宿屋の一室にて
「さて、情報は余りにも少ない」タルティウは、借りた部屋の一室でベッドに坐り、3人のメンバーの顔を順番に見つめた。「どうする?」
「我ら、黄金級の戦士の集まりなら、なんら問題はないだろ」髪をそり上げたルギド・ロイが、大きな声で張り上げた。「力でねじ伏せるだけだ」
「今まで対処したやつらの階級は?」フードを背におろした魔法師のクー・ロイが、組んだ皺だらけの掌を膝においたまま訊いた。年老いた顔には、深い皺が幾重にも刻まれていた。
「王室からの情報では、今まで正式に送り出されたメンバーは、私達よりは格下だろう。それでも銀レベルばかりだ」タルティウは、短髪の女性に目をやった。「ガウェイン、ここの住人からなにか情報は?」
「氷の青龍、定期的に洞窟から出てきて、水害を新開拓地に与えていたそうよ。おかげで新地は、いまや放棄されているみたい。
竜が出て来たところを攻撃したいけど、空高く飛んで地上に降りることは無さそうだから、空中戦ができない私達は、こっちから洞窟に入るしかないみたい。その洞窟だけど、洞窟の中に大きな扉があるから、いぶし出すことも出来ないわね。当然、その扉の向こうに行ったものは、生きて帰ってきてないらしいから、情報は全く無し」ガウェインは、両手を上に上げた。「全くお手上げなのよね」
「場当たりで、やるしかないかな」タルティウは、腕組みをして目をつぶった。
「いや、あくまでも予想だが」クー・ロイが口を開いた。「名前から察するに氷の属性を持った魔獣となれば、炎の属性の技を繰り出す事で撃退することが可能と思われるが」
「そうね、私達としては寒さ対策をした上で、各自炎の属性の技を用いれば、可能かも」ガウェインは、弓を引く真似をしてみた「ファイアーアロウを青龍にたたき込んでやるわ」
「しかし、青龍はもともと水の属性だ」タルティウは、苦虫を潰したような顔をした。「大丈夫か?」
「なにくそ、俺様の赤熱の槍で奴の血を沸騰させてやるさ」ルギド・ロイが、槍を繰り出す仕草をした。「お前のちっこい火とは大違いだからな」とガウェインに向ってにやっと笑った。
「ちっこい火とは何よ!このハゲ」ガウェインは、ルギドに掴み掛った。
「ぼうっ切れに付いた火なんか直ぐに消えちまうぞ」ルギドは、ゲラゲラ笑いながら小柄なガウェインのなすがままにさせた。
「こら、やめろやめろ」タルティウは、立ち上がってガウェインをルギドから引き離した。
「こんどそのケツの穴に矢をつっこんでやる」ガウェインは、引き離されながら叫んだ。
「こいつの炎の矢や爆裂矢の威力はお前も知っているだろう」タルティウは、あばれようとするガウェインを押さえ、それでも笑っているルギドに向って彼を窘めた。
「まあな・・・」ルギドは、頭をぽりぽりと掻いた。「本当にケツの穴に矢を差し込まれたらたまったものじゃない。悪かった」
「全く!!」ガウェインは、ようやく大人しくなりタルティウは彼女を放した。
「俺は、今回の狩りについては、かなり危険なものを感じる」クーは、周りが落ち着いた雰囲気になったところで静かに言った。
「私もそれについては同感だ」タルティウは、再びベッドに坐った。「今まで多くの狩人を撃退した存在だ。我々とて生半可な気持ちで臨むことはできない。多分一気にカタを付けることが最善だと思う」
「タルティウ、私もそれを考えていた。急所とか見つける余裕はないと思う。各自の炎の属性技を最大限使用し続ける事がこの狩りの要点だと思う。」クーは、頷いた。
「時間は無いが、ここで滞在しつつ持久力のさらなる改善に取り組もう。クーは回復ポーションをできるだけ沢山買っておいてくれ」
クーは、返事の代わりにゆっくりと頷いた。
「前金はたっぷりあるからねぇ。良い装備を買いたいわぁ」ガウェインは、にこにこして言った。
「それも良いが、季節外れの冬の衣類を忘れるなよ」タルティウは、ベッドから立ち上がった。「解散しよう」




