受け止めてしまう人
「スズムラさん、前にも何回かトラブルになってて」
マツムラさんは、少し言いにくそうにしながらも、はっきりとそう言った。
「悪い人ではないんですけど……距離感が近すぎるというか」
私は、静かに頷いた。
やっぱり、そうなんだと思う。
私が感じていた違和感は、間違いじゃなかった。
「困ったら、誰かに相談してください」
マツムラさんは、まっすぐこちらを見て言う。
「佐藤さんでも、サポーターの人でもいいですから」
少し間を置いて、
「一人で抱え込まないでくださいね」
その言葉は、思ったよりも重く、ゆっくり胸に落ちてきた。
——一人で抱え込まない。
そのとき、ふと別の言葉が浮かぶ。
全部受け止めなくていい。
前に、マツムラさんに言われた言葉。
あの帰り道。
静かに、でも確かに言われたあの一言。
全部受け止めなくていい。
あのとき、私は確かに思ったはずだ。
——そうか、受け止めなくていいんだ。
少し楽になった気がした。
肩の力が抜けた気がした。
なのに。
気づいたら、受け止めていた。
届くメッセージに、全部返そうとして。
答えようとして。
何か役に立たなきゃいけない気がして。
いつの間にか、また抱え込んでいた。
言われていたのに。
ちゃんと、教えてもらっていたのに。
どうして、できなかったんだろう。
私は、自分の手元を見つめる。
何も持っていないはずなのに、
何かを抱えているみたいに、少しだけ重かった。
マツムラさんは、それ以上何も言わなかった。
ただ、いつも通りの穏やかな表情でそこにいた。
そのことが、少しだけ救いだった。




