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P  作者: R-N
3/8

─沼蛙─

『 今日も良い天気だ。プールにでも行きたい気分だ。


 そう思っていた矢先、学生にプールに行く誘いを受けた。

 その誘われた出先で、思わぬ出会いがあった。



 いつもの様に何気なく辺りを見回し、そろそろ戻ろうかと考えていた矢先だ。

 彼女は勢い良く、私の目の前を横切った。

 渡り切った向こう側で、脚を止める。


 ふくよかな肉体。

 パッチリとした大きな目。

 一目で私は、彼女に惚れ込んだ。


 共にいた学生をさっさと振り払い、慎重に、彼女の死角へ回り込む。

 そして、両手を伸ばして彼女をしっかりと捕まえた。

 驚いた彼女が激しく抵抗し、冷や水を浴びせかけて、私から逃れようとするも、そのぐらいで諦める私ではない。

 力尽くで押さえ込み、モノにした。


   

 彼女を仰向けにすると、私はその濡れた肌に指を這わせた。

 思った通り、白い胸元から腹部まで、とても滑らかだ。

 何とも触り心地が良いではないか。流石、女神の名を冠するだけの事はある。


 こうして、キュッと折り畳まれた脚を、伸ばしてやる。

 初めは頑なに拒んだが、力負けして脚を広げた。だが、油断をすると直ぐに閉じる。全く困ったものだ。


 内股に見える、ライトグリーンが鮮やかな豹柄が目に付いた。

 背後から見ていた時には気付かなかったが、隠れた部分で魅せるとは、なかなか御洒落だ。



 彼女の咽がヒクヒクと蠢く。半分閉じられた瞼が私に訴えかける。

 ああ、そうか。苦しいのだね、この姿勢が。

 私はそっと彼女を抱え起こした。直ぐに丸く縮こまり、上半身だけ起こして私を見た。そして─

 

 私の手を思い切り蹴飛ばし、プールへ飛び込み、泳いで逃げて行った。


 ……………。

 ショックで暫く呆然としてしまった。

 だだっ広いプールの真ん中まで泳いで行かれてしまっては、流石に私も手が出せない。


 仕方が無い、今日の所は引き上げるとしよう。






 しかし、あの跳ねっ返りな強さは、いささか…私を手こずらせて困るな。


 今度は是非とも、キャフンと言わせてやりたい。

        』













 …キャフン?

 ギャフン、の間違いではないの?


 そもそも“ギャフン”と言うかどうかは、置いておくにしても、だんだんと内容が危ない…方向に向かっている様な気がして、杉原女史は溜息を吐いた。

 


 しかし…プール? この近くにそんな大きなプールなんてあったっけ。

首を傾げながら、そう言えば今朝、農学部の学生が教授を水田に誘っていたのを思い出す。


 ああ、そうか!


 ピンと閃いて、鳴き声調査時の蛙の資料を広げ見る。

 目当ての物は直ぐに見つかった。


『…沼ガエルという名前だが、どちらかというと田んぼのカエル。咽元にある鳴嚢がハート型をしている。お腹は真っ白でつるつるしており、腹がざらざらして灰褐色のツチガエルと区別し易い。学名は“沼の女神”という意味を持ち…』

 (参照:身近な両生類・爬虫類観察ガイド 他)


…確かに『キャフン』で、合っているわ。

 





 でもね、教授。しつこいようですが、

『キャフン』と鳴くのは“オス”ですよ。





─ヌマガエルの章 完─


参考資料:


「身近な両生類・はちゅう類観察ガイド」

関慎太郎 著(写真・文) 文一総合出版


 日本の身近な両生類・はちゅう類が載っていて、『観察ガイド』と銘打っているだけあって、生態が解り易い、初心者お勧め本です。




兵庫県の両生類(セミナー用参考資料) 非売品


 両生類モニター調査で配られた資料。その際、時折最後に『キャフン』と鳴く事を教わりました。

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