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あの空 〜of kanna〜  作者: kooy


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第3話 『君を見つめる理由』

 翌日。


 彼女はいつも通り登校していた。


 昼休み――。


 カンナと美香が教室へ戻ってくると、教室の一角に人だかりができていた。


 何人かの女子が、奈緒を囲んでいる。


 奈緒はクラスでも目立つ存在だった。


 スタイルもよくて、綺麗。


 そんな奈緒が、今日は少し元気がない。


「どうしたの?」


 カンナが近づく。


「聞いてよ、カンナ」


 女子の一人が、待ってましたとばかりに口を開いた。


「奈緒の彼がさー」


「奈緒の誕生日、忘れてたんだって」


「ひどくない!?」


「え〜」


 カンナは奈緒を見る。


「ひどいね」


 そう言って、奈緒の肩に手を置いた。


「……うん」


 奈緒が小さく頷く。


 どうやら、それが原因で昨日、二人は喧嘩したらしい。


 奈緒の彼氏は三年生。


 硬式野球部の主将をしている。


 もうすぐ夏の大会の予選が始まる。


 毎日の練習も忙しく、部活が終わるのは夜の九時近くになることもある。


 奈緒も、それは分かっていた。


 分かっていたから、誕生日のプレゼントが欲しかったわけじゃない。


 ただ。


 帰りくらいは、一緒に帰りたかった。


『待ってるね』


 奈緒はそう言った。


 すると彼は、


『先に帰っていいよ』


 と答えた。


 それが優しさだということも、奈緒には分かっていた。


 遅くまで待たせたくない。


 きっと、そういうことなのだ。


 でも――。


 奈緒は結局、部活が終わるまで待っていた。


 夜、九時。


 ようやく彼が出てきた。


 けれど、二人の間には気まずい空気が流れていた。


『……なんで待ってるの?』


『一緒に帰りたかったから』


『だから、先に帰っていいって……』


『でも……』


 奈緒は俯いた。


 そして、彼の口から。


『そんなにプレゼントが欲しいの?』


 奈緒は何も言えなくなった。


 奈緒は、そのまま怒って帰った。


「もう……会いたくない……」


 奈緒が呟く。


「じゃあ今日は、みんなでカラオケ行こうよ!」


 カンナが嬉しそうに言う。


「え?」


「奈緒、今日はいっぱい歌おう!」


「カンナ……」


「大丈夫。わたし、いっぱい笑わせるから!」


「それ、カンナが歌いたいだけじゃない?」


 美香が横から言う。


「そ、そんなことないよ」


 奈緒が、ほんの少しだけ口元を緩めた。


「……行こうかな」


「決まり!」


 カンナが嬉しそうに手を叩く。


 その様子を、教室の男子たちがちらちらと見ていた。


 奈緒はクラスでも目立つ。


 そんな奈緒の恋愛事情は、男子にとっても気になるらしい。


 もし別れたら。


 次は自分が――。


 そんな視線が混じっている。


「何、見てるのよー」


 美香が男子たちを睨む。


「関係ないでしょ」


「いや、別に……」


「見てないし」


 男子たちは慌てて目を逸らした。


 そんな中。


 カンナは、一人の男子を見ていた――大輝。


 大輝は奈緒のほうを見ていなかった。


 男友達と楽しそうに話している。


 何か面白いことでもあったのか、二人で笑っていた。


 カンナは、その様子をしばらく眺める。


「……大輝の誕生日って、いつなんだろう」


「え?」


 美香が振り返る。


「知らないの?」


「うん」


「四月一日だよ」


「え〜!」


 カンナが目を丸くする。


「もう、過ぎてるじゃん!」


「そうだね」


「知らなかった……」


 カンナは少し残念そうに大輝を見る。


 すると、ふとカンナは気づいた。


「でも、なんで美香が知ってるの?」


「え?」


「大輝の誕生日」


「……」


 美香が一瞬だけ黙った。


「同じ中学校だったからね」


 カンナは頷く。


 でも。


 すぐに美香の顔を見る。


「……本当に、それだけ?」


「何が?」


「大輝のこと」


「何がって?」


「狙ってるの?」


「はぁー、違う!違う!」


 美香が少しだけ顔を赤くする。


「ふーん」


 カンナはじっと美香を見る。


「怪しい……」


「怪しくないし!タイプじゃないよ」


「……そっか」


 カンナは笑った。


 それ以上は聞かなかった。


 ただ。


 少しだけ気になった。


 自分の知らない大輝のことを、美香はどれくらい知っているのだろう。


 そんなことを思いながら、カンナはもう一度、大輝に視線を送る。


 大輝はまだ、友達と笑っていた。


 その笑顔を見ていると。


 やっぱり、カンナの口元も緩んでしまう。


 大輝が何気なくこちらを振り向く。


 その瞬間。


 ふたり、目が合った。


「……あ」


 カンナは、息をのむ。


 大輝も一瞬だけ動きを止めた。


 けれど、すぐに友達のほうへ顔を戻してしまう。


 カンナも慌てて視線を逸らした。


 胸が、トクンと跳ねる。



 ――となりで、一緒に笑えたらいいな。


 そんなことを思った。

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