17.作戦開始
やっと更新…のろくてすみません
「ということで、新入部員の忍だ」
「さ、笹川忍です。ど、どどどうぞ、よ、よろしく」
「彼方が人を連れてくるなんて思いもしなかったな」
「いいんじゃない?私たち以外にも話す人ができたわけでしょ」
「「彼方先輩は渡さないです」」
ヒーローをやろうという話から3日。俺はまず忍を部活に入れた。協力者である以上、話せる時は多い方がいい。俺も忍もはそんなに人と話さないタイプの人間なので、話しても不思議じゃない関係作りから始めることにした。
「ねぇ彼方。ところでいつの間に仲良くなったのさ?」
「ん?あー、ちょっと前だ。なんというか…そう、意気投合した。人見知り同士?」
「悲しいわね」
「うるせい。ところで部長は?部活に入るわけだし一応紹介したいんだけど…」
キョロキョロと教室を見回すが、部長の姿が見えない。いつもならヒロトの膝の上にいると思ったのだが…
そうやっていると茜が上を指差す。
「いるじゃない。そこに」
「は?…あ、いた。何してるんですか?それ」
「ちょっとしたっ…実験だよっ!」
天井からぶら下がっていた。部長はそこまで身長の高くないので上にいるとは思わなかった。
というか一体なんの実験だよ。これだから変人呼ばわりされるのだ。
「か、彼方くん。こ、これって日常茶飯事?」
「んー?…そうだな」
「ははは…」
「で、一体なんの実験ですか?それにその位置だとヒロトにスカートの中身が見えますよ?」
「………そういうのはもっと早く言うべきだと思わないか?」
ほとんどヒロトの真上なので、ヒロトが顔を上に向けると丸見えだ。なるほど、だからヒロトはずっと下を向いていたのか。
そんなどうしようもないことを思っていると、スタッと部長が着地した。
「いや、ヒロトの様子で気が付きましょうよ。さすがにヒロトにスカートの中身を晒すのは嫌でしょ?」
「それはいいのだ。ただ、こんな場所で見せるのが…いや、ヒロトが見たいというなら…」
「え、そっち⁉︎やめてくださいよ?本当に」
予想外の方向の返答にちょっとビビる。うん、そうだよな。部長はそういう人だった。
「で、なんの実験ですか?」
「能力の切り替えだよ。使ったり切ったりを繰り返していた。こうすればラジコンのバッテリーのようにオードが長持ちするかと思ってな」
「は、はぁ…それなら普通にオードを鍛えましょうよ」
「ふむ…では集まったようであるし、本日の部活動を始めるとしようか」
「都合の悪いことを聞き流すのやめましょうよー…」
そんなこんなで今日の部活動が始まった。
俺は近くの席に着き、いつものように咲と幸が俺の肩にもたれかかってくる。
ヒロトの膝に部長が座った。
「え、えっと…その、僕は?」
「適当に座りなさいよ。自由席よ」
「じゃ、じゃあ…」
忍はやはり人と話すのは苦手なようで話せる俺のすぐそばに座ろうとし…
「か、彼方くん…この子達怖いんだけど〜」
「彼方先輩は渡さないです」
「咲と幸のです」
「あはは…」
諦めて安全そうな茜の近くの席に座った。
俺らの状況を諦めてる茜とうまくやれそうだな。だって同じような表情浮かべてるし。
ちょうど部員全員が見渡せる場所で苦笑いを浮かべている。
「さて、今日は能力の話でもしようかと思っていたのだが、彼方が部員を連れてきたので歓迎会をしようじゃないか」
「とりあえず自己紹介でもする?俺らその…忍とそんな話したことないし?」
「そうね。で、何を言うのかしら?」
「好きなことを言えばいいです」
「ま、無難に部長からだな」
俺が部長に放任すると、みんなも同じように部長に任せたため部長の自己紹介が始まった。
もちろんその場から動くことなくヒロトの膝の上でだが。
「ふむ。大瀬遥、3学年だ。この超能力部の部長をやっている。自己紹介か…能力は身体強化、趣味はぬいぐるみ集め、好きなものはヒロトだ。よろしく頼むぞ?」
「え、えっと、そのヒロトって…いうのは〜…?」
「見ての通り、その座られてくっつかれてるヒロトだな」
なんだろうか、この失敗した感は。確かに部長にトップバッターを任せた俺が悪かったのだが。
…ええい。とにかく次に行こう、次に。この場合順番は俺か。
「一応俺もしておくか。銅彼方、2学年。一応副部長で、能力は鉱物創造・操作だ。趣味は…最近は置き物作り、好きなものはイチゴだな。いろいろよろしくな」
「あ、ああ。うん」
最近はカラスだけじゃなく、いろんなものを作る練習をしている。細かい操作の訓練もできるし、オードも消費できるし、結構楽しいし、一石三鳥なのだ。あ、いや、やっぱり四鳥だ。それが白樺さんの目に止まって収入が増えた。おかげで貯金がえらいことになっている。
「次は私かしら?末木茜、2学年よ。能力は再生、趣味は…特にないわね。強いて言えば料理かしら?好きなものはチョコ。どうぞよろしくね」
「よ、よろしく」
「別にこの私に合わせる必要はないのだぞ?」
「いや、その方が楽だったので」
「ふむ。まぁよいか」
「で、次だ」
俺は苦笑いを浮かべているヒロトに目をやる。
最近その表情が苦笑いじゃなくってまんざらでもないという顔であるということに気がついたのは俺だけの秘密だ。
「俺は関口博人、同じく2学年。能力は切断付与。趣味はないけど、特技は剣道。好きなものは…えっと、ハイ。ア〜…遥、先輩デス。どうぞよろしく」
「ははは…」
じっと見つめられてヒロトがおちた。
まぁ悪くないと思ってるわけだし、もう付き合ってしまえばいいのに。きっと二度と離れられないとは思うが。
「次は咲です。箕浦咲、1学年です。能力は再来月に期待、趣味は情報収集です。好きなものは彼方先輩です。あげないです」
「と、取らないから…」
「同じく幸です。実は姉です。最近威厳がなくて困ってるです。どうするといいです?」
「い、いや、ぼ、僕に聞かれても…」
「あと彼方先輩は渡さないです」
「と、取らないってば…ねぇ彼方くん、2人が怖いんだけど〜」
俺の左右から忍に強い視線が飛んでいる。
というか幸に関しては自己紹介じゃなかったし。
「あはは…まぁとにかくこれからよろしくな」
「う、うん。あ、ぼ僕もした方がいい…よね?」
「そうだな」
「ええと、さっきも言ったけど笹川忍、2学年です。能力は未来視、しゅ趣味は読書、好きなものは…辛いものとかかな?あ、ああと人と話すのが苦手で、これは挙動不審じゃないですからね。よ、よろしくお願いします」
やっぱり挙動不審に見えるよな。
そのうち慣れることを祈ろう。
「さて、で自己紹介は終わりましたけど…って部長?」
「む?どうかしたのか?」
「いや、それはこっちのセリフです。なんで荷物まとめ始めたんですか?」
「せっかくだ、酔い亀にでも移動しようと思ってな」
「あ、ああ。まぁそうですね」
歓迎会だしな。豪勢に行こう。
そんなことを思いつつ、俺も荷物をまとめる。
「え、ええと…?」
「いや、歓迎会だし、みんなで酔い亀に行こうって」
「そ、そっか。じゃあ、僕も荷物をまとめた方がいいよね」
みんなが荷物をまとめ、教室を出る。
靴を履き替えて酔い亀への道を歩く。道中は転校生が初めて教室に来た日のように忍がみんなから質問攻めにあっている。忍があたふたとその質問に必死に答えているのは結構面白い。そのままみんなと馴染んでくれるといいと思う。
そうすれば俺だけじゃなくって忍もみんなを守ろうと思ってくれるかもしれない。そうなれば自分からもっと協力してくれるかもしれないし。
そんなことを思っていると、忍が俺の方まで来てこっそりと耳打ちした。
「視えたよ…明後日の夕方。こ、細かいことは後で送るね」
「了解」
それだけ言うとまた質問攻めに戻っていった。
やはり何かがおかしいのは確かだと思う。この1ヶ月の間ですでに2回の事件が発生している。先月はなかったがその前は俺らの学校が襲われた。こんな短い周期で同じ場所が狙われるのはおかしい。リベラリズムがこんな短期間で同じ場所を狙うのは異例の事態だと父さんも言っていたし。
この地域で何かが起きようとしている…いや、もしかすると既に起きているのかもしれない。
何かそれに関する対策とかも考えるべきか…?
「どうかしたの?彼方」
「…え?あ、いや、なんでもないよ」
「そっ。何かあるなら私たちにも相談してよね」
「はいはい」
どうやら顔に出ていたらしい。表情を作る練習とかも必要だな。
何があってもヒロトや茜たちに心配をかけるわけにはいかない。これは俺が自己満足でやっているのであり、俺がやりたいからやってるのだ。それに巻き込むのはまちがっている。絶対にあってはいけないし、何より俺自身が許せないと思う。
リベラリズムのテロを未然に防ぐ。方法はいろいろ考えたけど1つだった…テロを起こす前にリベラリズムの奴らを皆殺しにする。それは必然的に人を殺すということになる。忍は無力化すればいいと言うが、それじゃダメだってことを俺は教え込まれている。もし復讐にきたら?報復されそうになったら?そんなことが起きる可能性は無くさなくてはいけない。
絶対という確証はどこにもない。そんな救いはない。だから俺が作るって決めた。どれだけ俺の手が血に濡れようと、どれだけ俺が罪に溺れようと、どれだけ俺が暗い道を歩もうと。
「彼方?さっきからどうしたのよ?ずっと変な顔して」
「いや、誰が変な顔するかよ。ちょっと考えてただけだ」
「そ。で、何考えてたのよ?」
「そうだな…なんだかんだあったけど、みんなでこうやっていられてよかったなって」
「そう…ね。うん。きっとこれからもそうよ」
「そうだといいな」
俺のこの想いが現実になるかはまだわからない。ただ、できる限りは尽くそう。全てやりきって、それでも現実にならないなら、その時は……
いや、やめておこう。今からそんなことは考えるべきじゃない。あれは最終手段だ。
「なによ、辛気臭い顔して。似合わないわよ」
「俺だってたまにはシリアスになるんだよ」
「そうね。ほら入りなさいよ」
「はいはい」
俺は酔い亀の入口をくぐった。まだ開店して間もない時間のせいで人は少ない。
「おっ。今日はみんないるのか!いらっしゃい、今日は…7名だな!」
「席はいつも通りで構わないのだろう?さぁ諸君、今日はこの私が持つ!好きなだけ飲み食いするがいい!」
「と言いつつ、現在の所持金はいくらですか、部長?」
前回もそう言って俺が支払ったのだ。財布の中身を確認せずにそう言うのはどうかと思う。別にありあまっているというのは嘘じゃないので奢ること自体は別に構わないのだけど、気分的な問題なのだ。
俺の言葉に部長はコソコソと財布の中身を確認した。
「…2,342円」
「ということで俺が持つから。亀さん、いつも通りまとめてよろしくー」
「あいよ!」
亀さんの返事を聞くと俺は部活のみんなで来る時に使っている座敷に座る。
8名分の広さのあるその座敷には片側に部長、ヒロト、茜、忍の順で、その向かい側に咲、俺、幸の順だ。忍が増えたこと以外はいつも通りである。持っていたバッグを適当に放り、メニューから飲み物を亀さんに頼んだ。
「ところで忍の家ってどの辺なのさ?俺たちはみんなこっちの方なんだけど」
「ぼ、僕の家?え、ええと…そっ、そっちの方にある住宅街だよ」
「あれ?意外と俺の家と近いね。そっちの方に剣道の道場があるのってわかるかな?そこが俺の家なんだけどさ」
「え?あ、ああ。あ、あれが君の家なんだ」
「ヒロトの家はすごいのだぞ。実は全国大会で何度も優勝をしているのだからな、この私のヒロトが!」
「俺いつの間に遥先輩のものに…」
「最初っからだろ。入った当初から」
入った当初からヒロトは部長に気に入られ、ヒロトもそれを受け入れていたせいでいつの間にかこうなった。いや、多分途中には一緒に買い物に行くだとか、一緒に遊びに行くだとかいろいろ挟まるのだろうけど、俺はよく知らないからな。ただ、そうやって好感度を上げ続けちゃった結果だと俺は思っている。
「そうね」
「もういいや…俺は部長のもので」
「うむっ!」
部長がヒロトの腕にしがみついた。多分今日はヒロトが部長を家まで送り届けるまではずっとそうだろうな。間違いない。
そんなことを思っていると飲み物の入ったコップが飛んできた。それに忍がちょっと驚いて「ふぁっ…⁉︎」っと変な声を上げた。初めに来た時からすでに毎日通っているためもう慣れてもいいと思うのだが。
「では、我らが部の繁栄を祈って!」
「「「「「「「かんぱーい」」」」」」」
カラン…とコップが心地よい音を奏でた。




