冒険のそよかぜ
代表作シリーズ「大海の冒険者~不死の伝説~」
最終話 地球と人と未来のために(11)の部を、別視点でお送りします。
頭の中は話しかけたいことでいっぱいなのに、声は動物が鳴くようなものにしかなってくれなかった。
訴えようとする力と、それを止める力が同時にはたらいている。まるで身体の中に、別の何かが棲んでいるみたい。
どうしてこんなに”風”に惹かれるのか。時々、枯れ葉が肌を強く掠めるのに似た、痛い風が吹く。それは、自分が前のめりになろうとするのを引き止めてくる。その瞬間、“警戒しなくちゃ”と身体が引き締まる。
そばにはいつも誰かがいる。その多くは、この三人の子ども達だ。皆が話していることは分からないけれど、皆のそばにいれば平気であることは、風の心地よさで分かった。
大人達は手作りの船を出し、手作りの罠で魚を獲ってくる。一人ひとりの力と、限られた自然の力を合わせながら、お腹と心を満たしている。子ども達もそれに協力して、逞しかった。なにより怖いもの知らずで、身体中を使って自由に遊んでいる。
自由に――それを感じると、胸の奥でチクリと棘に触れるような痛みがした。でもそれを隠してしまうように、温かい風が顎を上げてきた。
潮の匂いがする風を吸い込むと、喉に太陽が落ちたような温もりが拡がっていく。力が放射状になって伸びていくようで、指先の力も沸いていく。
すると、何かをしなければならないような気がしてくる。身体や喉の熱が、吹きつける温かい風が、心を震わせてくる。
海や星の光のようにキラキラとした子ども達の声は、いつだってあたしを振り向かせる。わくわくする感覚が、爽やかな風になる。そして、“これでいい”と言われている気がして、迷いなく皆の中に入ろうと思える。
波打ち際にいた茶髪の男の子が大声を上げ、少し笑いながら合流してきた。皆の中に入ろうと思えた、あたしのように――
ここの人達といれば、どこも痛くない。
ここの人達といれば、どこか違っていようと気にならない。
この場所に渦巻く風はいつも、誰かの腕の中にいるみたい。
あたしは、この砂を踏みしめていることで、そして三人の子ども達とここで生きることで、何かを見つけられるのかもしれない。もしくは、絶対に見つけなきゃいけないのかもしれない。知らない音でできた、名前であろう短い言葉に導かれながら、いつか必ず。
ありとあらゆる自由と、繋がりと、本当の自分を。
その筏と風に乗って、返る時を――
完
※代表作「大海の冒険者シリーズ」に繋がる
本編はこれにて終了です。
ここまでお付き合い頂き、ありがとうございました。
本作は様々な参考資料を組み合わせて生まれたオリジナルファンタジーであり、人々が安全に暮らせる世界を祈ることと、安全な暮らしができる社会を目指す人々へのリスペクトを目的とした、一つのフィクションです。
以降、あとがきに入ります。
本作を執筆するにあたり参考にしたアレコレや、作中では深堀りされなかった各人物の詳細など、他にもたくさんの背景をまとめています。ご興味がございましたら是非、ゆっくりとご覧いただけますと幸いです。
Terra




