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あの空 〜of kanna〜  作者: kooy


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第12話 『放課後のステップと、君の声』

 放課後、体育館ではバスケ部とバドミントン部が練習していた。


 十月の文化祭までは、まだ十分な時間がある。


 カンナたちはステージを借り、毎週木曜日にダンスの練習を行っていた。


「美香、最初はダンス嫌だって言ってたのにね」


「だって……」


 美香はカンナを見る。


「カンナがやるって言うから」


「えへへ」


「でも、やっぱりダンス苦手だな」


「そう? ちゃんと練習してるじゃん」


「……まあね」


 美香は少し照れながら、ステップを確認した。


 何度もステップを繰り返すうちに、四人の額にはうっすら汗が浮かんでいた。


「じゃあ、ちょっと休憩しよっか」


 咲良が声をかける。


「やったー!」


 カンナがその場に座り込んだ。


 奈緒がカンナを見る。


「カンナ。最近、大輝とはどうなの?」


「イイ感じだよ」


 カンナは笑顔で答える。


「……ねぇ。奈緒はいつ彼とデートしてるの?」


「うーん……。基本、野球部は毎日練習しているからね」


 奈緒は少し寂しそうに言った。


「でもね。練習試合の翌日とかは休みになるから、そういうときにデートしてるかな」


「そっかー。そんなにたくさん会えないんだね」 


「『デート』って、カンナはまだ付き合ってないでしょ」


 美香が茶目っ気たっぷりに言った。


「いいの!大輝がお互いをもっと知るために、たくさん話そうって言ってくれたんだから」


 カンナは少し照れながら笑った。


「教室でもよく大輝と話をしているもんね」


 奈緒が微笑んで言った。


「へー」


 咲良が興味深そうにカンナを見る。


「カンナにしては慎重じゃん」


 咲良がニコニコしながら言った。


「うん。ゆっくりでいいの」


 カンナは、ふっと窓の外に広がる春の青い空を見た。


「だって、好きだからこそ、ちゃんと知りたいじゃん!……それに、ずっとこのままの時間が続けばいいのにって思うくらい、今が楽しい」


 そして、カンナは笑顔で振り返る。


「今こうしてみんなと話せてるのも、楽しいよ」


「そうね。今を楽しまないとね」


 奈緒が笑った。


 すると、咲良がため息をつく。


「ほんと! カンナと奈緒が羨ましいよ」


「何が?」


「好きな人がいて、楽しそうで」


 咲良は床に座ったまま、足を伸ばした。


「私なんか、この間、喧嘩してムカついちゃって……別れちゃったんだよね」


「また?」


 奈緒が呆れたように笑う。


「咲良、すぐムカついて別れちゃうからね」


「だってさー」


 咲良は少し考えてから言う。


「男って、体を触ってくるじゃん」


「まあ……」


「本当に私のこと見てくれてるのかなって、疑っちゃうんだよね」


「うーん……」


 奈緒が腕を組んだ。


「好きなら、そういうことしたくなるんじゃない?」


「そうなのかなー」


「まあ、恋人なんだし。そういうものじゃない?」


 その時、カンナが大声を張り上げた。


「分かるー〜! わたしも大輝に触りたいよー!」


「カンナ……」


 奈緒と咲良は少し呆れた顔でカンナを見つめた。


「カンナ、バカなの?」


 美香が静かな声で言った。


「もぉー、美香には関係ない話でしょ」


「そうそう。私には関係ない話ですよ」


「でも、そういう美香は、誰かと付き合ったことあるの?」


「失礼だな。あるよ」


「え?」


「小学校二年生のとき。一緒にサッカーやってた男の子に告白された」


「で、付き合ったの?」


「……付き合ってはないけど」


「じゃあ、やっぱり付き合ったことないんじゃん!」


「いいの!」


 美香は少し頬を膨らませた。


「それに、付き合ったら付き合ったで、いろいろ大変そうだから」


「美香はいつもそうこと言って、恋愛を避けるよね」


「私はカンナと一緒にいるほうが楽しいし」


「そうなの?」


「そうなの!」


 美香はカンナを見て笑った。


「わたしも、美香と一緒にいると楽しいよ」


「じゃあ、いいじゃん」


 咲良が呆れるように笑う。


「美香って、カンナの彼氏みたいだね」


「何それー!」


 カンナは楽しそうに声をあげて笑った。


 それからも、恋の話をしたり、ダンスの基本ステップを練習したりしながら、時間は過ぎていった。


 気づけば、窓の外はすっかり暗くなっていた。


 時計を見る。


 もうすぐ、野球部の練習も終わる時間だ。


「そろそろ終わるかな?」


 カンナが立ち上がった。


「野球部?」


 美香が聞く。


「うん!」


 カンナは嬉しそうに頷く。


「ちょっと見ていきたい!」


「はいはい」


 美香が立ち上がる。


「行きますか」


「やったー!」


 カンナは鞄を持つと、奈緒と咲良と一緒に体育館を出た。


 夜の校舎を抜けると、遠くに野球部員の声が聞こえてきた。


「大輝、いるかなー!」


 カンナの顔が明るくなった。


 その声に向かうように、四人はグラウンドへ歩いていった。


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