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拝啓、元私のお姉ちゃんへ。〜何故か姉が犬だけど気にせず学園ライフを謳歌したい〜  作者: 叶 梨鈴
日常編

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1-17 「真の和解へ」

 古田と和解して『友達』なってから約1ヶ月が経ち、6月の中盤に差し掛かった。

 梅雨の影響で、今日は朝から雨が降っている。


 そしてしずくの家の玄関の傘入れには、しずくとお姉ちゃんのを含めて計6()()の傘が入れられていた。


「わー、しずっちの家相変わらず広すぎ〜」


「お邪魔しまーす、あ、氷華! やっほ〜」


「おい宙、先輩にタメ口はやめとけよ」


 いつも通り、元気な声と姿が3つ。

 ……だけじゃなくて。



「お、お邪魔します。その、静紅のお姉さん、俺、古田 霧夜です」



◆◇◆



 少し時を遡り、先週の金曜日。

 いつもの4人で、食堂で休日に遊ぶ予定を立てていた。


 ちなみにまだこの時は、古田と和解したと言ってもそこまで仲良くはなかった。


 でも、古田はあの後、ちゃんとみいなに謝っていた。みいなは、古田のあまりの変わりように驚いていたものの、その真剣さを受け止めて、許してあげていた。まだ友達とまではいかないけど、これから少しずつ、みいなたちが古田に心を開いていけたらいいな。


 しずくは、気さくに話せる友達ぐらいになれたら。


 ただ友達と言っても、みいな達ほど古田と仲良くならないだろうと思っていた。きっと古田とは「友達」止まり。昨日プレゼントを渡すために蓮月と2人で出かけたり、いつめん4人でしずくの家で遊んだり、その後も何回か一緒に遊んだりしたけど、きっと古田とは遊ぶことなどないんだろう。


 しずくは、漠然とそう思っていた。

 ……思っていたんだけど。



「な、なぁ、それ、俺も行っていいか?」



 休日に遊ぶ予定を立てていると、なんと古田が急にそう話しかけてきたのだ。


 しずく達は黙って顔を見合わせる。みいなと宙は警戒していて、蓮月は怯えている。


 きっと、3人は断ろうと考えているかもしれない。

 自分も、突然のことに結構びっくりしていた。


 ……でも。


「いいんじゃない? たまには。新鮮でしょ」


 しずくの言葉に、3人は驚いてこっちを見た。


「……いいのか?」


 そんな3人の様子を察したのか、古田が気まずそうにしている。


「ねぇしずっちほんとに大丈夫そ? 嫌じゃない?」


「大丈夫でしょ多分。それに、今回一緒に遊んで何もしてこなかったら、古田は心からしずく達と仲良くなりたいと思ってるっていう証明になるんじゃない?」


 不安そうに囁いてきたみいなを安心させるためにそう言うと、


「まぁ静紅がいいんならいいんじゃね? なんかしてきたらしばくだけだし。なぁ蓮月?」


「宙がそう言うなら……」


 宙が納得してくれた。蓮月はまだ渋ってるけど、宙がどうにかしてくれるだろう。


「いいって。じゃあ、こっち座ったら?」


 促すと、古田がおずおずとしずくの隣に腰掛けてきた。いつもの4人+古田。なんとも新鮮というか、珍しいというか……不思議な感じがする。


「……そんで詳細なんだけど」


 みいなが話を切り出すと、古田がなぜかぴしっと姿勢を正した。……そんな緊張すること?


「今週の日曜に各自で昼ごはん食べてから13時ぐらいにしずっちの家。なんか質問あるひと〜」


「はい! 質問です!」


「はい星宮サン、どうぞ」


 古田の前でもいつもの雰囲気をキープしようとしてるのか、茶番が始まった。その感じに安心する。


「水萌にっていうか静紅になんだけど、日曜ってその、氷華って家に居る?」


「あー、多分いるんじゃない? 部活無いって言ってたし」


 あれ、宙ってお姉ちゃんのこと呼び捨てにしてたっけ。確かに宙とお姉ちゃんは会うと普通に会話をしているけど、もうそんな親しくなったのかな?


「えっとじゃあ、俺からも」


 そんなことを考えていると、古田がおずおずと手を挙げた。


「……どうぞ、古田 霧夜さん」


「なんで俺だけフルネームなんだよ? ……えっと、静紅の姉さんの好きなやつって何? なんか土産持ってくから」


 それを聞いてお姉ちゃんのことを思い浮かべる。この前しずくが古田と和解したことをお姉ちゃんに話したところ、騙されているんじゃないかって中々古田としずくが友達になることに賛成してもらえなかった。

 お姉ちゃんはまだ古田を警戒している。……まぁ、そりゃそうか。


 でも、古田がお姉ちゃんを食で手懐け……とまで行かなくても、古田がお土産を渡してお姉ちゃんにもちゃんと謝ったら、古田と友達になることをちゃんと認めてくれるかも。


「お姉ちゃんは食べ物なら大体全部好きだよ。お菓子でお姉ちゃんが1番好きなのはスナック菓子とかクッキーかなぁ? あの人最近ASMRにハマってるから、ボリボリ噛みごたえのあるやつを食べてるよ」


 お姉ちゃんは犬だから聴覚がいい。拾える音が大きいから、通常の人よりもASMRを楽しめるって自慢していた。……癒されるどころかうるさそうだけど。


「というかわざわざ土産? 古田のくせに律儀だな」


「律儀で悪いかよ。少なくとも俺は星宮さんより真面目だから」


 まだまだ友達とは言えないけど、宙と古田は軽口を叩き合えるくらいには仲良くなれている。この調子で、遊ぶ時も喧嘩しないといいな。

 というか、お姉ちゃんが古田のことを許してくれるといいけど。


 不安を抱きつつ、いつもと違う遊びスタイルに少し楽しみな気持ちも湧いていた。


 これが上手くいって、お姉ちゃんも認めてくれれば、古田がみいなと宙と蓮月……そしてしずくとも、ちゃんとした『友達』になれるはずだから。


休日に、静紅の家で遊ぶことになったいつめん4人……と、古田 霧夜。和解したての、まだまだ距離がある関係性である彼に、静紅達3人はどのように接していくのか。また、氷華の反応とは?


 次回 「真の和解へ② 〜疑いと応援歌〜」


 読んでくださりありがとうございます。極端に文字数が多い話があったので、整理して再投稿しました。

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