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生まれ変わって救済を望む  作者: 大月 爽
2.全ての始まり
11/26

11.武器を選択

かれこれ約2週間ぶり!

学校なんて行きたくないでござる!寝たいでござる!



 おかしな話だ。

 夢を見た。

 たくさんの友人に囲まれて俺はその中で笑っている。俺の手は血にまみれていた。それでも笑い続けていた。苦しみはない。恐怖も悲しみも。


 「初めて人を殺した夢がそれってのはどうかと思うよな…」


 よく読むような小説の主人公は悪夢に悩むや後悔の念にとりつかれたりするものだった。俺はそんなことはなかった。微塵も悲しむどころか、笑っていた。きっとこれが俺の理想とした先なのだろう。たとえ何を犠牲にしようと、俺は何も失いたくないと。まったく笑い話もいいところだ。一体何をあんなに嫌がっていたのだか。結局冠に頼って数十人を殺させられ、最終的には何も感じない…いや、正しく言えば人間を殺すことに多少の嫌悪感はあるが、ほとんど何も思わなくなれた。その感覚に慣れてしまった。俺は結構適応能力が高いのかもしれない。


 「さて、起きるか…」


 目覚ましが鳴るよりも少し早く起きてしまっていた俺はベッドから起き上がり、目覚ましの設定を解除し、服を着替えた。相変わらずの見た目より丈夫さ重視のちょっとした作業服だ。

 そして着替え終わったので部屋を出てロックをかけた。


 「おせぇ」

 「さいでっか…」

 「朝食だ。食っとけ。行くぞ」

 「はぁ…わかった」


 今日も同じようにおにぎりが投げ渡され、俺はそれを食べながら後ろをついていく。おにぎりの中身は今日もシャケだった。

 そして途中で気がつく。いつもとは違う道を歩いていた。昨日、一昨日で曲がっていた道とは違う方向に進み、別の部屋に入った。冠が扉にカードをかざし、ロックが解除された音が聞こえる。ということは冠の部屋なのだろうか?冠が入ったので俺はそれに続いて中に入った。

 その中にあったのはもう1つの扉。冠が再びカードをかざし、ロックが解除された音がする。その扉を開けて中に入ると、入り口に警備員のように監視する人がいた。


 「おぉ、冠。今回は随分と早いんだな」

 「そうだな。ちょっと中を見せてもらうぞ」

 「了解。持ち出しはちゃんと言えよ?前みたいのはごめんだからな」

 「るせぇ」


 ちょっと挨拶をした?あと、冠はその部屋…正しく言うと通路を進む。扉の先は部屋かと思っていたが、そうではなく人が数人通れる程度の幅の通路があった。その通路の壁には幾つかの扉がある。冠はその中の十数番目の右側の扉を開けた。


 「見たことがねぇって言ってたよな?見て学習しろ。持ちやすい重さ、柄の形、刃と柄部分の重さのバランス、刃の形状と幅、鍔の有無とその形状…それらを踏まえて自分で作れ。あの剣じゃテメェに合ってねぇ。ちゃんとしたもん作ってからにするぞ。振り方なんざもう後回しだ」


 その部屋には壁に隙間なく剣が飾るように置かれ、床にも剣を立てるものに大量の剣が立てられている。ああ、あと訓練室に持ってきたカカシもいた。


 「え、ええと?じゃあ、あれは向いてないと?」

 「ああ、そうだ。テメェの剣の使い方は無駄に癖が多い。その癖して癖のねぇ剣を使うから、それが活かせねぇ」

 「癖?例えばどんな?」

 「昨日のことを考えろ。テメェはカウンター狙いの一撃必殺、だが使う剣は速度を重視した上に軽い剣だ。そうやって戦うつもりなら重い一撃を食らわせられる剣にするか、もっと速さを重視するかのどちらかにするべきだろうが」

 「な、なるほど」

 「感心してる暇があんならさっさとやれ」

 「わかった」

 

 俺は近くにあった剣から手に取っていき、持ちやすいものを探していく。

 片手で持つものにも色々とあり、柄っていう持ち手部分の長さが狭かったり広かったり、太かったり細かったり、凸凹があったりなかったり、柄の後ろの部分が膨らんでいたりいなかったり。そこに両手で持つものも加わって、大量のバリエーションがある。そんな中から自分に合うものを探すのは一苦労だ。持っては戻し、持ってはまた戻しを繰り返す。

 それを数分間続け、その中でも良かった4本を冠の前に置いて、次に進む。


 「これをオレの前においてどうすんだ?」

 「あとで一番いいのを合わせて作るけど、それの元になるのがある方がわかりやすいし、冠に直接見て指摘してもらった方が早いと思ったから」

 「そうかよ。ならさっさとしろ」


 次は鍔。刃と柄部分の間にあるやつ。偉い人が式典で使いそうな飾りのついたものや変な形をしたもの、フェンシングの剣のようなカップ?みたいなのがついたものやよく見るような板のような感じのもの。種類自体は結構少ないが、手が守れたり、出っ張っていて敵の剣とかを引っ掛けられそうなものもある。

 色々と見ていき、その中でも気に入ったものを6本持って再び冠の前においた。


 「さっそく訳がわからねぇな」

 「なにがだよ?」

 「いや、なんでもねぇからさっさと進めろ」

 「はぁ…?」


 俺に剣のことはよくわからないので言われた通りさっさと進める。

 次…というより最後は刃の形と幅だ。こっちも色々と種類がある。まず第一に長さ、果物ナイフのような短いものから2m半ぐらいあるのではないかと思うほど長いもの。これは昨日の感覚から選んでいこう。俺は昨日カカシと同じ距離感覚で切ろうとしたところ、思ったより敵を近くまで来させてしまうことが多かった。できればもっと遠くのうちに敵を倒したいので、前の剣が70cmくらいだったはずだから1mないくらいのものがいい。そのサイズのものを探して最もイメージに合う長さのものを1本冠の前に置く。

 次に形状。普通に剣先まで真っ直ぐで先だけが尖っているものや日本刀のように内側に沿っているもの、なぜか外側に沿っているもの、剣先に向けて太くなり先だけが尖っているものやグニャリと歪んでいるもの、ところどころが凹んでいるもの…意外と種類が多い。これは気に入った形を選んでいこう。俺は3本の剣を冠の前に置く。

 最後が厚さと幅。分厚い剣や薄い剣。幅の広い剣やレイピアのように針みたいな剣。色々と種類がある。俺は昨日の感じだと叩きつけるより切る方が楽なような気がした。もしかしたら気のせいかもしれないが、その場合は薄い方がいいのだろう。だけど薄すぎて敵の攻撃が弾けなかったら意味がない。適当に結構薄いのとちょっと薄いのとちょっと厚めのの3本を冠の前に置く。

 そして、幅だ。もうこれは昨日使ってたものぐらいでいいと思う。だいたい7,8cm程度。


 「こんな感じかな」

 「そうか。で、これをどうするつもりだ?」

 「いいところ取りで作ろうかと」

 「そうか。じゃあさっさとやれ。指摘してほしんだろ?作ったら…いや、一度移動するか。ここじゃあせめぇ」

 「あ、うん。確かに」

 「よし、それ持ってこい」

 「手伝いは?」

 「しねぇよ。テメェが選んだんだから自分で持て」

 

 俺はため息をつき、16本もある剣の束を両手で抱えて持って行く。当然のことだが1本1本が鉄とかの塊なので相当重い。1本が1kg前後あるから全部で16kgぐらいある。それに鞘があるのとないのがあるから気をつけて持たないといけないので危ない。

 俺はそっと部屋から出て扉を閉める。それを持って入ってきた方向に向かい、警備員のような人の前で冠が立ち止まったので俺も止まる。


 「37,42,57,63,66,72,97,131,144,152,153,189,204,234,255,267番が持ち出しだ」

 「毎度毎度よく覚えてんな」

 「オレのもんだろうが。覚えていて当然だろ?ヒッヒッヒ…」

 「普通は無理だって。はい、いいよ」


 「オレのもん」って言った?じゃああそこに入ってたのは全部冠の物なのか?


 「これって全部冠の物?」

 「ああ、それがどうした」

 「あの部屋のも?」

 「そうか、知らねぇのか。あの部屋は貸し出されてる倉庫だ。あの部屋に入ってるもんは全部オレのもんだ」

 「へぇ…こんなにどうやって集めたの?」

 「譲り受けたか敵から略奪した。買ったもんはねぇ」

 「はぁ」


 やってることが悪人にしか聞こえないのは気のせいだろうか?

 そんなことを思いつつ、慎重に廊下を歩いていく。時々すれ違う人に哀れみの混じった目線を向けられるのはなぜだろうか?もしかしてパシられてるとか思われてるのか?

 突然冠が立ち止まった。剣を見て歩いていたせいで俺はぶつかりそうになり持っている剣を落としかけた。


 「よぉ、隊長さん。テメェの息子は元気だぜ?…ヒッヒッヒ」

 「そうかよ。で、どうだ?強くなりそうか?」

 「まぁこれから次第だな」

 「そうか。彼方、頑張れよー」

 

 前を見ると父さんがいた。俺に向けてエールを送ってくれた。俺はそれに頷き、父さんは去っていった。

 再び歩き出し、少しして訓練室についた。

 俺はそっと地面に持ってきた剣を下ろした。


 「はぁ…重かった」

 「それごときで疲れてんじゃねぇ。さっさとやるぞ」

 「…わかった」


 俺は持ってきた剣を見ながら銅で形を作っていく。

 柄を作り鍔を作り刃を作る。全部の組み合わせを様々な重さで作ったところで俺の目の前に643本の剣ができた。適当に作るだけだからそんなに時間はいらない。物の数分で剣の山が出来上がった。


 「おい、これを全部見ろとか言ってんじゃねぇだろうな?」

 「いや、さすがにそんなことは言わないから。これからいい感じの物を選んで、それを見てもらう」

 「そうか。じゃあさっさとしろ」

 「冠ってよくさっさとっていうよね」


 ちょっとした口癖に気がついたところで俺は剣を1本ずつ持って振ってみる。

 悪くない物とダメな物を分ける。さらにその悪くない物をもう一度振ってみてさらに選別。30分ほどかかって最終的に15本にまで絞り込んだ。

 それを重さの比重を変えてちょうどいい物に変える。全体的には先端の方が軽く、早く振りやすくなっている。


 「こんな感じだけど?」

 「わかった。1本ずつ振ってみろ」

 「あれ?俺が振るの?」

 「当然だろ。見たところだと悪くない物だけが残ってるようだから、その中で一番いいもんをオレが選んでやる」

 「わかった」


 俺は無駄に作った物を操作で消してから、残った剣を1本ずつ振っていく。

 ヒュン…ヒュン…ヒュン…

 剣が空を切る音がする。確かに自分で作ったやつの方が今までの剣より使いやすい気がする。


 「それだな」

 「これ?」

 「ああ、それだ」


 俺は冠が指差す1本を手に取る。


 「一番よく振れていた。これから使っていく中で重さとバランスを変えればちょうど良くなるはずだ」

 「なるほど。じゃあこれにするとしよう」

 「まぁ変なもんなのはどうせ間違いねぇとは思うがな」

 「そう?」

 「持ち手は両手よりの片手、そのくせ籠鍔付きで刃は90cmちょいの薄くて両刃の直刀だ。んな変な剣が普通あるかっつの」


 確かにその剣は結構変わった形をしている。

 柄の部分は拳1つより少し広く、そして手の大きさにちょうどいい太さのでこぼことした物。鍔にはサーベルのような手の部分を守る物…ただ、あんなにゴツくなくて飾りみたいな感じだ。そして刃はそこそこ薄めで長さ94cmの両刃のまっすぐな物。

 簡単に言うならサーベルの鍔の部分を飾りに変えて刃を普通の剣より少し薄くて先のとがった物に変えた感じだ。

 確かに違和感満載な気がする。


 「で、どうすればいい?」

 「とりあえず振っとけ。オレはこれを片す」

 「なら俺も手伝う。俺が持ってきたんだし」

 「るっせぇ。テメェはおとなしく剣を振ってろ。さっさとその剣に慣れとけ。ついでにちょうどいいようバランスも整えとけ」

 「…わかった」


 俺は横目で冠が俺の持ってきた剣を持っていくのを確認しつつ、今作った剣を振る。

 数回振って、重さの比重の割合を変えてバランスを整える。

 それを数十回繰り返したところでほぼちょうど良くなったので、素材を変えて色々と作ってみる。鉄や金、銀、マグネシウム、アルミ、スズ、鉛、ダイヤモンド、亜鉛、チタン、白金…その他色々。せっかくだし、丈夫だったりしたほうがいいと思ったのだ。それに熱の伝えやすさとか電気の通しやすさだとか、色々と変わるのであの少年のように雷を使う能力者に対抗する方法も考えていた。


 「何してんだ?テメェは」

 「材料を変えてる。銅だとさすがに柔らかいから鉄とかに当たったら負けちゃうかと」

 「まぁそれもそうだな」


 冠に呆れ顔を向けられつつ、俺は満足がいくまでそれを繰り返した。

 最終的に密度をあげれば硬さも重さも結構どうにでもなるということに気がついたのは笑わないでほしいところだ。


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