↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
88/95

88_私とネージュと長い夜(アロイス視点)①

 夢を見ていたような気がする。



 当主になって先代である父親と話して。

 開拓先の領地から家に帰ってきて。

 妻に話したいことがあったから話して。

 妻が家から出て行って。

 今まで決めていた寝る時間になっても寝られず、やっと寝られたと思っても目を覚ましたら身体は更に疲れていて。

 魔力暴走は魔道具の包帯である程度止めてもらっている。

 でも、起きている最中、ずっと頭痛がして、目の前が真っ白で、私は……。



 ****



「――?」



 私は目を開けた。



 シックな柄の天井と、それを照らす照明の光。



 この家の天井の柄は当主になる前から何度も見る機会があった。昔と比べると少々色味が変わっているような気がするが、この家から出発した一年前も、今も変わっていないはず。

 なのに……何故、こんなにも違和感を覚えるのだろう。



「……!」



 暫く見つめていて理解した。

 天井の柄自体は変わっていない。変わっているのは照明の方だ。

 私の寝室は照明が白かった筈なのに、ここはオレンジの照明をしている。



(ここはどこなんだ……?)



 慌てて上体を上げると、近くで「目を覚まされましたか」と声がする。

 ベッドサイドにはロージー――この家の使用人が控えていた。



 私の動揺とは裏腹に、使用人は落ち着いた様子をしている。



「ロージー。ここはどこなんだ。この部屋は私の寝室ではないな? ……ロージー、お前の部屋か?」

「こちらは、奥様の……ネージュ様の部屋です」

「なにっ!?」



 その言葉を聞いて、私は部屋の中のものを確認する。

 ……ベッドサイド近くにある本棚。

 夜の十時を指している時計。

 オレンジの照明。

 私自身が先程まで横たわっていた、広いベッド。

 頭の重みを受け止めていてくれた枕。

 肌触りの良いシーツ。



 よくよく確認すると、ここには寝具店の商品が沢山使われているようだった。



(ネージュの寝室は、ギルドの商品と同じものを使っているということか。そうか、ここはネージュの寝室。寝室……)



 そのことについて考えると、なにやら落ち着かない気持ちになる。


 私は身を捩らせてベッドから足を下ろした。少しふらつく私の肩をロージーが支えて、心配そうに見つめてくる。



「アロイス様、まだ病状は治った訳ではありませんよね?」

「……そうだ。だが、今までよりはずっと良くなっている」



 私は魔力暴走の対処法として魔道具の包帯を頭に付けている。

 包帯は漏れ出た魔力を受け止めてくれるが、許容量を超えると溶け落ちてしまう。だから数時間ごとに使用人が私の包帯を取り替えていた。

 今目覚めて確認したが、意識を失う前と今とで包帯は変わっていないようだった。魔力暴走は完治した訳ではないが、少し静まっているらしい。




「それならば良かったです。ですが、まだ安静にして下さい。食べ物や飲み物が必要ならば持ってきます」

「いや、いい。それよりも――ネージュはどこにいる? 他の部屋を使っているのか?」

「ネージュ様は今は中庭におられる筈です。ここにお呼びしましょうか?」

「不要だ。私が会いに行く。ロージー、お前はもう自室に戻っていいぞ」

「……かしこまりました。交代の使用人はこちらの部屋で待機させます。体調が思わしくない際は、すぐに戻ってきて下さい」



 使用人に命令を飛ばした上で、私は部屋を出て行く。



 中庭、中庭……。



 中庭へ続く廊下を歩きながら、私はふと考える。



 ……そういえば、ネージュは何故家にいるのだろうか。

 彼女はこの家を出て行った筈では無かったか。



(いや、でも……。もしかしたら、それも……夢、なのか?)



 魔力暴走の影響もあって、ここ最近起きたことが夢なのか現なのか、少々曖昧だ。

 もしかして、ネージュが出て行ったというのは勘違いなのではないか?

 だって、あれが現実だとするなら、ネージュが普通にこの家にいるのはおかしいじゃないか。だから――。



 ****



 中庭にはネージュがいた。

 正確にいうと、ネージュとシエラ――使用人もいて、何か話し込んでいるようだった。

 シエラは、私の存在に気付いたのかこちらに近付いてくる。



「アロイス様、起きられましたか。お身体は大丈夫ですか?」

「前よりはな。シエラ、この場を離れてくれないか。ネージュと二人になりたい」

「そう、ですか。しかし……」



 シエラは少し迷うようにネージュに目線をやる。彼女は行っていいわよとシエラに促した。

 そうして、私とネージュは二人きりになった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。