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ひつじ雲  作者: 桜咲
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……長くない?


さっきから結構落ちたと思うんだけど。落下中の独特の浮遊感と、いつ地面に叩きつけられるか分からない恐怖で、走馬灯なんて見てる余裕ないんですが。


でも目は絶対開かない。きっと気になって目を開けた瞬間地面に叩きつけられるんだ……。誰だよ、ここに落下中の体感時間長くなる罠仕掛けた奴、出て来い。




もふっ


え、何コレ。落下の衝撃なんて微塵もなく、何やらふかふかした物に仰向けに寝そべっている。停止した思考の中、これ以上の混乱を避ける為に、目は開けない事にする。確実に何かが起こっているが、見なければ、どうという事はない。


そういえば……。子供の頃想像した雲ってこんな感じだったな。でもそれだったら確か、ゆっくり沈んで雲を抜けたら結局落ちるんだったっけ。


ずぶっ


そうそうこんな風に……サーッと血の気が引いて、全身から冷や汗が吹き出てくる。いやいやいや、ちょっと待って!!動かした手足には何の抵抗も感じない。


ずぶずぶと沈みながら、また落ちる事を想像して気分も更に沈んでいく。そして雲モドキを抜けた瞬間、頭と胃をぐちゃぐちゃに掻き回される様な感覚の後、浮遊感は消えたのにも関わらず、目を閉じていても分かる程無数の光が、もの凄い速さで通り過ぎて行く。


壮絶な吐き気に襲われながら、流石に状況を把握しようと目を開け……涙で前が見えませんッ!!


手で涙を拭い、視界が開けた先には何故か目前に迫った地面、一瞬の停滞の後、重力に引かれた身体はー…


ドサッ


うん、叫びながら文句を言いたい。この一連の不思議現象に対して。ただ現状一番切実なのは、壮絶な吐き気だ。もう耐えられない。


ぉえっ(自主規制)


ふらふらと、近くに見えた大木に向けて草原の中を歩きながら、今日リュックでバイトに出た自分を褒め称える。水買ってて良かったホントに。頭痛はするし身体は怠いし、どうにも酷く疲れてしまった。そして何より眠い。


リュックを抱え直し、辿り着いた大木に背を預け、そのままズルズルと座り込む。何で周りが昼間の様に明るいのか、そもそもここは何処なのか、膝丈位の高さだったとはいえ、急に落ちたら結構痛いとか、浮かぶ事は色々あるが、今は考える気力も体力も無い。


ふと見上げると、枝を広げた大木に、抱かれている様な安心感を覚え、意図せず言葉が溢れる。


「少しの間、よろしくね」


意識が途切れる寸前、何処からか優し気で、年齢を重ねた深みのある声が聞こえた気がしたー…


「うむ」




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