経営再建と、義妹の足掻き
私が継母エレナから公爵家の実権を奪い取ってから、早くも一ヶ月が経過した。
その間、私は前世のコンサルタントとしてのスキルをフル稼働させ、公爵家の「経営再建」に着手した。
横領に関わっていた腐敗した使用人たちはすべてリストラし、誠実で優秀な者だけを適材適所で再配置。
無駄な経費を徹底的に削減し、領地の特産品である魔石の流通ルートを見直すことで、公爵家の利益はわずか一ヶ月で前年比百五十パーセント増という驚異的なV字回復を遂げていた。
「おはようございます、セレスティアお嬢様。本日の朝食は、王都で人気のベーカリーから取り寄せた焼き立てのクロワッサンと、新鮮なフルーツの盛り合わせです」
「ありがとう、アンナ。とても美味しそうね」
明るい日差しが差し込むダイニングルームで、私は新しいメイド長であるアンナが淹れてくれた最高級の紅茶を優雅に楽しんでいた。
一方、テーブルの隅に座る継母エレナと義妹のマリアの前には、固い黒パンと、具の少ない薄いスープだけが置かれている。
これは嫌がらせではない。
彼女たちがこれまで私に与えてきたものと「全く同じメニュー」を提供しているだけだ。
いわば、自業自得という名の適正なコストカットである。
「……っ、どうして私たちがこんなみすぼらしい食事を! セレスティア、あなたって本当に性格が悪いわ!」
マリアが、悔しそうに黒パンをフォークで突き刺しながら叫んだ。
彼女が着ているのは、もはや流行遅れで生地も安っぽい、以前の私が着せられていた若草色のドレスだった。
予算の権限を私が握っている以上、彼女が新しいドレスや宝石を買うことは一切できないのだ。
私はクロワッサンを一口かじり、口元をナプキンで上品に拭ってから微笑んだ。
「性格が悪い? 心外ね。私は公爵家の予算を『適正に』管理しているだけよ。公爵家の血を引いていない居候のあなたたちに、毎日食事とベッドを提供しているだけでも、私の慈悲深さに感謝してほしいくらいだわ」
「キーッ! 言わせておけば……! 見てなさい、私には私の武器があるのよ! いつか絶対に、あなたより幸せになって、見下してやるんだから!」
マリアはバンッ!とテーブルを叩いて立ち上がり、涙目でダイニングルームから飛び出していった。
継母も逃げるようにその後を追う。
私は残された紅茶を優雅に啜りながら、ふふっと小さく笑みをこぼした。
(どうぞご勝手に。むしろ、そうやって足掻いてくれないと困るのよね)
前回の人生では、マリアが王太子レオンハルトに接触したのは、半年後の王立学園に入学してからのことだった。
しかし、私に実権を奪われ、金もドレスも失い、焦りに焦った彼女は、タイムラインを大幅に前倒しして「行動」を起こすはずだ。
彼女に残された唯一の武器――あざとい可愛らしさと、嘘の涙を最大限に利用して。
そして、その狙い通り、マリアは動き出した。
彼女は「姉にいじめられている可哀想な妹」というシナリオをでっち上げ、レオンハルト殿下への接触を図り始めたのである。




