愚者たちの末路と、遅すぎる後悔
実父を別荘へ追放した日の夜。
私の執務室に、専属エージェントであるルークが、王宮からの最新情報を携えてやってきた。
「セレスティアお嬢様。地下牢に収監されていた『元』王太子殿下と、エレナ夫人、マリアの処遇が正式に決定したとのことです」
「ご苦労様、ルーク。それで? 陛下はあの愚か者たちに、どのような判決を下したのかしら」
私が紅茶のカップを傾けながら尋ねると、ルークは淡々と報告を始めた。
「まず、レオンハルト元王太子殿下ですが……王族としての身分と王位継承権を完全に剥奪されました。今後は一介の平民として、北方の魔物が蔓延る極寒の国境警備隊へ送られ、一生涯、最前線での過酷な肉体労働に従事することになります」
「妥当な判断ね。温室育ちの彼に、北方の過酷な環境がどれだけ耐えられるかしら」
前回の人生で、私を冷たい地下牢に閉じ込め、首をはねた男だ。
彼には、自分がどれほど恵まれていたかを、凍えるような寒さと恐怖の中で一生かけて悔やんでもらわなければならない。
「そして、エレナ夫人とマリアについてですが」
ルークの口元に、微かに冷ややかな笑みが浮かんだ。
「国家への反逆未遂および貴族資産の横領罪により、貴族籍の剥奪。さらに、南方の死の砂漠にある『魔石採掘場』での、無期懲役の強制労働が言い渡されました」
「へえ……。灼熱の砂漠での強制労働。日傘も、日焼け止めも、美味しい紅茶もない世界ね」
「はい。判決を聞いた二人は、『ごめんなさい、私たちが悪かったわ!』『セレスティアに謝るから、どうか助けて!』と、地下牢の中で泣き喚き、壁に頭を打ち付けて後悔していたそうです。……どうされますか? 一度、顔を見に行かれますか?」
私は少しだけ考えた後、ふっと鼻で笑って首を横に振った。
「いいえ、行く必要はないわ。私の時間は有限よ。すでに終わった不良債権に割く時間は一秒たりともないわ」
今さら後悔してすがりついてきても、もう遅い。
彼女たちが私から奪い、苦しめた時間の代償は、彼女たち自身の人生をかけて支払ってもらうだけだ。
「さあ、過去の清算はこれで完全に終わったわ。ルーク、これからは未来(次なるプロジェクト)の話をしましょう。今夜は、大切な『共同経営者』をお迎えするのだから」
私がそう言うと同時に、執務室の窓を叩く音がした。
ルークが窓を開けると、夜風と共に、黒い外套を羽織った長身の青年が、音もなく部屋の中へと滑り込んできた。




