第4章 魔王の城の衛兵(6)
「ふーん、なるほどのぉ」
リリンの話を聞いていた魔王シルシュゴールは、目の前で揺れる蝋燭の火をじっと見つめてつぶやいた。
その隣には机の上にドロドロに溶けた蝋燭の残骸がいくつも並んでいる。
太陽はずいぶん前に沈んでしまった。
ギルバートはリリンの話の途中で何度も、蝋燭が消える前に仲間の命を救ってくれと懇願したが、魔王はリリンの話が終わるまで待てと言ってきかなかった。
その代わりにとギルバートが出した条件が、蝋燭の火をつぎ足すことだった。
これで5本目の蝋燭である。
リリンは魔王の真意をはかりかねていた。
ここまで話したことは真実ではあるものの、魔王が欲している情報の十分の一にも満たないはずだ。
蝋燭の火がつぎ足されたいま、自分は本当にすべて話し終えるまでここにいるのだろうかという疑問がうっすらと湧いてくる。
魔王はしばらく蝋燭の火を見つめたまま黙っていたが、ようやくその薄桃色の唇を開いた。
「本当なら、もう少し話を聞きたいところじゃが……」
白く細い指を広げ、蝋燭の火に透かして見る。
「首謀者の話を聞く前に、夜が明けてしまいそうじゃ。今日はここまでにして、また明日考えるとしよう」
魔王はそういうと毛布をいくつかポンポンと取り出して、地面にごろんと寝ころんだ。
リリンは一瞬、魔王様をこんなところに寝かせるわけにはいかないと思ったが、いまさら魔王をとりなしたところで裏切者である自分の処遇は変わらないだろうと腹をくくり、放っておくことにした。
「はぁ、アース・フリントは私の身体の一部になってしまったんじゃな」
毛布にくるまったまま、魔王は残念そうにつぶやいた。
「おい、待て! 蝋燭の火はどうする? 朝になる前に消えてしまうぞ!」
ギルバートはもう疲れたという様子だったが、魔王にそう食い下がった。
「はいはい、そうじゃったな」
魔王が面倒くさそうに右手をクルンとまわすと、テーブルの上にさらに5つの蝋燭が現れた。
「……これは、朝まで火の番をしろということか……」
ギルバートは魔物の長たる魔王が、理性的な理論で動くわけがなかったとため息をつくと、眠そうな目をこすりながら火を見つめた。
「あの、私が火を見てますから。あなたは寝たらいいよ」
見かねたリリンが、肩をすくめる。
ギルバートはリリンの様子をじっと見つめたあと、もう一度テーブルの上で揺れる火を見た。




