<3>
※刺激が含まれます
*
女性が部下の男に連れられたそこは、薄明りがちらつく、埃と煙の臭いがこもる狭い空間だった。
彼女は放り込まれると、そこに待機していた他の仲間が驚きに立ち上がる。そして一人が、彼女を連れてきた仲間と入れ替わるように、銃を担いで部屋を後にした。
指令を受けた男は、ほとんど抵抗しなくなった女性を台に力強く仰向けにさせると、その股を開き、肉を貪るように覆いかぶさった。
台の軋みに砂地が削れる音、男の獣のような息遣いが混ざり合っていく。
女性は合間で嘆きを漏らしたが、激痛と屈辱を奥歯に噛みしめ、この時間が過ぎるのを待ち続けた。
今日までに百を超える鞭打ちを負った背中が、ねじ込まれる男の獣じみたモノを受ける股が、気が遠くなるほどに痛い。それでも子どもの時に受けてきたものに比べれば、何千倍も耐久がついてしまった。この時間をただ耐えるだけで、あの子達の命は助かる。
腕が、肩が、顔が落ちかかる。燻み、砂に塗れた台の縁が肌を擦り、傷に食い込もうとする。思わず顔をゆがめてしまうが、即座に真顔に戻してみせる。途中であえて相手のモノを締めつけさせ、早々に満足させ、さっさと快楽を放たせようとする。
懲罰は短めに終わった――かと思いきや、残っていた待機班の一人が鼻を鳴らしながら続いた。
肉体を掻き回されるにつれて込み上げる焦燥と怒りを、何度吞み込んだか分からない。途中、身体を大きく引き摺られたせいで、背中の激痛に声を上げてしまった。それを塞ぐように覆い被さる大男の脂汗の臭いが、延々と鼻に突く。それでも事態を早々に終えたく、一度喘いでやる。
身体が落ちかかるところ、縁を掴んで支えた。脆い生地で覆う上半身に、息とベタつきを感じる。汗と血と唾液が混ざるところを勝手に想像させられ、いよいよ胃が突き上げそうになるが、それにも歯を食いしばる。
最後、男の攻撃的な一撃が入ると、首と腕が反動に耐え切れずにズレ落ちた。今にも窒息しそうなところを堪え、背中の痛みもよそに身体を戻すと、しばし呼吸することだけに意識した。
男達の笑い声がする横で、天をチラチラと鬱陶しく明滅する電球を眺めた。懲罰の振動を緩やかに治めながら、こちらを見下ろしてくる。灯にだけ集中し、精神を整えていく。早くここから出なければと、頭に子ども達の顔を思い浮かべた。
そこへ、重い足音が近づいてきた。大きな影が電球を遮っても、彼女は微動だにせず三度目の懲罰を受ける構えを取った。だが、顔をまじまじと覗き込む司令官ムワンバは、彼女の首筋から、半端にはだけた上半身に舌を滑らせるだけに留めた。
「あの餓鬼からは、アシャ……お前ェと同じ臭いがする……」
ねっとりと名を呼ばれた彼女は、ムワンバのいやらしい眼差しを冷淡に見返した。
連れられた子ども――異国の血を受け継いだのか、肌は白ではないが、自分を含めこの地にいる者達よりも淡い色をしていた。そして、染めでもせねばあり得ない金色の髪。見るからに年も幼い割に、牙を剝くように司令官に反発する性質。どれも、組織の欲を掻き立てるには十分すぎた。
「新たな戦力を連れて隣を攻める。“魔物の風”で略奪だ」
ムワンバが離れていくと同時に、アシャは乱れた上半身の服を適当に手繰り寄せて起き上がると、軍服の大柄な背中にそっと告げた。
「“魔物”は裏切るのでは……? 人ではないものは用心すべき……」
ムワンバは葉巻に火をつけながらアシャに向き直ると、彼女に煙を吹きかけた。
「お前ェの能力で奴の個を滅しろォ……」
アシャは、全身の痛みに言い返す気力を奪われる。
ムワンバは突如、アシャが乗る台の脚を蹴った。脆くなっていたそれは、散々軋ませたせいで弾け飛び、アシャは台ごと地面に叩きつけられた。しかし痛みに唸る間もなく、ムワンバに髪を掴まれると、額を押し当てられる。
「使えねェなら殺すだけだ」
アシャは無表情な眼差しを向けるに留める。限られた僅かな時間で子ども達に接してきたが、ここからは、これまで通りにはいかないような気がしてきた。例の子が際立つ存在である以上――
「……了解」
言い終えると部下の二人が近づき、アシャを乱暴に立たせると、部屋の外へ連れ出した。
ムワンバは向き一つ変えず、アシャが居た地面を踏みしめ、向いの壁に腕をつくと、そこにうつむくように凭れかかった。
この壁の向こうを想像するにつれ、自ずと口元が吊り上がる。“殺す”という快感に胸が昂る。
“自由”を奪われたのだから奪い返す。貧しかったのだから裕福になる。そこに転がる奴らがしてきたように、邪魔は鉛と刃で排除する。




