↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あの空 〜of kanna〜  作者: kooy


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
19/34

第18話 『君がス……』

 昼休み。


 いつものように昼食を食べ終えると、大輝はカンナに声をかけられた。


 カンナと美香が、こちらへ歩いてくる。


 いつもの昼休み。


 いつもの三人。


 ――のはずだった。


「ねぇ、大輝」


「ん?」


「昨日の帰りってさ……」


 美香が、大輝を見る。


「サッカー部のマネージャーさんと話してたよね?」


 大輝は思い出す。


 昨日の部活終わり。


 皐月さんに「お疲れ様」と声をかけられた。


 それだけだった。


 でも――。


 カンナの表情が、少し曇った。


 美香が、その様子を見ていた。


「やっぱり怪しいと思ったんだよねー」


 美香はジト目で大輝を見る。


「この間の『あ』!、何か言いかけてたでしょ?」


 大輝は思い出す。


「確かに、この間言いかけたことは……皐月さんのことだよ」


「認めるんだ」


 美香が少し驚いた顔をする。


「しかも名前まで知ってるんだね」


 美香が一歩近づく。


「で? あの可愛い子、何なの?」


 大輝は困ったように答える。


「ただ、挨拶をされただけだよ」


「ふーん」


「あと……」


「あと?」


「休憩中にも、話しかけられたかな」


「ふ〜ん」


 美香がニヤッとする。


「話しかけられるんだー」


「うん……」


「そのマネージャーさん、大輝のこと気にしてるみたいだったけど?」


「……」


 大輝は、ますます困った顔になる。


 その様子を見ていたカンナが、口を開いた。


「美香ぁ……もういいよ。大輝が可哀想になってきた」


「でもさー」


「ちょっと意地悪な聞き方になっちゃったね」


 カンナは大輝を見る。


「ごめんね、大輝」


「いや……」


「わたしもちょっと気になっただけだから」


「うん」


 大輝は小さく頷いた。


 美香は、そんな二人を見ていた。


「まぁ、カンナがそう言うならいいけど」


 そして、少しだけ目を細める。


「あの子さぁ……。なんか、獲物を狙ってるみたいな目をしてるのが気になるんだよねー」


「獲物?」


 カンナが首を傾げる。


「そう。なんかこう……」


 美香が手をわきわきさせる。


「狙ってる感じ」


「考えすぎでしょ」


 カンナが苦笑する。


「確かに、大輝を好きになるような子って……」


 美香は大輝を見る。


「カンナくらいだし!」


「それは酷くないか……」


 大輝が少し傷ついた顔をする。


「そうだよ。美香、言い過ぎ!」


「だって大輝だよ?」


「わたしは大輝のこと好きなの!」


「……ありがとう」


 大輝はカンナを見る。


「僕だって、カンナのことが……ス……」


「え?『ス』!」


 美香が反応した。


「今、何て言った?」


「……」


 大輝の顔が赤くなる。


「『ス』って言ったよね?」


「……」


「カンナのことが、何?」


 大輝は何も言えなくなった。


 教室には、他の生徒もいる。


 隣では、カンナも顔を真っ赤にしている。


「美香ぁ……恥ずかしいよ……」


「私は聞きたいけどなー」


 そのとき――。


 キーン、コーン、カーン、コーン。


 チャイムが鳴った。


「あぁぁ、もう少しだったのに!」


 美香が笑う。


「……」


 答えを濁す大輝の横で、カンナも耳まで赤くしてうつむいていた。


     *


 放課後。


 外は雨だった。


 グラウンドは使えないため、野球部もサッカー部も校舎の階段で走り込みをしている。


「一、二!」


「三、四!」


 階段を駆け上がる足音が、校舎に響いていた。


 帰り支度を終えたカンナは、美香と一緒に廊下を歩いていた。


「大輝、まだ練習してるかな?」


「たぶんね」


 カンナは、階段のほうを見る。


「ちょっと見ていこうよ」


「はいはい」


 二人が階段の近くまで来た、そのときだった。


「朝倉先輩!?」


 可愛らしい声が響いた。


「え?」


 カンナが振り向く。


 そこには、一人の女の子が立っていた。


 幼さの残る顔立ち。


 けれど、整った綺麗な女の子。


「あーぁ!」


 美香が、その子を指差す。


「この子だよ、カンナ!」


「え?」


「大輝にちょっかいかけてきた子」


「ちょっかいなんて……。私、皐月夏音って言います」


 夏音は、困ったように笑った。


「私、朝倉先輩と仲良くなりたいだけなんです」


「わたしと?」


「はい!」


 夏音は嬉しそうに頷く。


「朝倉先輩の彼氏が野球部にいたから、声をかけてみただけです」


「なるほど……」


「利用しちゃったみたいで、ごめんなさい」


「大輝、利用されたんだ! それにまだ二人は、付き合ってないけどねぇ」


 美香が笑う。


「美香ぁ、そういう言い方はしないで!」


 カンナが頬を膨らませる。


「はいはい」


「でも……」


 カンナは夏音を見る。


「何で、わたしと仲良くなりたいの?」


 夏音は、少しだけ目を輝かせた。


「入学したときから、朝倉先輩って、すごーく可愛くて目立ってましたから!」


「……」


「絶対に知り合いたいって思ってたんです!」


「そうなんだ。わたし、可愛くて目立つんだ……」


 嬉しそうに笑った。


「いいよ」


 カンナは笑顔で夏音を見る。


「仲良くしようね!」


「カンナ、単純だなぁ……」


 美香が呆れたように呟く。


「いつでも話しかけてよ」


「やったーっ!」


 夏音の顔がぱっと明るくなる。


「ありがとうございます!」


「うん!」


 二人は笑い合った。


 美香は、その様子を眺めながら、少しだけ笑った。


 そのとき。


 階段から、野球部員が降りてきた。


「あ……」


 大輝だった。


 大輝は階段を降りながら、カンナと夏音が一緒にいることに気づく。


「……?」


 二人とも笑っている。


 大輝は頭の上に大きな「?」を浮かべて、二人を見つめた。


「大輝ー。ガンバレー!」


 カンナが大きく手を振る。


「大輝先輩、ファイトです!」


 夏音も笑顔で手を振った。


「……はぁ?」


 大輝は、さらに困惑する。


「大輝ー!」


「大輝先輩!」


「「ファイトー!」」


 二人の声が重なる。


「いや、ちょっと待って……」


 大輝は、どうしてこうなったのか分からないまま立ち尽くした。


 その横で、美香は思わず吹き出した。


「……ふふっ」


 女子二人に振り回される大輝が、少しだけ可哀想に思えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。