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同じ言葉なのに
嘘の約束通り、マツムラさんと並んで歩く。
さっきまでの緊張が、まだ少し体に残っている。
でも、隣を歩く人が違うだけで、こんなにも空気が変わるんだと思う。
無言でも、苦しくない。
しばらく歩いたあと、マツムラさんがふっと言った。
「せっかくなんで、お茶でもしていきますか」
同じ言葉。
さっき、スズムラさんに言われたのと、ほとんど同じ言葉なのに。
こんなにも、気持ちが軽い。
「……はい」
自然に、そう答えていた。
無理をしている感じがない。
断らなきゃ、と身構える感じもない。
ただ、少し休みたいな、と思った。
それくらいの気持ちで頷ける。
さっきまでの「怖い」とは、まるで別の感覚だった。
人と一緒にいるのに、安心できる。
そんなこと、あるんだ。
私は、少しだけ不思議な気持ちで、マツムラさんの隣を歩いた。




