梨花の旅 二話 「新たな世界」
ちょっと残酷です。。。
真っ黒の人に襲われ、目が覚めた時はロープで身体を固定されていた後だった。
「くそ……私の不注意だった。まさか本当に不審者に襲われるなんて」
辺りを見渡してみるが、誰も居ない。古びた工場のようだった。
「もしかして今なら逃げれるかも!」
どんなに引っ張っても縄は外れなかった。柱にピッタリと固定されているようで、到底人間の力じゃ無理。
「はっはっは。いやー、こんなにも捕まえるのが楽だなんて」
高笑いをしながら現れたのは、20歳ぐらいの男だった。体格と言動から見るに、多分私を拘束した人だろう。
「あんた!なんでこんな事するの!!変態なの!?」
とりあえず理由を聞いてみることにした。もしかしたらそれ相応の理由があるのかもしれないし。
「なんで? そんなこと聞かれても分からないなぁ。ぼくはね、ただ君みたいな若い子を捕まえて、犯して殺すのが目的なわけ」
この言葉を聞いた瞬間、私は絶望した。
「そうそれだよ!その絶望した顔がぼくは大好きなんだ。ところで、頑張って縄を解こうとしているけど、諦めた方がいいよ? 何人もそうやってきたけど解けた人居ないからね」
ちっ!私のやっていることがバレるなんて。
「早く私の縄を解きなさい!私は早く家に帰りたいの!!今日のことは見なかったことにするから家に帰して!」
私の内心はこの男がものすごく怖かった。
「やだなぁ。せっかく捕まえた獲物を帰す訳ないじゃないか。君は今から僕に犯されて死ぬだけでいいんだ。死んだらこんな世界から解放されるんだし良いだろ?」
男は訳の分からないことを言いながら、私に近づいてきた。
「やめて!寄らないでよ!汚いでしょ!」
男は私のすぐ側まで来て、私に催眠スプレーを掛けた。
そこからの記憶は、男に犯された所までしかない。多分眠っている間に殺されたのだろう。
「はっ!あの男はどこ!?」
私が次に目を覚ましたのは、真っ暗な洞窟の中だった。さっきの状況とは全く違い、唖然とした。
「えっ!?ここどこだろ……」
男が居ないのは良いのだが、暗いところに一人ぼっちで居るのは寂しい。
「オンナハッケン。ツカマエル」
突如声が聞こえてきて、私はビックリした。音の鳴る方に顔を向けてみると、緑色の巨大な生物が私に迫ってきていたのだ。
「やだ……やめて。寄らないで。こんな所で死にたくない。誰か助けて!!」
私は必死に助けを求めた。だが、誰か居るはずがない。無残にも私の声は洞窟に響くだけだった。
「ウルサイナ。ダマラナイトコロスゾ」
もはや触れられる距離にいた生物は私に向かい脅迫してきた。私はそれに従わず、叫び続けた。
「助けてー!!!誰か居ないの!!早く助けてよ!!」
後ろから生物が腕を振り下ろしてくるのが分かる。直感ってやつだと思う。私はこの瞬間死を覚悟した。
「サンダーボルト」
どこからか声が聞こえてきて、瞬く間に生物は死んでいた。私は死ななかったことに安堵したが、誰がやってくれたかいまいち分からないので震えてしまっている。
「やぁ。助けを呼んだのは君かい?」
優しい声で私に話しかけてくれたのは、白い髪のイケメンだった。
「助けてくれたんですか……?」
もしかしたらこの人も何か企んでいるのかもしれない。
「ん、あぁ。僕はね、旅する魔法使いなんだ。たまたまこのダンジョンを潜っていたら君の声が聞こえてきて、慌ててやってきたんだよ」
ダンジョン……? もしかしてここって日本じゃない? さっきの人も魔法使ってたぽいし。
「とりあえず助けてくれたならありがとうございます。でもどうして助けてくれたんですか?」
世の中ギブアンドテイクだ。助けてくれたもいうことはそれ相応の物を払わなきゃいけないのだろう。
「いや、理由なんて無いよ? 助けを求める声が聞こえる、それだけでぼくは助けなきゃいけないんだ。僕の罪を少しでも滅ぼすためにね」
この人にも事情があるらしい。罪とか言っているが、何か悪い事でもしたのだろうか。でも、私から見ても優しそうな顔つきと言動。多分誰が見ても第一印象は優しいと思うだろう。
「で、お兄さん。ここは一体何処なんですか? あと、ここから出れますか?」
「ここについて知らなかったのか。うーん、まぁいいか。この場所はね、この世界で最も危険とされるダンジョンだよ。まさか僕もここに生きている人が居るなんて思わなかったけどね。あと、ここを出るなら僕に付いてきた方が良いと思うよ? 僕もちょうど出る所だからね」
ふむふむ。やはりここは日本じゃないな。って出るには付いてかなきゃいけないのか、変な事されなきゃ良いけど。
「ほんとに出れるんですか? 出てもさっきみたいな生物だらけとか嫌なんですが」
「まぁ僕に付いてくれば安心だと思うよ? 僕は優しいお兄さんって呼ばれてるくらいだから安心だし、一応強いからね」
やっぱり優しい人なのか。この人には、助けて貰ったんだし、あの人は私の命の恩人。これはもう付いていくしかないよね。
「それじゃあ行こう。僕もこんな埃っぽい所から出たいからね」
私は優しい男の手を取った。
「最後に貴方の名前を聞いてもいい?」
「僕の名前はね、…………だよ。お師匠様って呼んでくれても良いよ?」
何かの魔法が発動したのか、名前の部分だけ聞き取れなかった。師匠って呼んでほしいっぽいし、私はお師匠様って呼ぶことにしよう。
「では、多分気持ち悪いと思うから、頑張ってね」
「ちょっ、何するの!?」
次の瞬間、地面に魔法陣が浮き出て、私は浮遊感に襲われた。
浮遊感が終わり、目を開けてみると、そこは綺麗な草原で、木組みの家が一つだけポツンと置いてある場所だった。
「ほぉー。この世界にもこんな場所があったのかぁ」
「気持ち悪くならなかったのか。やるね君。ここはね、僕の庭と家なんだよね。僕はここでのびのびと1人で暮らしている。君も1人なら一緒に住むかい? 家も僕が新しいのを組み立てるし、この敷地の中だったらどこに行っても安全だよ。最上級の魔術結界を張っているからね」
お師匠様は、凄い提案をしてきた。私にとっては一切デメリットもない。とゆうかメリット以外ない。悩む必要すら無かった。だが、ここで、思い出したくないものを思い出してしまった。私が日本で死ぬ姿だ。記憶に無いと思っていたのに、こんな所で思い出すなんて。しかも犯されて、殺された所だけを思い出してしまった。そのせいもあってか、私は倒れてしまった。
「大丈夫かい? 僕の敷地で一緒に暮らすのが嫌なら遠慮せずに言ってくれ。急に青い顔をして倒れ出すからどうしたのかと思ったよ」
私は真っ白のベッドの上に寝転んでいた。多分お師匠様が運んでくれたんだと思う。
「違うの。お師匠様と暮らすのは全然嫌じゃないの。ちょっと思い出したくない事を思い出しちゃっただけだから、安心して」
「そうだったのか。てっきり僕と暮らすのが嫌なのかと思ったよ。それじゃあ僕は君の家を作ってくるから安静にしててね」
そう言ってお師匠様は、私の家を建てに行ってくれた。外では、お師匠様が魔法で家を作っている姿が見える。その頑張っている姿にキュンとしてしまった。だけど私には、日本の頃好きだった人が居る。その人のことを諦めるなんて出来ない。お師匠様はあくまでも命の恩人。命の恩人に恋をする訳ない。
「はぁ。私これからどうなっちゃうのかな」
私はぼんやりと空を見ながら呟いた。それから、しばらくしてお師匠様は戻ってきた。
ここから、私とお師匠様の暮らしは始まった。
月日は流れてゆき、私もだいぶ生活に慣れた。
お師匠様は、私に色々魔法を教えてくれた。この世界についても詳しく教えてくれた。だけど、お師匠様については一切教えてくれない。何故だろう。
「さぁ梨花。僕達もそろそろ旅に出よう。初めは、とりあえず王都に向かうぞ」
自分の日記に書いていると、お師匠様の声が聞こえてきた。
こうして、私とお師匠様の旅が始まった。
後に、初めての旅で向かった王都にて、出会った人物のことは言うまでもない。
梨花編はとりあえずここで終了です。次回からは、匠の方に戻るのでよろしくお願いします!




