第四十話「『第四章 雨音 トキ』」
[──現在──]
まぁ、ところどころ端折ったが、こんなもんでいいだろう。
あとは、終章前となる雨音編の構想だな。
三章までは架流側の心情を描いたが、四章は雨音側の心情を描けば問題ない。
そうすることで、二人の想いのすれ違いなどが読者に伝わるはずだ。
一人称と三人称を混ぜてはいるが、ベースは一人称だから読者の迷いもあまりないだろうし。
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[──作品の内容──]
病室の外から、聞き馴染みのある声が微かに聞こえた。私は私ががんであることを知っていたけど、そっかぁ。もうきちゃったかぁ。と思わされた。
「もう、余命一ヶ月は切っていると思います。」
「そうですか。 はい。 はい。」
「……はい。わかりました。」
ドア前で話しているお母さんとお父さんの声。
病院の医師が話している会話の内容の意味は分かる。
ああ、もう無理なんだ。
あと、少ししかないんだ。
そんなことを思いながらも、現実を受け止めたくない気持ちと、諦めることしかできない自分の体を呪った。
もう少し、あと数ヵ月、数年。
いや、ほんとは───
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夏休みに入ったって聞いたけど、私がお願いしてもないのに。アンタは、毎日毎日私のお見舞いにくるようになった。
「毎日毎日、アンタの顔見てたら飽きるってば〜あっはは」
うそ。ほんとはすごく嬉しい。
お母さんとお父さんもいつでも来られるわけじゃない。
何も出来ない、何もない、ただこの静かな空間の中で、私は──
誰もいない間
たった一人で、死ぬ恐怖と戦い続けている。
「はぁ? せっかく来てやってんのに、今度から果物持ってこないからな。」
「それだけは持ってきて! アンタはすぐに帰ってもいいから!」
ごめんね。こんな言い方しかできなくて。
心配させたくないから……
でも、ほんとはもっといてほしい。
毎日ここにきてほしい。
誰かがそばに──
あれ…なんでだろう。
なんで、アンタは私の所へ来てくれるの?
んーん。いまさらそんなこと考えても仕方ないよね。
私のことを、私のために来てくれるあなたに。
私は救われてる。
好きなものは特になかったけど
ただ、アンタに来て欲しくて……
そのための言い訳を、適当に言っただけだったの。
それでも、明日もまた来てくれるなら
キミに迷惑をかけてしまっていたとしても……
私は生きれる。
─────────
今日も会えた。
日に日に体が動かなくなってきて、笑顔が引き攣る瞬間があるのが分かる。
今日の私。可愛いかな。大丈夫かな。
いつもキミが来ても、すっぴんになんにも反応してくれないから。
どう思ってるのか分かんないよ。
「わぁ〜! りんご飴〜!」
「…そっかぁ。 お祭り…だったんだ。」
……キミは、誰かと回ったのかな。
私が一緒に……
んーん。彼には彼の人生がある。
私は一緒にはいられないから。
ダメ──
「……来年は、花火を見に行こうぜ。」
……行きたい。私がいい。
まだ……死にたくない。
生きて、キミと一緒に花火を見に行きたい。
「……。 うん。」
「うん。 ぜったい行く。」
その時は、こんなに泣かないから。
笑顔で一緒に見るから…。
……こんな私は見ないでよ。
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なんだか肌寒い。もう冬みたいな気分。
起き上がることも出来ないし、首も上手く動かせない。
でも、まだ、キミの声は聞こえる。
「……今日は少し寒いわ。 窓を閉めてくれるかしら。」
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手足がだんだん動かなくなってきた。
それでもまだ、少しだけなら動かせる。
「……アンタの手…冷たいわ。」
「…外はもっと冷たいのかしらね。」
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「……雨音。梨剥いたけど、食べれるか?」
あなたがくれたものなら、ほんとはなんでも食べたいけど、今はもう……
食べたら吐き出してしまうようになった。
少しでも食べなきゃ、そうお医者さんからも、お母さんからも言われたけど、体が気持ち悪くて受け付けないの。
食べたくても、食べられないよ…。
「……いい。」
「…そっか。」
ごめんね。ごめんね。ごめんね。
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口元ももう、動かせなくなってきた。
あとどれくらいの時間が残されてるのかな。
私が生きれる時間は……
もう少し。あと少しだけでいいから。
……待ってほしい。
もう少しだけ、あなたの声を……聞きたい。
もう一度だけ、あなたの顔を……私に見せて。
前が見えない。いつも暗闇で怖いよ。
体に力も入らない。
いやだ。いやだ。まだ、死にたくない。
もっと、みんなと一緒に。
あなたの笑顔を見ていたいのに。
「雨音、今日は雨だけど天気が良くなるみたいだぞ」
「そうだ! 今度は海にも連れてってやるよ」
「……。」
海……お母さんから聞いたのかな。
私が海が好きだったこと。
海は──綺麗で
「あの辺りの海は綺麗なんだと! この前見せた写真のとこだからさ、元気になったら行こうぜ」
私が私でいられる気がした場所だから。
裸足で砂の感触を感じて、波の音に乗せて踊り、風に吹かれながら私は揺れる。
「それから──」
どれだけ孤独に向かっていようとも
太陽が照らす海は光り輝いていたから。
私も……
「虹だ……」
にじ?
雨が止んだのかな。
あの時も……
あなたと見たあの日の景色。
もう一度、一目でいいから見たい。
お願い、少しだけでいいから……
動いて。
「……きれ…い…。」
良かった。良かった。
最後にまた、あなたと見れた。
もう大丈夫。
ここからはひとりで大丈夫。
「……そうだな。」
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[──現在──]
あとは、ラストを書いて終わりか〜
まあ、結局ヒロインは亡くなるが、この後の主人公のこれからの人生やあの日の思い出を描いて締めだな。
バッドエンドとまではいかないが、誰かを想う気持ちは単純じゃないもんなんだよ。
それが、恋人であれ、家族であれ、誰かにとってのあなたっつー存在は……
今を大切にしなきゃダメなんだ。
だから、後悔してからじゃない
後悔するかもじゃない
後悔しないように
伝えておかなきゃいけねぇのさ。
雛。オレは──
何があってもオマエを、幸せにするぞ。




