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P  作者: R-N
7/8

─胡麻斑天牛─

『


 黒地に白い星を散りばめたドレスを着て、彼女は恍惚とした表情を見せている。

 押さえ付けている私の手元で、彼女は戦慄かせる様に、手足をばたつかせてもがいた。


 今は、私と彼女だけで、他に誰もいない。思う存分、彼女を堪能する事ができる。

 そう思うと…嗚呼、この胸の高鳴りをどう表現すれば良いだろうか。

 手の内にある彼女の姿に、私は何度もほくそ笑んだ。


 頚を仰け反らす度に、軋むような甲高い悲鳴をあげ、私にイヤイヤと首を振ったね。

 その仕草が私をゾクゾクとさせる。



 そう言えば、彼女との馴れ初めは、あれが初めてであったろうか。


 硬いものが好きなようで、初めての時も彼女は夢中でその芯を貪っていた。

 奥へ、奥へとその身をどんどんめり込ませる。

 彼女との格闘は楽しい反面、流石の私も骨身に染みた。




 だが今度は私が彼女を攻める番だ。

 ゆっくりと、じっくりと、その身のヴェールを剥いでいく。


 ああ、長く細くしなやかで、まるで鞭のようだ。

 私は遠慮無しに手で触れて扱いてみた。


 彼女にとっても其処は敏感な部分なのであろう。形振り構わず頭を振って、強く抵抗した。

「…っ」

 痛い、と思ったら、彼女のハが私の指に食い込んでいた。血が少し滲む程に強く彼女は咬んだのだ。


「痛いではないか!!」

 思わず私は怒鳴り付け、彼女の頭に生えているそれを摘まんで振り回し…    』








 相も変わらずくだらない事を…杉原女史は冷めた眼差しでノートを閉じた。

 今回のターゲットは恐らくこれだろうと、先日ゼミの連中総出で駆り出された害虫駆除の戦利品を眺め見る。

 捕獲したカミキリ虫の幼虫達が瓶の中でのたうっていた。

 そしてその脇には教授が採取したゴマダラカミキリが、出せ、と言わんばかりのキィキィと金切り声を上げて鳴いている。

 何が“恍惚とした顔”よ。

 何を考えているのか分からない虫の顔に、表情もクソも在るものか、と幼虫の入った瓶だけ持って、待ち合わせのカフェへと足を向ける。

 勿論、外からは見えない様に紙袋に沈めて、だ。

 気分はちょっとしたデートかもしれない。だから無粋な物体は、極力目に入らないようにして、と。

 そういう間に、目的地へ到着した。


「お待たせ。これがお約束のブツよ。」

 そう言って、提げていた紙袋をテーブルの上へ置く。

「有り難うございます。うちのピーちゃん(四十雀)もきっと喜びます。」

「早く良くなって野生に帰れると良いわね。」

「はいっ。」


 嬉しげに頬を紅潮させる、キラキラとした愛らしい彼女(後輩)の笑顔に、自ずと女史の頬も弛んだ。

 アラヤダ、私ったら。

 思わず照れ隠しに下を向き、何度も頭を下げる彼女を見送る。

 教授の変なのが感染(うつ)ったかしら。


 まあ良いわ。と、妙なステップを踏みながら、カフェを後にする。


 そんな彼女の奇怪な姿が目撃されつも、誰も止める者はいなかった…らしい。




 暫くの間、杉原女史の機嫌が良いと影で噂されていたが、その真相を知る者は果たしているのだろうか。いや…。



 ─ゴマダラカミキリの章 完─


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