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68_カミラの睡眠について

 

 マーシーとの作戦会議を経て、私はひとつひとつ課題を取り上げていくことにした。



 まずひとつめ。

 カミラの睡眠の悩みについてだ。




 カミラは、睡眠ギルドの寝具を使ったことがあると言っていた。

 その上で、自分の睡眠の悩みには効かなかったとも。



 マットレスや布団を新調しても、カフェインを避けるようにしても、「長い時間眠れない」という問題はクリア出来なかったらしい。

 だから、睡眠よりも起きている時間を充実させるべき――。

 それがカミラの主張だった。



(「沢山眠りすぎる」っていう悩みはよくわかるけど、「長い時間眠れない」っていう悩みは……私にとっては無縁なものだから、ちょっとわからないな)



 カフェインやアルコールは睡眠に悪影響を及ぼし、長く眠れない原因になる。

 だが、カミラはそれらは摂取しないようにしているらしい。

 その上で、うまく眠れない……ようだ。



(でも、もう一つ可能性がある……。カミラが嘘を付いてる、という可能性が)



 マーシー曰く、ギルドの担当者が気に入らないが故にその商品の使い心地について難癖をつけてくるのはよくあることらしい。

 今回カミラが眠れないと言ったのは、彼女が睡眠ギルドに対して難癖をつけているのか、それとも……。




(やっぱり、彼女に関しては追加の調査が必要かも。マーシーに協力して貰わないとね)



 ****


 ――カミラ・ブリスウィッツに関する証言について。



 私はそう書かれた書類を見つめる。

 マーシーがギルドのツテを使って、今までの彼女の働きぶりについて情報を集めてくれたらしい。




 ・ホテル内の視察は数日に渡ってしっかり行う。

 ・食べ物のNGがいくつかあるので、NG食材は連れてきたブリスウィッツ家の使用人に食べさせる。

 ・視察によって出す審査結果は、業界の平均と同じくらい。



「うーん……」



 調査結果の書類を読みながら、私は首を傾げる。



 カミラと面会したとき、彼女は私に厳しく当たった。

 が、この情報だけ読むと、普段の彼女には大きな問題が無いように見える。他のホテル審査の職についている人間たちとそう変わらないのではないだろうか。

 彼女は睡眠ホテルに対してだけいやに厳しかった……そういうことなんだろうか。




「あ」



 頭の中で考えながら文を読み進めていると、ある情報に目が留まった。

 ・ホテルでの睡眠時間は細切れになりがち と書いてあった。



(今までのホテルでもそうだったってこと? じゃあ……カミラが睡眠の悩みがあるというのも、難癖じゃなくて多分本当のことなんだ)




 どんなにいい寝具を使っても、途中で目覚めてしまう……。


 それは彼女の体質なのかもしれない。



 私は七時間は眠らないと元気にならないけど、全ての人間が同じような体質だという訳ではない。

 世の中には、睡眠時間が短くても生きていけるショートスリーパーという者もいるらしい。五時間くらいの睡眠でも問題なく過ごせるという人も少数ながらいるのだろう。



 でも、カミラはそれに該当する訳ではなさそうだ。

 睡眠が途中で途切れている上に、彼女の体調は良くなさそうなのだから。



(……体調が良くないなら他の人にチェンジして欲しいとも思うけど、私のホテルが『最高の癒しを』って謳ってることもあって、彼女が審査に当たったのかしらね……)




 それなら――彼女の言い分にはある程度向き合わないといけないかもしれない。

 眠りに問題を抱えている人も、ホテルに泊まったらたちどころに改善する。理想をいえば、私はホテルをそういう場にしたいのだから。




(……でも、私自身は夜中に途中で起きちゃうということはないわ。夜に寝たら朝までずっと眠っていられる。だから今回、自分自身で実験することは出来ない。他の人間と協力して調べないといけないわね)

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