証拠提示(プレゼンテーション)と、完全なる一掃
「証拠でしたら、もちろん用意してございますわ」
私が魔石に魔力を流し込むと、会議室の空間に、暗殺ギルドのリーダーの声が大音量で再生された。
『俺たちにアレクシス殿下とセレスティア令嬢の暗殺を依頼したのは、ヴォルグ侯爵だ。報酬は金貨五百枚。間違いねえ……』
「な、なななっ……!?」
「さらに、もう一つ。こちらが侯爵の直筆サインと実印が押された、暗殺依頼書の原本です」
私はルークから受け取った書類を、国王陛下と他の貴族たちに見えるように円卓の中央に叩きつけた。
そこには言い逃れのしようがない、確固たる事実が記されている。
会議室は水を打ったように静まり返り、次いで、旧守派以外の貴族たちから怒りの声が爆発した。
「ヴォルグ侯爵! 貴様、国を救った英雄を暗殺しようとしたのか!」
「己の保身のために、王族を手にかけようとするなど、万死に値するぞ!」
「あ、違う! これは罠だ! この女がでっち上げた偽造書類に決まっている!」
見苦しく喚く侯爵に対し、私はさらに追撃の手を緩めなかった。
ルークが私の後ろに、数人の騎士たちを連れて大きな木箱を運び込んでくる。
「侯爵。私を甘く見ないでいただきたい。暗殺の件だけではありません。あなたが過去十年にわたり、西部の領主たちと結託して国の補助金を横領し、闇市で武器の密輸を行っていた『不正会計の証拠書類』も、すでにすべて確保してあります」
木箱を開けると、そこには侯爵の悪事のすべてが記された裏帳簿が山のように詰まっていた。
私が西部での仕事の合間に、ルークたち情報網を使って徹底的に調べ上げた「特別監査」の成果だ。
「横領、密輸、そして王族の暗殺未遂。コンプライアンス(法令遵守)の概念が完全に欠如しているようですね。これだけの重大な違反を犯した経営役員(貴族)は、即刻『懲戒解雇』されるべきですわ」
「ひぃぃぃっ……!!」
完全に退路を断たれ、すべての悪事を白日の下に晒されたヴォルグ侯爵は、膝から崩れ落ち、無様に床に這いつくばった。
彼に同調していた旧守派の貴族たちも、「わ、私たちは関係ない!」「侯爵に脅されていたのだ!」と見苦しい責任の押し付け合いを始めている。
「……静まれぇぇぇっ!!!」
国王陛下の、怒りに満ちた一喝が会議室を震わせた。
「ヴォルグ侯爵、およびその一派よ! 己の私腹を肥やすために国を腐らせ、あまつさえ未来の王たるアレクシスを殺そうとするとは……! 断じて許さん! 近衛騎士団! 奴らを全員捕縛し、反逆罪として裁きを下せ! 財産はすべて没収し、一族郎党、極寒の北方の鉱山へ送るのだ!」
「はっ!!」
待機していた騎士たちが一斉に雪崩れ込み、泣き叫ぶ腐敗貴族たちを次々と引きずって退出させていく。
「いやだぁぁっ! 助けてくれぇぇっ! 私が北方の鉱山などに行けば凍え死んでしまうぅぅ!」
侯爵の断末魔のような悲鳴が、会議室の扉の向こうへと消えていった。
「ふぅ……。これでようやく、王宮内の大掃除が完了しましたわね」
私は扇子で口元を隠しながら、心の中でガッツポーズをした。
私を虐げた家族、無能な王太子、そして国を腐らせていた旧守派の貴族たち。
すべての「不良債権」を一掃し、この国を新しく立て直すための完璧な土台が、ついに完成したのだ。




