四十五話 「梨花とベルモット」
なんか、匠がどんどん強くなっていく気がしますね。
「梨花ぁ。おまえ、お師匠様を裏切るのか? 本当にその選択が正しいのか?」
俺達が並び、戦闘態勢をとった所で、突如揺さぶりをかけてきた。
「だって!貴方はもう、お師匠様じゃないじゃん!優しかった人じゃない!」
梨花の声で、ベルモットの眉がピクリと上にあがった。これはやばいな。
「梨花、もう喋るな。あいつの言葉に耳を貸すんじゃない」
もしかすると、このまま喋らせた場合、梨花がまたも、寝返ってしまうかもしれない。そんなことになったら俺は終わりだ。
「タクミぃぃぃぃ!お前が梨花をそそのかしたのか!?こんなに俺に従順だったのに!?殺す。殺して梨花を奪い取ってやる!」
目が赤くなり、ベルモットの身体が変形し始めた。
「フハハハハっ!こうなってしまった俺にお前らは勝てる訳がない!」
背中に真っ黒な翼が生え、角まで生えてきた。さらには、今までよりもデカくなり、威圧感が凄い。
「たくみ!怖気付いちゃダメ!絶対勝てるから!」
少し震えていた俺の手を握ってくれた梨花。そのお陰で、身体から震えが消え、戦う勇気が俺に生まれてきた。
「よし!俺は戦うぞ!梨花、援護は頼んだからな!!」
刀を取り出し、居合いの構えを取る。おじいさんに教えてもらった技だ。
「では、殺し合いを始めようじゃないか!」
ベルモットの声を合図に俺は走り出した。もちろん、走る勢いで居合いを放つためだ。
「御身の身体を強化し、強靭なる敵を払いたまえ!アタックオーラ!」
まず、梨花から攻撃力を上げる魔法を受け取った。これで、とりあえずは戦えるはずだ。あとは、防御力だ。さすがに1発食らって死んだら情けないしな。
「梨花!防御力も上げてくれ!」
「分かった!防御力だけじゃなくて、全能力を上げる魔法を与えるね!」
どうやら、梨花の覚えている魔法に、全能力を上げる魔法があるらしい。しかし、魔法を使ったリスクとして、梨花は動けなるらしいが……
「全能の神よ、此度の戦い、貴方のお力をお貸し頂きたい。全能たる力を持って、我が戦士を強化し、神としての力を与えたまえ!!
全能神の導き!」
走っている最中の俺に、梨花の魔法が降りかかる。自然と、身体も軽くなり、走るのも早くなった。
「馬鹿正直に突っ込んでくるとは馬鹿め!殺してやるわ!!」
視界の端で梨花が倒れている。魔法を使いすぎたのだろう。だが、ここからは俺で充分だ。
「梨花。ありがとう。こいつの相手は任せてくれ」
ベルモットとの距離、10m程になった時、俺は刀を引き抜く準備を開始した。
「さて、終わりの時間を与えよう。深淵なる者達よ、魔王の眷属として、力を貸したまえ!インフェルノダークネス!」
ベルモットの周りから力が集まり、真っ赤な炎とベルモットの手から出た闇が組み合わさり、黒炎となった。しかも、かなりデカイ。
「そんな攻撃、俺に聞くか!」
一層走りを早め、居合いを放った。紙一重で黒炎を躱し、放ったことにより、俺には全くダメージは無い。
「ば、馬鹿な。我が力が敗れるだと……だが、私は負けない。貴様ごときに魔王様の右腕、ベルモットが負ける訳ないんだよ!」
俺の予想通り、ベルモットは真っ二つになった。さらに、おじいさんから貰った刀はものすごい鋭さで、黒炎すらも切れてしまった。
「私は……負けない……貴様ごときに負ける訳がないんだ!こんな、カスに、雑魚ごときに、こんなあっさりと殺られるはずがないんだ!」
半分になったままベルモットはさけび続ける。いい加減俺は、止めを刺そうと思い、近づいた。その瞬間、予想とは違うことが起き、俺は警戒した。
「ベルモット。お前は、俺の右腕にふさわしくなかったな。もう黙っていいぞ? 用済みだ。消えろ!」
魔王自らがベルモットに近づき、小さいブラックホールのようなものを自らの手に創り出していた。
「ま、魔王様!何をなさるのですか!?」
ベルモットは慌てている。そりゃあそうだろう。今から殺されそうなんだから。
「……梨花、何も言うな……」
仮にもお師匠様が目の前で殺されそうになっている光景を梨花が見て、何かを言おうとしていた。
「だって、だって、匠、どうすればいいの……」
梨花は震えを押し殺しながら、俺の袖を掴みはじめた。
「耐えるんだ梨花。あれは敵だ……もう決別したんだから。諦めるしか……」
俺達が話している今も、魔王は殺そうとしている。
「魔王様!考え直してください!私はまだ、戦えます!」
半分の身体を懸命に動かし、魔王に近付いて頭を垂れている。
「ほぅ。戦えると言ったな。ならば、懸命に動かし、戦ってみるが良い」
魔王の言葉にベルモットは喜び、俺達の方に這いつくばってきた。
「戦えてないではないか。そんな雑魚はもう要らん。消えろ」
先ほどの言葉が嘘のように、冷たく言い放ち、遂にはブラックホールのようなもので消してしまった。
「魔王様!私は、私は、一生貴方と居たかった……」
最後の瞬間に聞こえた言葉に何故か感動を覚えた。魔王の右腕にも人と同じような心があることに驚いたからな。
「では、お前ら、第二ラウンドといこうか。次は、私が相手だ。勝てるとは思わぬ事だな」
足音を立て、こちらに向かってくる。
そんな中、梨花がおれに話しかけてきた。
「たくみ……私ね、お師匠様と旅してたのが本当に楽しかったの。魔王とは関係ないと本当に思ってた。でもね、お師匠様が魔王の右腕だと分かっても側にいたの。きっと依存してたんだと思う。でも、匠が私に話しかけてくれて変わった。そこは、本当に感謝だよ。でも、ベルモットの最後の言葉、あれは紛れも無くお師匠様の言葉だったと思うの。だからね、私はその願いを叶えようと思う。魔王を殺して、一緒の場所に送ってあげるの」
梨花の顔は、泣いていた。多分、頭が回転してないのだろう。言ってることがめちゃくちゃだ。
「梨花、お前の理由は分かった。だけどな、そんなことは俺にはどうでもいい。俺は魔王を許せない。ただ、それだけの理由で殺す。ささいな理由だけど許してくれ。そして、もう話は終わりだ。魔王と俺は戦う。既に、動けないお前は休んで見ててくれ」
体力を使い果たした梨花を安全な所に座らせ、俺は魔王と対峙した。
そして、俺は魔王に対して呟いた。
「久しぶりだな。魔王ユリウス。お前を殺しに来たぜ」
俺は、最後の戦い……人類の敵、魔王との戦いに臨むのだった。
多分、次の話ともう1話くらいで終わると思います。最後までよろしくお願いします!
ちなみに、あしたはもう一つの作品を更新しますので、更新できません。ご了承下さい。




