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ムレスズメ  作者: リンネ カエル/霖廻 蛙
売れない作家のリトライ
6/38

第五話「木陰 雛子──①」


[過去]


 私には、好きな人がいる。

 それは、教え子である……十八歳の少年。


─────────────


 禁断の恋。

 そんな事は分かってる。


 ダメだと分かってても、会話して、体が触れ合えば……異性として感じてしまうのは、人間の本質として、仕方ながないことなんじゃないかとさえ思った。


 

 だから、自分の中でルールを課した。


 一つ。彼の心が壊れないようにケアすること。

 二つ。付き合うのではない。彼とは、共に今の関係を利用すること。

 三つ。そして、卒業後にもう関わらないと伝えること。


 本気にさせてはダメだと思ったから。


 相談に乗るだけ。そう……。

 初めはそんな気持ちで関係を始めてしまったことを……私は後悔することになる。


─────────────[回想]


 出会いは彼が十五歳の時だった。


 『私立 鬼灯(ほおずき)学園高等学校』に赴任(ふにん)してきて、二年目。担任として一年二組のクラスを受けもった。


 今年も一年生のクラスを受けもつことになり、少し嫌だった。


 だって、まだ精神的に幼くて、反抗ばかり。

 授業中は話は聞かないし、話してばかり。


 正直、私の声なんて届かない生徒に嫌気がさしていった。

 

 でも、彼は違った。

 元々、弱気な子だったし、話したこともあまり無かったけど、ある日の補習の時に彼が話しかけてきた。


「木陰先生は、悩みとかありますか?」


 私は一瞬戸惑った。

 生徒の手本である先生が、悩みがあるなんて言ったら、不安にさせてしまうのではないかと思ったから。


「んーん!ないわよ!」


 なるべく元気に、明るく答えた。


「そうですか。」


 えっ?それだけ?

 聞いてきたのに、それで終わり?

 嘘でしょ?


 そんな記憶が、彼と授業のことではない……初めての会話だった。


─────────────


 半年くらい経った頃、彼に元気がないことに気がついた。

 私は補習の時に二人きりだったから、そのタイミングで聞いてみることにした。


「ねぇ、立波(たてなみ)くん。 最近元気なさそうだけど、何かあった?」


 この年頃の男の子が相談しにくいことは、前年でもあったから理解していた。

 だから、ちょっと切り込みすぎたかな。って言った後に内心焦った。


「……!」

「………いえ。別に。」


 明らかに動揺があった。

 この子は何かを隠してる。そう思った。


「そう…。 何かあったらすぐに言ってね!」

「担任として相談にのるから!」


 自分の子供でもあるまいし、他人の子供。

 私に子供はいないし、欲しいとも考えた事はなかった。

 あまり深入りしたらダメだと思ったから、その時は深く関わろうとしなかった。



 数日後、彼は学校を休んだ。

 一週間も。


 何があったかは分からない。

 担任として心配だったから、親御さんに連絡をして状況を聞いても、母親にも答えてくれないそうだった。


 だから、待つことにした。

 こういうのは、時間が解決するモノだと思ったから。


 その数日後、彼は学校に登校した。


 私はホッとして、いつも通り接していた。

 でも、彼の顔には笑顔はなかった。


 今でも鮮明に覚えてる。



 何かに絶望して、悲しそうな顔をしていたのを。


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