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あの空 〜of kanna〜  作者: kooy


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第15話 私には理解できない理由

 私は、皐月夏音《さつき かのん》。


 高校一年生。


 サッカー部のマネージャーをしている。


 先日、私が憧れている向井先輩が、告白をした。


 相手は、同学年の女の子。


 朝倉カンナ。


 学校でも「可愛い」と噂されている女の子だ。


 そして、その告白を――


 朝倉さんは、その場で断ったらしい。


 理由は、


『好きな人がいるから』


 だった。


(……誰なんだろう?)


 私は、少しだけ興味を持った。


 向井先輩の告白を断ってまで付き合いたいと思える男の人。


 一体、どんな人なんだろう。


 私は、自分で言うのも何だけど、外見にはそれなりに自信がある。


 男の子から告白されたことも、何度かある。


 だからこそ、余計に気になった。


 朝倉さんが選んだ男の人を。


 そもそも、私はサッカー部に入るつもりなんてなかった。


 入学してすぐの部活動見学。


 友達に誘われて、なんとなくサッカー部を見に行った。


 そこで、向井先輩を見つけた。


 爽やかで、サッカーも上手い。


 チームの中心で活躍している。


 しかも、見学に来ていた私たちに、部員たちがしつこいくらい話しかけてきたときも――


「お前らさ。見学に来てくれてる子を、あんまり困らせるなよ」


 向井先輩は、私たちを庇ってくれた。


 その言葉も優しかった。


 押しつけがましくない。


 自然に相手を気遣っている。


 私は、その瞬間に思った。


 ――この人、『格好いい』。


 それで、サッカー部のマネージャーになった。


 だから私は知っている。


 向井先輩は、かなりいい人だ。


 そんな先輩の告白を断った。


 しかも、


『好きな人がいる』


 と。


「……気になる」


 私は、その人を探してみることにした。


 そして――


 見つけた。


 さほど大変ではなかった。


     *


 放課後。


 サッカー部の練習が終わり、陽は完全に落ちていた。


 私は他のマネージャーたちと一緒に、部室の前で後片付けをしていた。


 そのときだった。


「大輝ー!」


 少し離れたところから、明るく透明感のある声が聞こえた。


 私は、声のしたほうを見る。


 女の子が歩いてくる。


 朝倉さんだった。


 友達と一緒に、野球部の部室のほうへ向かっている。


「大輝ー!」


 もう一度、朝倉さんが呼ぶ。


 その声に反応して、野球部のほうから一人の男子が出てきた。


(……あれが?)


 私は、その男子を見つめる。


 高身長というわけではない。


 でも、体格はいい。


 野球をやっているからか、肩幅もある。


 顔は、普通――。


(……パッとしない)


 思わず、そう思った。


 なんとなく、昔持っていた『くまのぬいぐるみ』を思い出す。


 そのぬいぐるみは怖くない。


 強そうでもない。


 でも持っていると、なんとなく安心するような感じ。


 それが、


『大輝』


 と呼ばれた男子の印象だった。


 私は、改めて朝倉さんを見た。


 肌が白く。


 笑顔が可愛い。


 そして何より――、


 自然と、周りを明るくさせるような雰囲気を持っている。


 私には無理だ――、


 そう思った。


 外見が綺麗とか、そういう問題じゃない。


(……性格がいいんだ)


 たぶん、そういうことなんだと思う。


 私は、自分でも計算高くて、少し狡い女だと思っている。


 人がどう思うかを考える。


 どうすれば自分が得をするかも考える。


 だからこそ、分かる。


 向井先輩が、朝倉さんを好きになった理由も。


 でも――、なんで、この人なんだろう?


 私は、大輝を見る。


 朝倉さんは、大輝と楽しそうに話している。


 大輝も、笑っている。


 特別なことをしているようには見えない。


 ただ、話しているだけ。


(……分からない)


 私は、少し考えた。


 朝倉さんが、この人のどこを好きなのか。


 どうして、この人じゃなきゃダメなのか。


 私には、どうしても分からなかった。


 だったら――、知ればいい。


 私は、その日から大輝という男子生徒を観察することにした。


 練習中の姿。


 部員たちと話している姿。


 朝倉さんと話している姿。


 特別目立つところはない。


 むしろ、普通だ。


 でも、朝倉さんは楽しそうだった。


(……やっぱり、分からない)


 ただ見ているだけでは、分からない。


 そう思った。


 だから私は――、


 本人に聞いてみることにした。


 もっと近くで。


 直接話してみる。


 そして――、もし必要なら。


 少しくらい、揺さぶってみてもいい。


「……口説いてみようかな」


 そのつぶやきに、自分でも少し笑ってしまった。


 別に、惹かれたわけじゃない。


 好きになったわけでもない。


 ただ、知りたいだけ。


 朝倉さんが、どうしてこの人を好きになったのか。


 その理由を。


 私は、大輝のほうを見た。


(……面白そう)


 そう思った。


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