とりあえず作戦を考える?
「なに、その剣!」宿に帰ってきて部屋に入ると、ガウェインがすっとんきょうな声を上げた。「まかさゲイ・ボルグを売ったのじゃないでしょうね」
「そんな事するか、ゲイ・ボルグは打ち直しに出した。これはその間の代用品として借りたものだ。」タルティウは、背中から大剣をおろして壁に立てかけた。「悪いが、剣の仕上がりは明後日の夕になる。出発は明明後日になりそうだ。遅れるので、申し訳ない」
「その分、各自準備を怠らないようにすればいいだけだ」クーは、マントの中に手を入れると、3本の瓶を彼女に差し出した。「お前の分だ、他の連中には既に渡してある。」
「手数をかけたね」タルティウは、手を伸ばして、クーからそれらを受け取った。「いくら掛った?」
「一瓶、銀2枚だ」クーは、静かに答えた。タルティウが腰につけた袋を取り外そうとすると、「後でいい」と付け加えた。
「それにしても、こんなちっこい瓶の薬で大丈夫なのかね?」ルギドは、自分に渡されていた小瓶を指で摘まんで言った。
「かなり強力な品物だと思う、瓶からかなりの魔力を感じる」クーは、ルギドに顔を向けたが、相変わらずフードの中にある表情は読み取れない。
「それは、信じるより他ないだろう」タルティウは、ルギドに向って言った。「装備のほうは揃ったかな」
「服はあったが、槍については、できあがりは明日になる。」ルギドは、ややむっとした表情をした。「えらくぼったくられた」
「その分、期待するしかないな」タルティウは、なだめるように言った。
「私は、直ぐにでも出かけられるよ。弓には既に炎の属性を追加してあるし、店でも今以上のものは無かったしね。それに矢は、売るほど買ったから、がんがん打ちまくれるよ」ガウェインは、にこにことしていた。
「じゃあ、あとは体力をもう少し付けておけ」ルギドが、自慢そうに腕の筋肉を盛り上げさせた。「お前は大技を連発すると、直ぐにへたってしまうからな」
「淑女が、そんな気持ち悪い、筋肉なんか付けられませんよーだ」ガウェインは、舌を出した。「クーの薬ですぐに精神力も体力も復活させるもん」
「回復薬に頼るものじゃあない。本来の基礎体力も大事だ」クーは、フードの下から、低い声で彼女をたしなめた。「回復薬そのものには、多くの力はない、体の中に残された力の源からより多くの力を絞り出すものだ。基礎体力がなければ、死ぬぞ」
「クー、分っているって。伊達に黄金級の資格を持っているわけじゃあないからね」ガウェインは、両腕を曲げて、肩の高さまであげると、剥き出しの腕にぽっこりと筋肉を盛り上げてみせた。「見よ、この力こぶ・・・って淑女にこんな真似させんなよ」
「その割りに、疲れるのが早いよな」ルギドが、じろっとガウェインを見た。
「うん、飛ばす方の力はいくらでも持つのだけどね、矢に込める念がしんどいのよ」ガウェインは、腕をおろした。
「あんたは、でかいのを打ち過ぎるからね」タルティウは、にやりと笑った。「遠くから私らを巻き添えにしかねないようなものを飛ばすし」
「あー、この前のこと根に持っているでしょ」
「当たり前だ、魔獣は粉々、俺たちも死ぬかと思った。」ルギドは、その時のことを思い出して、ため息をついた、
「今度は、洞窟内だけに、威力は押さえて、後方からの援護を頼む」タルティウは、ガウェインに寄ると、ぽんと肩を叩いた。「そういうことで、軽く一回目の作戦会議でもしようか」
「今まで通りの竜への対処で構わないだろう」ルギドは、つまらなそうに言った。「洞窟内というのも今回が初めてではないしな」
「そうだよ、そもそも情報がなさ過ぎる。作戦もなにもあったもんじゃないよ」ガウェインもルギドの意見に賛成するつもりで言った。
「たしかに事例がある、だが情報がなさ過ぎる。」クーが、静かにうつむきながら上目遣いでタルティウに目を向けた。「どうして氷の青龍なのだ」
「氷穴にいるからでしょ」ガウェインは、いまさら何を心配する必要があるかと思いつつやはり視線をタルティウに向けた。
「分っているのは、グラシエスの洞窟に居る青龍ということだけだ。本来川底に住む竜が何故、山奥の洞窟に籠もっているのか、我々より階級が低いとはいえ、記録師され喪う程に全滅にすることになったのか」タルティウは、腕を組んだ。
「偵察猿を一匹捕まえるべきだ」クーは、同じ姿勢のままで言った。「プロカルの目を使って、猿を洞窟に入れる」
「そうだね、少なくともなんでもいいから情報の収集が先だ、洞窟までの道中に、ゴブリンの巣の一つや二つあるだろうから、それを襲って一匹手に入れよう。」
「そうと決まれば、さっさと飯に行こうよ。」ガウェインが、張り切った声をあげた。「ご飯!ご飯!」




