1-2 「お姉ちゃんのお友達」
食堂にて。しずくは空いていたテーブル席に座って、チーズパンと焼きそばパンを頬張りながらお姉ちゃんを待っていた。
さっきはすぐあの3人が居なくなっちゃったものだから慌てて探して、ここに辿り着いたのである。
助けてくれたうちの女の子は見つけた。でも他のクラスの子と話していて、邪魔する訳にもいかないから今しずくはひとりで寂しく昼食をとっているというわけで……
しかも同じクラスの子もさっきの騒動で気まずくなっちゃって話しかけてこないし。転校初日にぼっちってあまりにも悲しすぎやしないかい。
あーもう、お姉ちゃん早く来ないかなあ!
不貞腐れながらパンを食べていると、前方にさっき助けてくれた男子2人が学食で食べ物を注文しているのが見えた。
今がチャンスだ! 友達に――
「この子が静紅ちゃん? めっちゃ可愛いじゃん!」
急にそんな明るい声が頭上から聞こえて、ハッとして顔を上げた。
そこには、おさげに2つ結びをしてる、可愛い顔立ちの女の子と、無駄に顔が良い男子2人、そしてお姉ちゃんが立っていた。
突然顔が良い集団に囲まれて硬直していると、お姉ちゃんが、
「静紅、紹介するね。私の友達!」
と、ドヤ顔で「友達」を紹介し始めた。む、ムカつく⋯⋯!
「まずあたしが星宮 夏南! 困ったことがあったらなんでも聞いて!」
「よ、よろしくお願いします」
星宮さんの明るすぎる雰囲気に呑まれそうになる。
「で、俺が軽井沢 颯斗。それでこの爽やか系イケメンが中鶴 諒。よろしく!」
「爽やかイケメンってなんだよ颯斗。あ、静紅ちゃん、夏南の言った通り分かんないことあったら聞いてな」
なるほど、この星宮さんとは別の明るさを醸し出してるツーブロックの人が軽井沢さんで、この優しそうなマッシュの人が中鶴さんね。
お姉ちゃんの選ぶ友達だし、頼りになりそう。
「ほら、静紅も自己紹介しなよ」
お姉ちゃんに促されて、口を開く。
「えっと……しず、わたしは桐生静紅です。お姉ちゃんがお世話になってます」
これで合ってるんだっけ。
「えーめっちゃいい子じゃん静紅ちゃーん、仲良くしようね!」
星宮さんが頭を撫で回してくる。あ、あんまり髪触んないんでほしいなぁ……
「……あっ、時間無くなっちゃうし、早く食べよ!」
するとそれを見かねたお姉ちゃんが、星宮さん達を連れて食べ物を注文しに行った。
こういった気遣いができて、学校初日で友達をたくさん作れるコミュ力が高いお姉ちゃんをすごく尊敬している。きっとこの場にいないだけで、仲良くなった人はもっといるんだろうな。
ぼーっと4人の注文してるところを眺めていると、しずくを助けてくれた男子2人が注文を終え、斜め前のテーブル席に座って談笑しているのが目に入った。
向かい側に座っていた心読める意外と頼りになる系男子(進化した)と目が合う。
あ、と思って思わず小さく手を振ると、その心読める意外と頼りになる系男子(仮)は
少し驚いた顔をして視線を泳がせ、一緒に談笑していた赤髪の男子をつつくと、つつかれた男の子はこっちに気付いて、笑顔で手を振ってきた。
さっきはあんな怖い顔でしずくを脅してきた男子達を睨んでいたのに……そのギャップにに少しドキッとする。
なんて純粋な笑みだ。とても中2男子とは思えない。
心読める意外と頼りになる系男子(仮)も、赤髪の男子に促されて少し気まずそうにこちらに手を振り返してくれた。
……なんだ、この感情。似てるけど、恋とはちょっと違うような気がする。
突然湧き出た感じたことのない感情に戸惑っていると、注文を終えたお姉ちゃんズが戻ってきた。
「おまたせー。ん、静紅どうかした?」
「あ、いや……なんでもない」
「そ。じゃあ、みんな食べよー」
いただきまーす、とお姉ちゃん達が言ったから、既に半分食べ終えていたしずくもなんとなく手を合わせた。
「てか、氷華家庭科の授業のとき裁縫めっちゃ上手かったよな。俺そういうの出来ないから尊敬するわ」
「へっ!? あ、ありがとう」
中鶴さんがお姉ちゃんのことを褒めた。やっぱり優しいみたい。……ん? 知り合って初日で呼び捨て……だと!?
「そうそう、氷華めっちゃすごかったよね!」
「ま、誰かさんにも見習って欲しいけどなぁ」
そう言って軽井沢さんが星宮さんのことを横目で見た。
「あ? なんだと? 調子乗んなよ?」
「さーせーん」
そんな会話に中鶴さんとお姉ちゃんが笑う。
この人達面白いな。
「あー、もう。あ、そういえば静紅ちゃんはお友達できた?」
星宮さんがそう訊いてきて、思わず俯いた。友達……
「あー、初日だもんね。これからたくさん作れるから! そうそう、颯斗だってそうだったじゃん、あたしが話しかけてなかったら友達できてなかったでしょー」
「はぁ? そんな訳ないだろ〜」
星宮さんが察してそう言ってくれて、空気が和んだ。
というか、軽井沢さんって明るいから、お姉ちゃんと同じで初日から友達沢山作るタイプだと思ってたんだけど……ちょっと意外。
しばらく話していると、昼休み終わり5分前のチャイムが鳴った。
「じゃあ、そろそろ戻ろっか。じゃ、静紅、また後でね」
「うん、また後で」
お姉ちゃん達が立ち上がって歩き始めた瞬間、お姉ちゃんがテーブル席の脚に躓いた。
よりによって浅く被ってしまっていたお姉ちゃんのベレー帽が揺れる。
――まずい、まずいまずいまずい! このままじゃ。
激焦りしていると、なんとかお姉ちゃんがギリギリでベレー帽を手で押さえ、中鶴さんの裾に掴まった。
「うお、大丈夫?」
「あっ、うん、ごめん! だ、大丈夫……」
良かった、何とか転ばずにすんだ。……てか、なんかお姉ちゃん顔赤くないか?
まぁ、気にしない(すごく気になる)。
お姉ちゃん達が去り、しずくも立ち上がった。
さっきの男子2人は、既に居なくなっている。
教室への廊下を歩きながら、星宮さんに言われた「友達」というワードを頭の中で繰り返した。
そう、友達。しずくにも、かけがえのない友達ができたら。
そしてもう、目星はついている。
◆◇◆
ザシュッ――
聞き慣れた音が響き、控えめに血飛沫が飛び散った。もうこれで何回目だろうか。
また失敗だ。この体で人を殺めたのは……6回目くらいか?
ため息をついて、死体処理にかかる。
今回も望んだ異能力ではなかった。虹だなんて、一体なんの役に立つのだろう。もっと調べておけば無駄な手間が省けたのに。
一通りの処理を終え、前に仕入れた情報をまとめたファイルを開く。
ルーズリーフをめくっていき、良さそうな奴を見つけたところで手を止めた。
よし、次は……
こいつだ。
静紅は氷華の友達3人と出会ったことにより、自分を助けてくれた恩人3人と「かけがえのない友達になりたい」という想いが強くなる。
果たして、静紅はその3人と仲良くなれるのか?
次回 「お姉ちゃんの秘密」




