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副官に首を繋がれ、オリトは引かれるがまま廊下を歩いた。昼食が過ぎ、どこからともなく怒号や掛け声、銃声などの暴力的な音が飛び交っている。
それらを目にはせず、ただ耳だけで何が行われているのかを想像した。その中に、ジャバリやマライカの姿も浮かび上がる。その遠くには、冷酷な兵と化したアシャがいる。
自分の頭は酷いものだと、足元に視線を落とした。廊下を作り出す冷たいコンクリートの路から、砂の道に変わった。分断されたように建ついくつもの棟が凹凸の影を落としている。それらが繋がった様子を思い浮かべると、この拠点は元はたいそう大きな刑務所だったことが分かる。
強い陽射しが地面を温めていた。変動的で気味が悪い天候は強烈な暑さを招き、そこら中の枷の跡を肌に焼きつけようとして痒い。
硝煙の臭いがする風が、髪にこびりついた土を払い除けようと、横殴りに吹きつけてきた。土の湿り気が乾き、砂になって舞っていく。見たくもない金色の毛が、また視界に揺れはじめた。
細い光の筋が走ると目を瞑った。でも風は、耳元を這って囁いてきた。
――前、前、前……
オリトはぶんぶん首を振り、奇妙な囁きを払い除けようとした。しかしそれは、頭のずっと奥にこびりついて離れようとしなかった。
何を意味しているのかが分からず苛立ちが込み上げ、その感情を吹っ飛ばしてしまいたく、ぐわんと顔を上げて前方を睨んだ。すると、副官の足が止まった。
そこには比較的小さな建屋があり、牢が連なる二棟や、食事処と食糧庫がある一棟から独立していた。位置からして武器庫の近くだろうかと想像していると、すううっと冷たい風が吹き、手足が竦んだ。ムワンバと煙と、凍えそうになる空気がその中にだけ渦巻いているように感じてならなかった。
「来い」
首からピンと鎖が張られ、オリトは前につんのめりそうになるのをどうにか踏ん張る。易々とそこに入っていく副官に目を丸くさせてしまう。
オリトは自ずと首が横に振られてしまう。今日まで見てきた建物と何ら変わらないはずだというのに、そこは酷く暗く、狭く感じた。窮屈な殻の中に、小さな隙間から押し込められていくような感覚で、だんだん息が上がっていく。
(行きたくない……暗いのは嫌……)
唇だけがそう告げていたが、声にならなかった。声の通り道は、喉元の鎖ですっかり締めつけられているようだった。その時、風の声が蘇ってきた。
――前、前、前……
しかし暗すぎて、前を見るなど恐ろしかった。それでも足は、手は、身体は、そして頭は、すっかりその闇の中に誘われてしまった。




