四十六話 「会いたかった人」
うーん。最後の章が終わりませぬ……
「ハハハハハッ!!お前が私を殺すだと? なんて笑える冗談なんだ!」
魔王にとって、俺は羽虫のような存在らしい。まぁ、見た感じ明らかに戦闘能力違うしな。
「あぁ。お前を殺す。たとえ、この身を失ってもだ!」
魔王を倒すためなら自分の命くらい惜しまない。俺は、昔から英雄願望があった。今こそ、英雄になれるチャンス。ならば、死んでもなお、語り継がれる英雄になろう。もちろん、梨花達を救うには、魔王を倒さなきゃいけないしな
「俺を倒せば、英雄になれるだろうなぁ」
魔王が喋りながらニヤニヤしている。気持ち悪い。
「お前、今気持ち悪いとか思っただろ」
なんだこいつ、俺の心がまさか読めるのか? いや、でもそんな筈は……強い上にそんな事できたらチート過ぎるし……
「私に掛かれば貴様程度の心くらい読めるわ!」
なん……だと……こんなの勝ち目がさらに消えるじゃないか。
「そうだ。元よりお前に勝ち目はない。こんな無駄話で時間稼ぎ出来ただけマシだと思うんだな」
遂に、魔王は殺気全開で歩いてきた。
「そうだよなぁ。もう諦めて戦うしかないよなぁ。はぁ、頑張りますか!」
俺も覚悟を決めて、刀を抜き取る。まずは、牽制で魔王に対して横に振り払った。
「馬鹿め!心を読んでいると言ったであろう。だが、そうだな。貴様程度の攻撃など躱すのは容易だが、それだとつまらない。お前の攻撃をあえて受けてやろう。お前の最強の力で攻撃してみろ。圧倒的な力の差を思い知らせてやる」
魔王は宣言通り、横に振り払った刀も受け、歩みを止めた。もちろん、俺の刀で傷一つ付いてないけどな。
「そうか。ならば、遠慮なく切らせてもらうよ」
俺の最も強い攻撃。それは、ベルモットを倒した居合いだ。
「お前が、これを防げば俺に一切の勝ち目はなくなるだろう。だが、傷が付くのならば俺にも勝ち目はある」
助走をつけ、俺は走り出した。居合いの威力を高めるためだ。
「これがお前の力か。ガッカリだ。こんなの、私の足元にも及ばないではないか。ベルモットの野郎め。ほんと雑魚だな」
俺は渾身の力で居合い切りを放ったはず……なのにどうして、全く傷がつかないんだ。
「お前、どうやって防いだんだ。一歩も動いてねえじゃねえか……」
きっと、魔法か何かで防いだのだろう。俺はそう思っていた。だが、魔王からは、予想外の言葉が返ってきた。
「私は、この場から全く動くことなく、魔法も使っていない。ただ、純粋に貴様の力が弱く、私が強すぎただけだ。恨むなら自分の力を恨むんだな」
魔王はまた歩き出し、俺に向かってきた。
「やめろ……やめてくれ。殺さないでくれ……」
人間は本当に絶望すると全てが怖くなるのだろう。現に、今の俺は魔王が歩く音すらも怖いのだから。
「フハハハハっ!やはり人間は弱い!力が及ばず、圧倒的な力の前では、生まれたての小鹿同然じゃないか!そうだな。やはり、私が人間を滅ぼし、新たな世界を作るしかないようだ」
ベルモットを消したブラックホールのようなものを右手に作り出し、俺の前にかざす。あと、10cmも近付けば、俺は死ぬだろう。本気で死を覚悟した。
「お主。本当に弱いのぅ。我が居なきゃ何も出来ぬではないか」
突如現れた人物によって、魔王は吹き飛び壁に衝突した。俺も驚き、魔王も驚いている。そりゃそうだ。自分の想定外に強い、自分を吹っ飛ばせる人が現れたんだからな。
「お前……もしかして……」
金髪のロングヘアー。青い瞳。少し子供っぽい顔。明らかに見覚えのある顔だ。
「匠。我は今帰ったぞ。遅くなってすまぬな」
「リン……シアなのか? でも、そんなはずは、お前どうやって……」
嬉しさの反面、死んだ人が目の前に居るという謎が頭をぐるぐると回っている。
「そんなの決まっておろう。我は神様じゃからな。あの程度では、死なぬじゃよ」
そうか。神様だもんな。生き返るくらい出来るよな……
「あれ? なんで……」
耐えていたはずが、いつの間にか涙が出ていた。
「お主。感動の再会は後じゃ。それよりも、こっちを見ている魔王をどうにかせねばならぬ。あやつは今、相当怒っておるぞ」
涙を拭き取り、リンシアの隣に並ぶ。すっかり、幼女から大人になったリンシアは俺よりも身長が高く、ビックリした。
っと、そんな時、ふとリンシアが俺の方を向き、悲しい顔で話しかけてきた。
「お主に大事な話をせねばならぬ。しっかりと聞いてくれ」
「おう。分かった」
これは、大事な話だ。しかも、魔王が近くにいる。ふざけてなんてられない。
「まず、我は言った通り神様じゃ。なのでな、一つの世界に干渉するのを禁じられておる。故に、今お主と共に、魔王と戦うことは出来ぬのじゃ」
「なんでだよ!それじゃあ……結局死ぬしか……」
少し見えた希望が一瞬で閉ざされた気がした。
「まぁ、そう焦るでない。まだ言うことはある。だが、魔王が近くにいる故に手短に話すぞ。実はな、我の唯一出来ることは一つだけ出来ることがある。それはな、匠。お主に、一つの称号を与えることくらいじゃ」
そうか。やっぱり、リンシアは戦えねえもんな。称号ってなにをくれるんだろうか。この危機を打開する称号だったらいいけど。
「リンシア。その称号ってのはなんなんだ?」
「それはな、勇者の称号じゃ。勇者の称号を持つものは、魔王とどんなに力差があっても対等に戦えるという称号じゃ。これが、お主に最も有効な称号じゃからのぅ」
魔王と言えば勇者が出てくる。それがふつうだ。リンシアの話を聞く限り、勇者の称号を貰えば、俺は戦える。
「やばい!リンシア、早くその称号を俺にくれ!」
魔王がそろそろ俺たちに辿り着いてしまう。
「わ、分かったのじゃ!我はこの力を使えばこの世界からきえる。あとは、お主に任せるから頑張るんじゃぞ!」
俺の身体を淡い光が包み込み、眩い光を放った。
「あれ? 何も起きない。どうゆうことなんだリンシア」
どこを向いてもリンシアが居ない。
「まさか、リンシアのあの話。本当だったのか!」
先ほど言っていた、リンシアが俺に称号を与えたら消えるという言葉。それは、事実だった。
「リンシア!お前から最後に貰った力。世界を救うために使わせて貰うぜ!」
魔王と俺はもう一度対峙した。
「ほぅ。強くなったようだな。だが、私には及ばない。今度こそ、なぶり殺してあげようじゃないか!」
魔王の声と共に、剣を作り出し、俺は刀を鞘から抜き取った。そして、俺は刀を振り下ろした。魔王を倒し、世界を救うために……
あとどれくらいで終わるんだ……ぐぬぬ…
明日は、もう一つの作品を更新しますね!




