破棄へのカウントダウン
公爵邸の自室に戻った私は、さっそく集めた証拠の整理に取り掛かった。
机の上には、先ほどの密会を記録した魔石に加え、ルークが独自に集めてくれた「二人が密会を重ねていた日時と場所のリスト」、さらにはマリアがレオンハルト殿下に宛てて書いた甘ったるい恋文のコピーまで揃っている。
「完璧な『破滅のポートフォリオ』の完成ね」
私はその書類の束を美しく装丁された革のファイルにまとめ、表紙に『婚約解消および損害賠償請求に関する合意書』という仮のタイトルを記した。
もし、私がただの16歳の令嬢「セレスティア」のままだったら。
来月の生誕祭で、突然レオンハルト殿下に婚約破棄を突きつけられ、マリアの嘘を信じた群衆から冷たい視線を浴び、絶望の中で涙を流すしかなかっただろう。
前回の人生のように、誰にも助けてもらえず、断頭台へと続く暗い道を歩まされていたはずだ。
しかし、今の私の中には「神崎玲奈」という最強のコンサルタントの魂がある。
理不尽な運命も、悪意に満ちたシナリオも、すべて私の手で論理的に叩き潰すことができる。
「レオンハルト殿下、そしてマリア。あなたたちは自分たちが『悲劇のヒーローとヒロイン』だと思い込んでいるようだけれど……」
私は真紅のルビーが埋め込まれたペーパーナイフを手に取り、手元の不要な羊皮紙をスッと真っ二つに切り裂いた。
「残念ながら、あなたたちが立っている舞台は、私が用意した
『断頭台』よ」
生誕祭まで、あと二週間。
彼らが私を陥れようと最も輝かしいスポットライトを浴びるその瞬間が、私が彼らを社会的に抹殺し、すべてを奪い取る「最高の逆転劇」の幕開けとなる。
窓の外では、王都の空が夕焼けに染まり、燃えるような真紅に輝いていた。
まるで、これから始まる壮絶な復讐劇を祝福しているかのように。




