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本当の運命の出会い

こんにちは。2話でございます!

一話から見ることをおすすめします。

では、楽しんで!(* ˊ꒳ˋ*)

ガラガラ、と扉を開けて、しずくは教室に入った。

予想通り、クラスはかなりザワついていた。

先生に促され、しずくはバクバクしている胸に手を当てる。落ち着け、落ち着け…そして、しずくは自己紹介をはじめた。


「は、はじめまして。桐生静紅です。…よ、よろしくお願いします。」


全員のクラスメートの視線を浴びながら、先生に指定された席に座った。


ふう、と息を吐いて、改めて周りを見渡す。

みんなこっちを見てるから、何人かと目が合う。

こっそり隣の席の女の子を観察してみる。

その子は薄い茶髪で、髪を下ら辺でゆるくひとつに縛っていて、前髪は薄紫色のヘアピンでとめている。

他の子よりは多少大人しめに見えるけど、やっぱりこっちに興味があるみたい。

知らない人だらけだ…ここでやってけるかな…

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

退屈で難しい午前の授業が終わり、お昼休みの時間を迎えた。

たしか、この学校には中学生高校生関係なく学食が利用できるはずだから、お姉ちゃんと一緒に…

…いや、でも…友達、作んなきゃ。


また、一人になっちゃう。


でも、誰と…?

とりあえず動かなきゃ、としずくが立ち上がったとき、ドン、と音と痛みがした。

びっくりして隣を見ると、クラスメートの男子三人が立っていた。多分、この真ん中の子とぶつかっちゃったのかも。


「ご、ごめんなさい!よく見てなくて…」


必死に謝って、はっとする。これって、運命的な出会いなのでは?


「そうだ、その、一緒に学食って、どうかな?」


勇気を振り絞ってしずくが誘うと、三人は目を見合せてクスクスと笑った。

な、なに…?


「あー…別にいいけど、」


よかったあ、ぼっちにならなくて済みそう。


「っ!やった!ありが、」


「そのかわり、奢ってくんね?俺らに。」


「…え?」


私とぶつかった真ん中の男子がニヤニヤしながらそう言い放った。


…奢る?それは…な、なんでだ??


「ほらほら、ぶつかったお詫びだろ?悪いと思うならさ、奢ってくれよ。俺たち、金持ってないからさぁ」


「なる…ほど?」


傷んだ毛先を指に絡ませる。


これが、普通なのかな…?

ん、でも、三人かぁ…まぁ払えなくは、無いし…

それに、それに、せっかく友達になれそうだし…


「ちょっと!そんなことする必要ないよ!」


急に、はっきりと隣の席から、そんな声が聞こえた。…隣の席の、女の子。


その声に、はっとする。…そんなことする必要ない。


言われていた。ここに来る前、お姉ちゃんによく聞かされたこと。なんでさっき思い出さなかったんだろ。


「静紅はまだ中学生だし、騙されやすいから、絶対にお金の貸し借りはしちゃダメだよ。もし貸すよう言われても、静紅がそんなことする必要ない。どうせすぐ付け込まれるんだから。あとー、」


そんなことが言われていたような。


騙されやすい。そう、自分がいちばん分かってた。


今、この子達はしずくとちょっとぶつかっただけで、お昼代を奢らせようとした。ぶつかった本人だけじゃなくて、そばに居ただけの二人の分も。


しずくは、人を簡単に信じすぎてしまう。


絶対に相手に問題があるのに、相手が悪いと考えず、しずくがこう考えるべきだったんだ、とか、これが普通なんだ、って思って。


ここでの普通を、まだ分かりきれていないから。


しずくは奢りを要求してきた三人の様子を見る。

彼らはしずくを助けてくれた女子に向かって舌打ちし、真ん中にいた男子が、


「たかが傍観者が口を挟むんじゃねえよ。おい、転校生。俺らに奢るよな?」


「はぁ?あんたらが自分勝手に奢らせようと、」


助けてくれた女の子が怖がる素振りもなく男子たちを睨みつけて言い返す。

このままだとしずくのせいで喧嘩になってしまう。


しずくが簡単に他人に奢るような弱虫だと思われているのが、悔しいし、ムカつく。でも実際、怖い。

すごく。自分より大きい男子に逆らうのは。


でも、またあんな思いはしたくない。もう二度と。


お姉ちゃんと、今助けてくれた女の子を裏切りたくない。


「っその、今、しずっ…わたし、金欠でさ…奢ることは、できないや。」


い、言えた。


助けてくれた女子はほっとしたような顔でこっちを見た。


「チッ…たかが新入りのくせに調子乗んなよ!」


「え、や、やめっ、」


取り巻きの男子二人がこっちに迫ってくる。

こ、こいつら、まさか女子に手を上げるつもり!?

どうしよう、誰かっ、お姉ちゃ、


バシッ。


そんな音がした。体は、痛くない。なのに何で?


恐る恐る目を開けてみる。

そこには、()()()()()()()()()髪を赤に染めたであろう男子が、手を振りあげた取り巻きの手をはたいていた光景があった。


「おい、お前ふざけんな、」


「あ?ふざけてんのはどっちだよ?」


「ひっ、」


そう言って赤髪の男子は鋭い目付きでそいつを睨んだ。

あまりにもその目が怖くて、しずくは息を飲む。


「てめ、何しやがっ、」


もう一人の取り巻きが手をはたいた男子に近づこうとしたとき、さっき助けてくれた女子が駆けてきて、その取り巻きの両手を折れそうなほど締めた。


「調子乗ってんのはあんたらの方でしょうが!」


「ぐっ…」


そう言ってぎりぎり絞めてる。い、痛そー…

しずくとぶつかった張本人はこの異様な光景に目をぱちくりさせていたが、はっとしてこちらを睨みつけてきた。


「おい!全部お前のせいだぞ!」


いや、どの口で言ってんだ…


「どの口で言ってんだよ…あ、その…大丈夫?」


えっ?心読まれた?

小さい声のした方を振り返ると、ほんの少し長い髪を短くひとつにくくっている男子がしずくの後ろに立っていた。ん、なんか持ってる?


「あ?なんだお前、お前なんかが女子を助けようとしてイキってんのか?」


「ちょっと、それは流石に言い過ぎー、」


ピキっときてしずくがやつに近づこうとしたとき、さっき以心伝心した男子にぐっと後ろに引っ張られた。


「え、なんで、」


「いいから…あんま下手に詰め寄るなよ」


そう言ってため息をついて、決心したようにしずくの前に立った。


「いや、お前ごときで俺に歯向かえると思ってんの?」


バカにしたような笑みを浮かべて、そいつはしずくたちに近づいてきた。


「っ…」


この心が読める系男子(仮)、心配してくれたのは嬉しいけどほっそいし喧嘩強そうじゃないし、そもそも怯えてるし…ここはあの二人に任せた方がいいんじゃ…


「いいって、しず…わたしが何とかするからっ、」


言い終わらないうちに、やつがこっちに手を伸ばしてきた。


「あっ、危ない!」


思わず叫んで目を瞑る。…だけど、あれ?何も起きない。


目を開けてみると、心読める系男子(仮)が学校用タブレットをしずくたちを襲おうとした男子に突きつけていた。


まさかタブレットで殴ったのか?って一瞬焦ったけど、どうやらそうではないっぽい。


「な、なんで、これが、」


襲おうとしてきた男子とその取り巻きがタブレットの画面を見て顔を青くしている。


それを見て赤髪男子と、さっき取り巻きを締めていた女子が不思議そうにタブレットの画面を覗き込んだ。しずくも一緒に覗いてみる。

え、これって、


「俺…さっき、委員会紹介用の動画、撮ってたから…丁度良くて…」


小さい声で心読める系男子(仮)が説明した。

この男子が、しずくが恐喝されていたとこからしずくたちに手を上げようとしたところまでの光景の一部始終を動画、つまり証拠を撮っていてくれたのだ。


「お前ナイスー!やっぱ頼りになるわ!」


赤髪が心読める系男子の肩をポンポンと叩く。


「じゃ、そういうことだからー。」


さっきの取り巻きを絞めてた女子が奴らに向かって手をひらっと振って告げた。か、かっけぇ。


「く、くそ、お前ら、覚えとけよ!」


今時悪役でも言わなそうなセリフを吐いて、奴らは教室を走って出て行った。


た、助かったー…

あの三人のおかげで。なんて優しい人達なんだろ。


そこで閃いた。そうだよ、これこそ運命の出会い。


「っねぇ、君達って名前は、」


しずくが意を決して振り返って尋ねると、そこにはもう誰も居なかった。








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