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77_ホテル審査の結果と

 ホテル審査の日が終わって、暫く経った。



 私は寝具店の様子を見つつ、新商品開発を考える日々を送っていた。

 一号店も二号店も、他の出張店も業績は好調だ。

 でも、新しめの商品というのはいつ評判が傾くものかわからない。なるべく調子がいいときに次の手を打ったほうがいい。



(……それに、ホテルの審査結果の発表というリミットがある。睡眠ギルドのホテルの審査が落ちたという噂が流れば、寝具店の評判にも関わるかもしれないわ。『本当は癒やされるなんてまやかしじゃないか』なんて思われたら……)



 次の商品の案を紙に書きつつ、油断するとそんな思考が頭を支配する。



 ホテルの審査に落ちたからといって、今まで作り上げてきた寝具が失われる訳じゃない。

 そう思うようにしていたけれど、あれこれ終わった今になって新たな不安は湧いてくる。



 ……でも、審査までの時間で自分なりにやるべきことはやった。

 落ちた場合は……その結果を飲み込んで、ギルドのメンバーに謝りに行こう。そう考えていた。



 そんな私のもとに、マーシーがやってくる。



「ネージュ。手紙だ」

「なに……? 私宛なの?」

「ギルド宛ともいえるし、あんた宛ともいえる。ホテルの審査の結果が返ってきたんだ」

「……!」



 私はマーシーから封筒を受け取った。緊張が身体に表われたのか、手紙を受け取ろうとする指先まで心臓になってしまったかのように動悸がする。指が震えて、まともに封も切れなさそうだ。

 そんな私の様子を慮ったのか、マーシーは手紙の封を切って、中身だけを私によこした。



「…………」



 私は手紙の文面を目で追う。


 様々な堅苦しい文面が書いてあったが、主な伝達事項はひとつだ。



『デイドリームホテルの審査は、合格とする』



 そう書いてあった。


 手紙の中には、審査合格後の次の手続きについて細かい字で諸々書いてある。これらもよく確認しなければいけないだろう。

 だが、私は結果発表の文面から目を離せないままだった。



「…………」



 私は、じっと『合格』の字を見ながらぱちぱちと瞬きをした。

 ホテルに泊まって勉強をした日、カミラとの面会の日、そこから審査の日までの準備、それ以前に沢山の寝具を作ってきたこと……色々な出来事が胸のうちによぎる。



 審査結果が出るまで今までずっと緊張していたからか、頭が一瞬パンクしたようだった。

 そして、瞬きをした目からじわりと涙が溢れる。



(あ。私……)



 顔を手で隠して、こっそりと涙を拭った。

 目の前にマーシーという他者がいて、まだまだ彼と色々な仕事を進めていかないといけないのに、情緒不安定になっているところを見せるのは嫌だった。




 だが、彼は何かを悟っているようで、私のことを穏やかな目で見つめている。




「仕事がうまくいけば誰だってそうなる。特にこれはあんたが叶えたいと言っていた事業だしな。俺も嬉しい。今度ギルドで祝杯をあげないとな」

「うん……。みんなが助けてくれたから合格することが出来たの。マーシーも、私の色んな調べ物を引き受けてくれたよね。ここまで一緒にやってきてくれて、ありがとう」

「……まあな。その代わりと言っちゃなんだが……」

「ん?」



 微笑んでいたマーシーが、どこか悪巧みをするような笑みに変わった。

 そして、もう一枚手紙を取り出して私に見せる。



 それはカミラから私に宛てた手紙だった。



「……何これ?」

「俺もまだ確認していないからわからない。あんたが来た後に確認しようと思っていたんだ」

「ホテル審査についてまだ何かあるっていうこと?」

「ホテル審査で追加の何かがあるなら、その手紙に書いてあるはずだ。だから恐らく違うことだろうと見ている」

「……?」

「だが、またカミラがあんたを指名しているらしい。ネージュ。追加で一肌抜いで貰うぞ」


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