四十一話 「決死の覚悟」
今回は長いですが、ご了承下さい。
俺たちに休息は無かった。無慈悲にも第三試合は始まる。この試合に勝てばあとの残りは一試合だけだ。だが、疲れは溜まっている。どうすれば……
「ほぅ。あれが今回の敵か。強そうだな」
ラースさんが敵を見極めている。確かに、明らかに強そうだ。主に1人だけだが。
「お主ら。儂の名は、リジド。年寄りの名じゃが、覚えておいてくれぃ。ちなみにじゃが、ここにおる四人は、ただの寄せ集めだから弱いぞ」
なんだこのおじいさん。突然俺達の前に出てきて自己紹介してきたぞ。しかも、俺達に、有益な情報を与えるなんて何を考えてるんだろうか。
「お主。今、こいつ何考えてんだ? と思ったじゃろ。儂は、普通に自分に対して不利益ではない情報を言わんぞい。何も裏なんてないから素直に聞いとけばいいんじゃよ」
心まで読めるのか。このおじいさん、強そうだな。
「おじいちゃんさ!強いの?」
響きのやつ、無邪気に聞きに行きやがった。やべえな。殺されることは無いかもしれんけど……
「むっ? 嬢ちゃん。このおじいさんが強そうに見えるかえ?」
俺には分かる、このおじいさん強い。なんよ根拠もないけど、絶対強いはず。
「両者共、位置について!」
俺達が余りにも話していたせいか、審判役から声を掛けられた。その後、響はおじいさんに言葉を返す暇もなく、試合開始の鐘が鳴った。
「俺がまず戦い、力を確かめる。ほんとに、あの四人が弱いかどうか確かめなきゃいけないしな」
ラースさん……イケメンすぎる。自分から行くなんて。俺も見習わなければ……
「あれ? ほんとに弱いのか」
俺の目の前では、ラースさんによって、無惨にもやられている四人が見える。だが、おじいさんの姿が見えない。一体どこに。
「お嬢さん、もっと周りを見なきゃダメじゃぞ?」
「えっ? 嘘……」
俺が振り向く時にはもう遅かった。響の叫びが聞こえ、首元には、刀が突き付けられていた。それにやり、響は気絶し、終わった。
「あのおじいさんやっぱり強い……」
またも、見ていたはずのおじいさんが消えており、何処にいるのか分からなくなった。
「ラースさん!カルマさん!アビス!おじいさんに警戒しろ!あの人は強すぎる!!」
堪らず、俺は声を張り上げ、味方に情報を与える。これで、少しは警戒するだろう。
「言うのが遅いのぅ」
おじいさんの声がまたも聞こえ、アビスが瞬殺された。しかも見事に気絶させている。
「あっ……ガハッ……」
アビスも倒れ、俺達は三人になった。カルマさんは魔法職だ。後ろからの攻撃に耐えきれずやられてしまうだろう。どうすれば良いんだ……
「ふぉっふぉっふぉっ。これで三人目じゃの」
何処から聞こえているのか分からない。けど、おじいさんの声が不定期に聞こえる。誰の背後に来るのかすらも分からない……
「ダークインパクト!」
カルマさんの声が聞こえる。かろうじで魔法を発動出来た……はず。
「魔法が遅いぞ?」
ギリギリのところで魔法は発動しなかった。カルマさんが気絶したからだ。クソッ!!
「さて、残りは二人かのぅ。まずは、あやつから倒すかの」
ついに、姿を現しながら、ラースさんに向かい走り出した。だが、ラースさんもそれに気付き、応戦しようとする。
「クッ……なんだこの力は」
一太刀目をラースさんがかろうじで防ぐ。だが、すぐに押し負けそうだ。
「お主。強いのぅ。まさか、防がれるとは思わなかったぞい。しかも、まだ力を上げれるな?」
おじいさんが隙だらけの背中を見せている。なのに、俺は動けない。隙だらけのはずなのに、攻撃したら俺がやられると自覚しているからだ。
「へっ!しょうがない。なけなしの魔力で、強化してやるよ!」
ラースさんが昔のノースさんと同じように、オーラを纏った。これなら、もしかしたら勝てるかもしれないと俺は思ってしまったが、現実は甘くなかった。
「ふむ。この程度かのぅ……残念じゃ」
ラースさんは既に地べたに倒れている。まさか、ラースさんがここまでやられるとは俺も想像してなかった。とゆうか、おじいさんの強さが異常だった。ラースさんが攻めても、余裕で躱し、一太刀入れる。さらに、刀を防ごうにも、相手の力が強すぎて、押し負ける。圧倒的な強さに、ラースさんが負けた。残りは、俺だけだ。こんなの勝ち目がない。
「お主。諦めておるな。それだと、ほんとに殺すしかあるまい。戦いに来て諦めるなど言語道断。そんな奴、儂がたたっ斬る」
おじいさんが怒りながら近付いてくる。だが、俺はおじいさんの言葉に心を打たれた。ここに来て、トーナメントに出た意味を思い出し、戦うことを決意した。負けてもいい。ただ、全力を出し切り負けたい。それが俺の意思だった。
「良い目になったのぅ。お主に問う。なぜ、このトーナメントに参加したのじゃ?」
気が付いた時には、目の前におじいさんが居た。そして、問いただされてしまった。
「はよ、答えんか。斬るぞ?」
俺は突然のことに困惑してしまい、上手く言葉が出ない。言いたいのに、喉から出ないのだ。
「ふむ。言葉も無しか」
おじいさんも諦め、刀を振りかざそうとした瞬間、ようやく言葉が出た。
「俺は……亡くなった友……いや、大事な人を助けたいからこのトーナメントに出場したんだ!!」
俺は一際大きな声でおじいさんに示した
「ほぅ。お主。助けたいなどとほざいておるが、果たしてその信念や如何に……ここでお主の思いを測る!見事これを耐えてみせろぃ!!」
刀を俺に対して振りかざしてきた。それに対し、俺は思わず、ミスリルソードで防ぐ。
「グッ……」
余りにも重い一撃に手が震え始める。だが、諦めるわけにはいかない。俺のリンシアに対する思いは、この程度ではないからな。だが、現実は無情だった。
「えっ……あっ……」
無惨にもミスリルソードは折れてしまい、俺は情けない声を出してしまった。この時点で、死を覚悟し、俺は目を瞑る。一向に刀は振ってこない。目を開けてみると、
「お主、よく耐えた。その信念は本物だ」
刀は俺の眼前で止まっており、間一髪だった。
「なんで……俺を試したんですか?」
思わず聞いてしまった。
「それはな、今まで対戦した相手にも聞いてきたんじゃよ。だがな、誰もこれも、適当な理由ばかり。金にしたいなど、女にあげるなど、ふざけておるわ。だが、お主の願いは違った。だから、試したかったんじゃ」
刀を鞘に収め、笑顔で俺に言ってきた。
「そうだったんですか……それで、これからどうするのですか? 俺はもう、剣が折れてしまい戦えません。これでも戦うというなら俺達は、降参します」
もう俺以外全員倒れてしまい、戦う術もないしな、今回は諦めるしかない。また別の方法を探そうと思ったが、俺の予想を遥かに上回る出来事が起きた。
「すまん。そこの者。儂たちは降参する。こやつらの勝ちじゃ」
審判役に一言声を掛け、俺達は勝ったことにされてしまった。
「なんでですか!!こんなの勝ちじゃ……」
勝たせてくれたのは嬉しい。だけど、理由が分からなすぎる。
「お主たちを勝たせた理由を教えよう。儂もな、自分の力が弱く、大事な人を亡くしてしまったのじゃ。それで、お主たちも同じ様子。信念を確かめ、勝ちを譲る価値があったと見極めたのじゃ」
こんなに、強い人でも弱い時があったのか……それで、勝たせてくれた理由は分かった。でも、一つだけ謎がある。
「あの、聞いていいですか?」
「なんじゃ?」
「このトーナメントを勝てば、大事な人を生き返らせれるかもしれないんですよ? それなのに、諦めるんですか?」
「お主。儂はな、もういいんじゃよ。いま、生き返らせても、儂が先に死ぬ。それだと、生き返らせた人が可哀想じゃろう? さらにだ、もう既に、この世に魂すら無いやもしれぬ。それならば、お主たちのように、可能性がある者に譲りたいのじゃよ」
おじいさんの声は、とても優しかった。心に響く、優しい声だ。
「分かりました。本当にありがとうございます。俺、絶対大事な人を生き返らせます!そしたら、貴方に会いに行くので、是非、会ってください!」
丁寧にお辞儀をし、俺は感謝を伝えた。
「ふぉっふぉっふぉっ。これで、儂にも楽しみが出来たわい。待っておるから連れてくるんじゃぞ。あ、ついでに、次の試合は五日後じゃから、お主たちを鍛えてやるわい。明日からここに来るんじゃぞ?」
えっ?まじか。この人が鍛えてくれるとかやばいな。嬉しすぎる。ってか、次の試合五日後って遠すぎだろ。いくら最終戦だからって……
「では、貴方達もそろそろ退場をお願い致します。次の試合、五日後まで、この会場は閉めますのでご了承下さい」
言われるがまま俺とおじいさん達は、気絶している者達を連れて、宿屋に向かった。おじいさんがラースさん達を余裕で持ち、俺は響とアビスしか持たなかったのは内緒だ。
「では、今回はここでさらばじゃ。明日の朝ちゃんと来るんじゃぞ?」
そう言って、おじいさんは帰っていった。その背中に対し、俺は感謝の言葉を最後に告げた。
「本当にありがとうございました!!これからもよろしくお願いします!」
きっちりとお辞儀をした。おじいさんは後ろ向きに手だけを振り、俺は思わず微笑んでしまった。
その後、俺は宿屋に戻った。これで、俺達の三試合目は終わり、残るは最終試合だけになった。これからのおじいさんの主義よを思いつつ、俺はとりあえず、眠ることにした。
明日は、諸事情で更新出来ないです……本当に申し訳ない。




