん!!お姉ちゃんのせいで!!


「それで友達、できたんだ?」


プンスカしているとお姉ちゃんがニヤケ顔で聞いてきた。


あーもう最悪、絶対家でずっといじられるやつだ…


しずくは絶望して、お姉ちゃんと共に帰るのであった…



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