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大丈夫を三回
ショートケアのプログラムの一環で、お花見に行く日。
参加者は、病院とショートケアのビルがある最寄り駅で待ち合わせだった。
お花見の場所は国立公園。そこまではバスで向かうらしい。
一時間に数本ある路線バス。
それだけのことなのに、胸の奥が少しだけざわつく。
未だに、公共交通機関には少し緊張する。
人の多さ。
どこに立てばいいのか。
降りるタイミング。
全部を同時に考えないといけない気がして、頭が忙しくなる。
バス停の前で立っていると、にしひがしの佐東さんが明るい声を出した。
「あのバスに乗りまーす」
指さす先に、ゆっくりと近づいてくるバス。
白と緑の車体。
参加者が少しずつ動き出す。
私は一度、足元を見て、それから顔を上げた。
大丈夫。
大丈夫、大丈夫。
心の中で小さく言う。
満員電車じゃない。
ひとりで乗るわけでもない。
隣にはショートケアの人たちがいる。
深く息を吸う。
ドアが開いて、人が順番に乗り込んでいく。
私はその流れに、そっと足を踏み入れた。




