第11話 『君をもっと知りたい』
放課後。
「ねぇ。美香も一緒に行こう」
カンナに誘われて、美香も一緒に校舎を出た。
三人が向かうのは、野球部のグラウンド。
カンナは、大輝の隣を弾むような足取りで歩いていた。
「ねぇ、大輝は野球いつからやってるの?」
「小学校から」
「へー! じゃあ、ずっと野球好きなの?」
「うん。小さい頃から好きだった」
「じゃあさ、休日とか何してるの?」
「自主練とか、学校の課題とかかな」
「えらーい!」
「そうかな?」
「だって、わたしだったら絶対遊びに行っちゃうもん」
「朝倉さんは、そういう感じだよね」
「えっ、どういう意味?」
「いや……なんとなく」
「ねぇねぇ。じゃあ、大輝って最近どんな音楽聴いてるの?」
「音楽?」
「うん!」
カンナは次から次へと質問を投げかける。
大輝も、その一つ一つにちゃんと答えていた。
カンナが「へー!」と目を輝かせるたびに、大輝の口元も自然に緩んでいく。
そんな二人を、美香は少し後ろから眺めていた。
「……カンナ、質問多すぎ」
「え?」
カンナが振り返る。
「だって、大輝のこともっと知りたいんだもん」
「はいはい」
美香は苦笑した。
気づけば、グラウンドまでの道のりは、あっという間だった。
「カンナーっ」
美香が呆れたように声をかける。
「ちょっと、カンナばっかり質問してちゃ悪いよ」
「あっ!」
カンナが大輝を見る。
「そうだね。ごめんね、大輝」
「いや、大丈夫だよ」
「じゃあ!」
カンナは胸を張る。
「大輝から、わたしに質問していいよ!」
「え?」
「何でも聞いて!」
カンナは、どうぞと言わんばかりに両手を広げた。
大輝は少し考える。
「……じゃあ」
「うん!」
「朝倉さんは、どうして僕のことなんか好きになったの?」
「……!」
カンナの顔が、一気に赤くなる。
「えっと……」
カンナは大輝から顔を逸らした。
「……それは……」
「うん」
「……内緒!」
「えー! 言わないんだ!」
美香がすかさずツッコむ。
「だって……、恥ずかしいもん」
カンナは頬を赤くしたまま、小さく笑った。
「ごめんね」
「いや、僕が変な質問をしたんだ」
大輝も笑う。
「答えなくてもいいよ」
「……う、うん」
カンナは、ほっとしたように笑った。
「じゃあ、僕は部活に行くよ」
「あ、うん!」
「また明日」
「また明日!」
大輝はグラウンドへ向かって歩いていった。
カンナは大きく手を振る。
「大輝ー! 頑張ってー!」
大輝が振り返り、軽く手を上げた。
そのままグラウンド脇の部室へ向かう。
部室の前では、すでに何人かの男子生徒が準備をしていた。
大輝が近づくと、男子たちが一斉に寄ってくる。
「お前、何であんな可愛い子と歩いてるんだよ」
「彼女か?」
「男の友情はどうしたんだよ」
「違うって」
「じゃあ、何なんだよ?」
「……友達」
「その顔で言うなよ!」
「どんな顔だよ」
男子たちの笑い声が聞こえてくる。
カンナはグラウンドのほうを見ながら、振り返った。
「ねぇ、美香」
「なに?」
「少し野球部の部活、見ていっていい?」
「『ヤダ!』なんて言えるわけないでしょ」
「やったー!」
カンナは嬉しそうに笑った。
「早く行こう!」
そして、練習の始まるグラウンドへ駆けていった。




