<18>
体感したことのない風力に、ムワンバもアシャも立ち上がれない。地面に這いつくばるのがやっとの中、子ども達はどうにか身を寄せ合い、強風に耐え続けた。
アシャは、自らを光に変えて泣き叫ぶオリトを捉えると、向かい風を這い進む。その間、周りを旋回するガラクタに、多くの武器が舞い上がるのを見た。オリトは、できる限り風の手を広げ、武器という武器を搔き集めて空に預けてしまっていた。
アシャはその光景に目を奪われていると、ふと、隣で動けなくなるムワンバの手元を見た。その時、その手に納まっていたピストルが風に攫われ、螺旋の一部になって空高く消えてしまった。
アシャはオリトを目指して急いだ。そして、眩しすぎる光に片目だけで立ち向かうと、どうにかオリトの身体を掴んだ。やっと近くに来られた今、彼女がエシェと同じ涙声を上げているのが分かると、強く抱きしめた。
「もう大丈夫……貴方が見たくないモノは飛ばされた……」
そう耳元で告げると、オリトを抱きしめたまま大きく倒れ込んだ。
「もういい、オリト。休みましょう」
オリトはこの時、ようやっと声を聞きつけ、目だけで辺りを探った。真っ赤に染まっていた視界は薄れ、誰かの影と温もりが肌を通して強く感じる。じわりじわりと、辺りが夜の景色を取り戻していくと、アシャの顔が見えた。
「みんな無くなったわ……みんな飛ばされた……」
アシャは言うと、泣き腫らした顔をして力尽きたオリトの頬を撫でた。そして、彼女の顔全体に迸る歪な金色の光が、喉に収縮していくのを見届けると、再び強く抱きしめた。
オリトはされるがままだった。抱きしめ返す力はなく、足にも力が入らない。そして、曇る視界の中にジャバリとマライカの顔を見た。どういう訳か、二人の顔や身体には、爪で引っ搔いたような薄くて細い傷がいくつも走っていた。
「オリト、大丈夫?」
「しっかりしろよ……」
オリトは薄目を開いたまま、余った力を振り絞り、横を向いた。
同じ傷を負ったラテガは、両手にピストルを握ったまま座り込んでいた。手は縄で縛りつけられたように、ピストルから解けなくなってしまっていた。手の動かし方も立ち上がり方も忘れてしまったかのように、石になってしまう。そんな中、ボロボロの布切れのようになってしまったオリトと目が合った。そして、彼女がたくさんの腕の中に包まれている姿を見て、胸の奥で何かが静かに緩むと――両手が解けた。
ラテガのピストルが力なく落ちた音がしたと同時に、オリトは目を閉じた。まだ眺める力は残っていたが、もう見ていられなくなった。友達が負った傷が自分によるものではないかと強く感じると、言葉が見つからなかった。何の言葉も紡げなくなってしまった。そして、視界を閉ざして広がる闇のうんと底に落ちていくように、心だけほろりと呟いた。
(こんなもの、いらない……)




