第四十一話「『終章 雨の日に笑うとき』」
[──作品の内容──]
雨音が死んでから夏休みも終わり、俺はまた学校に通い始めた。
心に穴が空いたまま学校へ向かい、窓の外を見上げながら授業を聞いた。
あのあと、正式にいじめの調査が入って、俺をいじめていたヤツらからの謝意を受けた。
そんなこと、俺にとってはどうでも良くなっていたし。いじめはなくなった後も、俺の周りには誰もいなかった。
いいんだ。
誰もいなくても、あの時までは
アイツが居たから。
アイツが向こうで元気にやってくなら、俺がこっちで元気にやらないのは……怒られちまうだろ。
だから、アイツの分まで──
──────────
[──回想──]
あの日、俺と出会ったアイツに俺は
アイツのことを何も知らないのに酷いことを言った。それがどれだけアイツが望むことだったのか。
今なら分かる。
誰かを助けたいと想う優しさは──
偽善ではなく、本当に必要だと求めている人にとって、それは……
たった一つの希望だったんだ。
暗い、音も聞こえない静かな海に落ちた心に
本当は届くはずもない光となって届くんだ。
俺が欲しかったものを
アイツが一番欲しかったのに…
あの時の俺は、何にも気づけなかった。
だから、雨の日の下で見た虹と
雨音の笑顔に救われたんだ。
「また会ったね。 雨の日にしか泣かないの?」
「……るっせ。 今度は傘すらねぇーのかよ。」
「う〜ん。 私も…泣きたくなっちゃってさ。 あはは。」
「……!」
「風邪ひくぞ。 橋の下に行こうぜ。」
「うん。」
「……ぅっ。…ぅう。」
「………。」
初めて見た、クシャクシャに崩れたアイツの顔。
初めて聞いた、震えるように泣いた小さな声。
初めて一緒に共感した──
押しつぶされるような痛み。
アイツは何も言わなかったけど、アイツが泣くのを黙って聞いた。
でも、胸が苦しくなってきて、溢れ出す感情に流されていく内に俺も泣いていた。
その全てが、雨の音にかき消されてゆく。
その音が、背中に背負う重荷を落としてゆくように──
ただ、嫌なことを忘れることができた。
そして、自分の弱さを知る秘密を持った彼女に
俺はひとりじゃないんだと思わされたんだ。
この瞬間は、心地が良くて
体は雨に濡れて冷いはずなのに、あったかく感じた。
二人だけの世界が、ただただその時が
その一時でいいから、止まれば良いな。
そう思ったんだ。
「止んだな。」
「止んだね。」
下を見続けていた雨音とは違って、俺は空を見上げていた。
「──!」
「……虹だ」
「え?」
「見てみろよ。」
しばらく黙ったまま見上げていた後、一言だけ呟いた顔に──
「……綺麗…。」
その一瞬に俺は、彼女に見惚れてしまったのかもしれない。
「はぁ〜スッキリしたー!」
「たまには、誰かと泣くのも悪くないかもな。 ははっ」
「バカね。 こういうのは、誰かと笑うから良いんでしょっ」
そう言って、青空の下で笑うキミの笑顔に誘われて
俺自身も笑っていたことに気がつかなかった。
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だから、アイツの分まで俺は
これから先も笑って生きていく。
(完)
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[──現在──]
よし。まあ、こんなもんでいいだろ。
雨音は過ぎて、虹が架り、その一時の時間が流れていく。
そんな幸せな一部の思い出を語った二人の物語だ。
タイトルは──『君と過ごした時間。』だな。
とりあえず夏に向けて出す作品はこれでいこう。
あとは何度か推敲しながら、校正し直せばいいだろ。
まあ、そもそもテーマの狙い撃ちが前提の作品だが……ハマらなかったとしても作っておいて損はないしな。
よーし!完成したらまた雛やジェイドに見せてやるか!




