↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/13

11



「ほとんどキノコ雲出てましたからねー」


モスの言葉に、俺は無言で蟹の身を囓る。

昆虫人ってアゴ左右って言うより左右下の三方に開くんだなぁ、とかどうでもいい事の方が脳裏をよぎる。


「醤油取って下さい」


「あ、はーい」


ウェンディさんが醤油の瓶を渡してくれる。

なんかモスさんによると大豆と麦麹が在るので練金と調合であっさり作れたとか…


「しかし幾らドムさんでも蟹喰う時だけは静かになるんですね」


ゆでたてのロッククラブの中身をみんなでほじりながらネスが言う。


「ネス。食事中は静かにせぇ。蟹への礼儀や」


「ドム、ドム、その冗談が通じるのはお前と同じ出身地の奴だけだ」


もそもそ食べる二人を余所に、ロッテさんは殻ごとバリバリ脚を食べていた。

そしてゴリゴリ咀嚼した後口元に手を添えて笑顔で言う。


「オークPCはこういう時に殻も食べれて得ですわね」


骨付き肉も骨ごと行けるのかなー。


「しかしファイアボルテクスですっけ。あんなの普通に使われるようになったら近接は廃業ですね」


つくづく「魔導」が一般でなくて良かった、とモスは無視する俺を無視して話を続ける。

ファイアボルテクスとはあのファイアストーム改だ。気が付けば火風魔導に入ってた。


「でも魔導の術って一発目だけは制御可能、次から制御が難しいってよくあるし…」


「ありますなぁ。お陰で私にも自ら使用を禁じた禁術があるくらいです」


福々しい空気で蟹を食べていたサンダーさんが唐突にそんなことを言う。

制御しきれない禁術…ファイアボルテックスも今度からはそんなカテゴリかもしれない。

いらない所で初弾を使っちゃったかなぁ。


「「魔導」は実に興味深い……」


「あ、蟹の殻捨て取ってくださーい」


「はぁーい」




で、なんで俺がいまこんな所で蟹を食ってるかというと、サンダーさんのお陰である。

一度宿に隠れた俺だが、サンダーさん曰く特殊で大きな魔力を持っているらしく、ソナーに懸かると一発で居場所が分かるらしい。

で、隠密能力を持つギルメンに手伝って貰い、俺をインタビュー?しようとするPC達を躱しながらこのギルドホームまで来たわけだ。

このギルドは前評でも分かるように一般PC的には近寄りがたい場所らしく、隠れるには最適と言うことらしい。


…そして何より、蟹がゆだっていたのだ。




「で、君はこれからどうするつもりかね」


全てが終わったお茶の席で、サンダーさんは出し抜けに聞いてきた。


「とりあえず…この街のほかの街ってないんですかね」


今この街にいるのは危険だし、とにかくどこかに行った方が賢明だろう。


「なるほど…近場ですと南の森を抜けると街道があり、その先に港町がありますね」


もっとも、時間的に近い、というだけで距離は相応にありますが…とサンダーさんは続け、お茶を飲む。

南か…そこはPCが多いのだろうか?


「御察しの通りこのゲーム的には2番目の街に相当するようですからね。人は多くあなたの要望には添わないでしょう」


やっぱりか、と思っていると、横からドムが口を開いた。


「ほな、遺跡迷宮の向こうの廃都はどや。ボロやけど生活はできるで」


西の向こうはそうなっているのか。にしてもそれでは…


「そこ、寂しすぎでしょ?大体そこから先は又迷宮で、その先を知ってる人なんて一人しかいないじゃない」


ウェンディさんが横から口を開く。するとマックがぼそりと、まぁこのゲームはある一人しか知らない場所だらけだがな、と呟いた。

どんな奴だよそいつ。


「東の草原の向こうは森で、さらにモンスターの村みたいな物があるですっけ?」


ネスの方はそんな確認を言う。それでは行きようがない。すると残るのは…


「北、ですわね」


ロッテがカップを静かに置いて開いた口に、サンダーさんが続けた。


「そうなりますね。幸い、北の山岳の向こうにはドワーフの町があります。難易度的には3番目の町、と行った所なのでしょうが…難易度が直接的に3番目なのは山を直接越える場合です。坑道を越える場合は道に迷わず罠解除が出来るならそう強い敵は出ません。」


これならあなたにうってつけでしょう、とサンダーさんは付け加える。

そして最後に、サンダーさんはあとで一人だけでギルドマスターの部屋に来て下さい、と行って、食事は終了になった。




ばたん、と扉が閉じた、研究室じみた部屋。

招かれた俺の前にはサンダーさんが居た。

しかも…あの日と同じ、襤褸とステッキを持って。


「率直に言いましょう。あなたはこれらの力の形が、意味が分かりますね?」


…隠しても意味もなさそうなので、俺は首を縦に振る。


「これは死霊術の力…北の山岳の地下深くで手に入れた力です」


そして、サンダーさんは訥々と話し始めた。


自分のステッキも服も、元は山岳坑道の底に迷い込んだ時に助けてくれた男がくれた物が材料だと言うこと。

死霊術も魔導もそれを得たことに依って得たスキルであり、この力はその男のお陰であること。


「この布地と棒は元は在る封印装置の一部だったとのことなのです。ですが魔力に疎い彼にはそれを解くことが出来ず、敵対もしないそれに興味を示さなかった彼は、落ちていた一部を持ち帰るだけで終わったとのことです」


そして、その材料らを貰い助けて貰う時、代わりにその男に頼まれごとをしたこと。


「そして、彼は私にこういいました。『俺の代わりにあの封印を解いてくれ。そして強い敵がいたなら呼んでくれ』と」


「……それで、その封印を解くことを俺に?」


「いえ、そこまでは言いません。しかし何らかの情報が手に入るなら、それが彼への恩返しになるでしょう。そして何より、興味がおありなのでしょう?――死霊術に」


そりゃ、まああの強さを見たら在る。

禍々しい気も『そういうもの』と思えば納得できる物に思えてきたわけだし。

そして俺が肯首すると、では、と最後に言い忘れた事をサンダーさんは教えてくれた。


「坑道上部には蝙蝠やスライムのような敵がいますが、下部にはゴーストやゾンビのようなアンデットが出ます。死霊術を求めるなら、それらの対策をしていくべきでしょう」


ただ信念だけで全てを尽く打ち倒せる人間はそう多くありませんからね、と彼は締めくくっていた。


ほんと、多分同一人物なんだろうけどどんな人間なんだよ!!




旅に出る前、旅支度をするにも苦労する俺に、ギルドのみんなは今回だけだぞと言って作業場を貸してくれた。

練金台もだ!

目標は予備の弓の製作、そして無くした矢の補充だ。

他の物はエリナ経由で融通して貰い、ついに革鎧にも草擦や尻革が付いた。

薄手の手袋も得て弓が引き安くなったし、ブーツだって新しくなった。

ヘッドギアも装着してついに初心者離脱、という感じだ。


で、弓についてなんだけど、正直アンデット相手にはこの弓で良い気もする。

精霊の加護があるのだし、たぶん死霊なんかには聞くだろう。

問題は効きすぎて坑道を破壊しないか、という事である。

だったらダウンチューンした物を…じゃあエリナに旧作持って来て貰えば良かった?

いやいやそんなことはない、今度は新作でいこう。

坑道で使う予備だから、全長60~70cmの短弓にしよう。今までのはどれも1mこえてたからな。


で、材料を見直す。するとゴブリン素材がたんまり入っていた。



『小鬼の王血:ゴブリン王の怨念が籠もった血液。呪術的塗料の原料になる。粘りが強い』


『小鬼の角:ゴブリンの小さな角。意外と硬く加工しにくい。』


『小鬼の爪:ゴブリンの小さな爪。意外と大きく弾性に優れる』


『小鬼の毛;ゴブリンに少量生えている髪の毛。数は少ないが太くて長い』



あ、なんかこれすっごい作りたい感じの物が見えて来ちゃった。


まず練金台で小鬼の王血を「分解」します。するとネットリとした怨念抜群の『小鬼の王液』とサラサラしたただの血漿である『小鬼の血漿』に別れる。

血漿の方は掘っておくと多分固まるのでインベントリにしまっておくとして、次いで爪。

これを30cmほどの弓形になるように、精密な「調合」でひっつけていく。

そしてこれを二つ作った所で、真ん中に握りになるように半円の直線パーツを付ける。

これで爪はCの字みたいな形になった。

そして次は角だ。

これも練金で付けたいが、その前にセルフエナジー・エンチャントでヤスリと角を強化して弓筈の形に仕上げていく。

で、これを何度か失敗しながら二つ作って気付いた。

練金の時にもエンチャントしてたらどうなるのかな?


結果は「すんごい制御が難しい」。

でも結果は上々、それらはまるで一つの物質であったかのように、高い魔力を宿したまま固まった。

これ、重ねるほど難易度上がるな、ぜってー。

そして次は土台作りである、が、素材はまたしてもカーボンファイバー。

なぜかって?木炭余ってるから、ってのも在るんだけど、混ぜたい物があるから。

そう、『小鬼の毛』をファイバーと融合させ、C字の爪にギリギリと編み込んでいく。

セルフエナジーエンチャントを書けたファイバーを編むのには、もちろん筋力に集中させたウォームアップボディも使っている。

そして満身の力を込めて結い上げたCの字にを練金台に置き、『小鬼の王液』をかける。

すると即座に無軌道な怨念の力が吹き上がってくるのでウォームアップセンスをガン掛けしてマジックリヴィジョン。

そして液を弓に練り込みながら「融合」を行い、同時に怨念の方向が一方向を向く様に調節していく。

そうして怨念の方向が定まりだした後はゆっくりと「熟成」をかけ、『小鬼の王液』が固まるのを待った。

…そして最後に、ほぼ同じような工程で編み上げた弓弦を弓筈に掛けると…!

赤黒い弓はMに近い、リカーブボウの形を示した。

繊維にみっちりと固められ、血液にさらに固められた爪の弓は、一弾きすると


ボゥン


と鈍い恨みのような音を立てた。


『小鬼地獄の短弓:これでもかと濃縮したゴブリン一族の怨念を死の糸で縛り付け作った合成弓』


めっちゃ禍々しぃー!!


コレがゴーストに効くのかはともかく、取り回しがいいのは確実である。というか魔力のほとばしりを見てると殴っても効きそうな気がするんだけど。




……で、次は矢を作るべきか。

やっぱ幽霊相手に弓矢って効くのかなって疑問は浮かぶが…破魔矢なら効くかな?

蟇目の矢を作ってーなんかめでたげな物で鏑矢にすれば…


とりあえず木工で作ってみよう。


『鏑矢:撃つ時に音がする特殊な矢。邪を払う効果があると言われている』


言われている、じゃなぁ…

もう一個もそれっぽく塗りわけて作ってはみたけれど…


『破魔矢:紅白に塗られた矢尻のない矢。縁起を担ぐ』


こんなものがなんになるっていうんだ!

鳥の羽はなくなっちゃったし、あとは調達した矢を加工した石矢たちと僅かな鉄矢しかないし。


こーなったら当たって砕けるしかないかもな!




あ、そうだ、杖も作っておこう。

こうなったら魔力高そうな感じに…

矢筈作る時と同じ感じで骨だの牙だのの怨念の無い素材を分解で粉末に、そして固める前にー


「えーっと、なむはちまんだいぼさつっ!」


とりあえずお祈りして、大量のセルフエナジー・エンチャントを掛け、融合で杖…というか短い棒の形に固める。

結構ぎっしりして重量感があるが、ブッ叩くならかえって使えるかも知れない。

そしてここからが本番だ。

彫刻刀を手にした俺は処理能力を加速させ外部ネットに繋ぐ。

そして手元と死霊を同期させて……一晩中堀った。




「おーい、ブレイドくーん、まだ出ないのー?」


朝、ウェンディさんが聞きに来た時にそれは完成した。

自分でもやり過ぎたと思う。


『祈念骨の杖:骨杖の上に文化を問わぬあらゆる退魔の文言が刻んである必死の一品。此処までやればどれかは効くだろう』


しかも結果はこれである。


「ゴメン、ウェンディさん、ちょっと、寝かして…」


そして俺はひっくり返った。


今回話が動かない感じかなぁ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。