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ゴブリン達が整然と動いていた。

ただし、人間に向かってではない。ゴブリンの群れに向かってだ。

それらはすべて――死体だった。

動く緑の小鬼の死体は一人の男に率いられていた。


戦士3人の護衛と斥候の見張りを連れ、ステッキを突いて戦場を闊歩する様は、まさに「大佐(カーネル)」と呼ぶにふさわしい。

しかし…屍の軍勢は、同時にあまりにもおぞましかった。

物言わぬ同類の死骸が武器もなく群がり、牙で、爪で、自分たちに襲いかかる。

あるものは果敢に手斧を振るうが、ある死骸の頭部半ばまで刺さったそれは甲斐無く動かなくなった。


「クリエイトアンデッド!」

時折、死骸の山の前でサンダーが呪文を唱える。

すると山は兵隊となり、大佐(カーネル)に付き従って戦場を往くのだ。

最早元より烏合の衆に近かったゴブリンの軍は、次々に増えていく死者の軍勢の前に総崩れ、逃げる者が逃げる者を押し倒し、踏みつぶさんという有様である。


この死霊術の魔力、これこそが俺の感じた、あのおぞましい魔力の正体だったのか……




「ブレイドさんっ!」


そして俺は、エリナの声で戦場から目をそらし身を隠す。

射手をほとんど射潰していなければ危ない所だったかもしれない。


「ブレイドさん、あのギルド…「ファーストフード」のマスターさんの戦闘を見るのは初めてですか?」


「や…そうだな、初めてだ」


「あの人はあの戦いぶりから大佐(カーネル)って呼ばれてるんですが、本名はサンダーです。うっかり呼ばないであげて下さいね?」


いや、それは知ってる、と答えると、エリナは、そうでしたか、と少し胸をなで下ろす様な空気を見せた。

こうして失礼を働かないように念を押す彼女の心根も立派だが、そこには恐怖の裏返しもあるのかも知れない。

あの姿は、確かに畏怖を呼ぶ。だが――同時に――

「大佐(カーネル)」。絶対呼ばないようにしよう。




そして日も暮れ始め戦いは追撃、殲滅戦に移った。

矢の補給の時に俺の弓について聞き出そうとする奴もいたが、エリナに睨まれて全員が引いていった。

俺の周りは意外と知名度も押し出しもデカい奴が多いのかも知れない。


そして近隣にゴブリンが余り残らない様に可能な限り狩り尽くす、ということで、パーティーがそれぞれ組まれていった。


もちろん俺もエリナと…と思ったら、俺の前に影が差した。


「よろしいですかな。よければ私と臨時PTを組んで欲しいのですが」


それはサンダーだった。




エリナもエリナでギルド関係の頼みをついに断り切れなくなり離脱するとの事だったので丁度良く、俺はサンダーの後ろをついて歩いていた。

その他に付いてきたのはロッテと、ドムと、なんとモスだった。


「私も少数戦ではやれることくらいあるんですよ?」


「コイツもケッコー小技豊富やからなぁ」


「おしゃべりはそこまでに。どこにゴブリンがいるか分かりませんわよ」


確かに夕暮れの草原には沢山の物陰があり、隠れ場は幾つでもありそうだった。

これは魔力感知に頼った方がいいな…

風の魔力、土の魔力、残されたおぞましい…きっと怨念の魔力。

そんな魔力の中を見渡していると、俺の目をとつぜん強い魔力が覆った。


「ぐわっ!」


「おっと!?」


「せや、忘れとったサンダー!嬢ちゃんは魔力が見えるんやった!」


「興味深いですね…」


モスはともかく突然駆け寄ってくるドムとサンダーに大丈夫だとかぶりを振ると、サンダーはあわてて口を開いた。


「今のは私のマジックソナーという走査魔法です。魔力を発して反射を見るのですが…まさかあなたが「魔導」以上の知覚スキルをお持ちだとは」


と、言うことはサンダーも「魔導」を持ってるのか。

というのはともかく…


「ともかく…すぐ後ろに敵がいます!皆さん構えて下さい」


ばさり、と襤褸を翻してサンダーが杖を構えた。

といってもその構えは魔法使いと言うより杖術という感じだが。近接も行けるのだろうか?

そしてギャー!と叫んで丘の影から飛び出してきたゴブリンの頭に、錆びた槍が投げ刺さった。

見やればドムが次はぼろい棍棒や錆斧などをインベントリから出して足下に落としている。

投擲にもそう言う戦い方もあるのか。

しかし押し寄せてくるゴブリンの群れは思うより多く、俺も矢を番えては高速で連射しているがこちらに来るのまでは止められそうにない。


ガゴン!


と、次の瞬間錆斧がゴブリンの群れの真ん中を打ち抜くように貫通した。

見やればロッテが棍棒を振り抜いている。

もしかして…と見ていると…

ドムはまたぽいっと棍棒らしき物を投げる。

そしてそれをロッテが全力で打ち付ける!


ガゴン!


地獄のノックにゴブリンは一撃で数匹をなぎ倒されるが、それでもまだ数が多い。


「付呪、ゾーン、フルパワー。ウィードトラップ」


と、思っていたらゴブリン達がごろごろ転がり出す。

よく見ると足下の草がそこかしこ結ばれたように変質していた。

さっきからかがんでいたモスの仕業なのだろうか、彼は魔力の消費かはぁ、とため息をついている。


しかし一部のゴブリンはそれでも飛び出してくる。

俺は火を使います!といって、転んだゴブリン達の真ん中にファイアヤードを放った。

そして焼け出されるゴブリン達の一匹をダガーで切り捨てる。

だが次の一匹の手斧には力負けし、ダガーごと後ろに転がされた。


「ゴブリンソルジャーだ!引け!インパルスアクト!」


サンダーの声が響いたかと思うと、次の瞬間、ぼん、とゴブリンの頭が側頭から弾けた。

何事か、と見やるためには俺も反射的に演算加速を使う必要があった。

それは、全身に紫電を纏わせたサンダーの杖がゴブリンを打ち据え、次いで流れるように次々とゴブリン達を砕いていく様だったのだ。




「あれ、なんなんです?」


ゴブリンを掃討した俺たちは、回復を要求するサンダーにリフレッシュエアを使いながら尋ねた。

癒しの風を手に溜めず全身の肉に沿わせて満たすように治療するのだ。


「もとよりこっちも聞きたい所なんですがね。まあいい、これと大体同じ物ですよ」


はぁ、と答える。つまり魔導で変質させた魔法、という事だろうか。

反射速度を加速するんですよ、その代わりダメージがありますが、とネタ晴らししてくれた。


「魔導は…まぁ偶々見る物を見でもせんと手に入りませんからな。面白いでしょう」


サンダーは屈託無く笑った。確かに、面白いスキルではあるがね。




「そうですね…魔導の面白い所、見せて良いですか?」


夜も近づいた頃、少数隠れていたゴブリンを一方的に発見した俺は、サンダーさんにそう言った。


「動画、いいですよね?」


何故かモスさんが返答し、サンダーさんは肯首してくれたようだった。

なので俺は盗賊の斥候能力を最大限発見し、可能な限り静かに丘に近づいた。

そして相手の死角でゆっくりと処理速度を上げると、魔力を操作して範囲を定め、あの魔法を使った。


「ファイアストーム!」


ドン、と爆円がゴブリン達を包み込む。

だがそれだけで終わらせるつもりはない。


「エアシールド!マジックリヴィジョン!」


炎の範囲から出ようとしたゴブリンの周りに、円周状に吹き込む暴風の壁を作る。

すると炎は爆発の様に燃えた。


……後には鉄すらも溶け残りしか姿を残さない焦熱の荒野が出来た。


幸い、メンバーは笑ってくれていたが、ロッテとドムの笑顔は引きつっていた気がする。

モスは分からないだけかも知れないが、サンダーは確実に笑っていた。

本当に恐い人だな、おい。




そして俺たちは街に戻ったのだが…

街のPC達はあの弓と、掃討隊の見た爆発の話で持ちきりで、逃げるのには随分苦労した。

宿屋の固執に飛び込んでログアウトする日が来るなんて、思いもしなかったな。








『掲示板』



『(光の)強武器話題スレ5(巫女)』

1:名無し

ここは強い武器について話すスレです。

リアルスキルが強い人、例の人の話は別スレでどうぞ。

過去スレは過去ログ倉庫へ。




382:名無し

あの弓すごかったねー

どこのドロップなんだろ


383:名無し

案外自作かもしれんぞ

前例がいるし


384:名無し

光るしチートじゃね


385:名無し

>>383

ソード氏は前例じゃなく悪霊w


386:名無し

確かに善というよりは悪だけどw


387:名無し

>>386

例の人の話は止めるんだ

人類に触れて良い領域ではない

>>384

ELデバイス入れてるのをゲーム機にスキャンさせてんじゃね?

今時のは入れ墨と同じでその位は再現するし


388:名無し

でも同じ弓をエリナ嬢が持ってたのも目撃されてるんだよな。

弓を取り替えるほどの仲って可能性もあるけどユニークでない可能性もある。


389:名無し

でもエリナ嬢が使ってる時にあの威力は出てないんでしょ?発射速度も異常だったじゃん

なんか条件あるんじゃね?

>>386

あとあれ善悪じゃなく狂属性でしょ?


390:名無し

やっぱり光るのが大事なのではw







『【何とかして下さい】防衛戦反省スレ【大佐ぁ!】』

1:名無し

大佐強すぎワロタ


2:名無し

もうちょっと建設的な事を書け

カーネル強すぎワロタとか


3:名無し

一緒じゃねえか!


4:名無し

しかもあの人魔術系の癖に近接まで強いんだってね…




以下カーネルこわい




57:名無し

やっぱりあの死霊軍団はレアスキルのお陰なん?


58:名無し

当人はアイテムで習得したって言ってるらしいけどねー

それより今回のMVPは弓の子にあげたい


60:名無し

なんで?あのビームの後確かに敵は崩れてたけど


61:名無し

物見してた「千里眼」もちの一人だけが見てたらしいけど、あれでキングが即死したくさい


62:名無し

大将首じゃ!誉れじゃ!


63:名無し

でも見えてた人がほとんどいないから評価者はいないんだよねー


64:名無し

隠れた英雄とか胸熱だな

弓タソprpr


65:名無し

隠れてない動画見たけど見た目もprprもんだったよ


66:名無し

マジカ!コクって来る!


69:名無し

ムチャしやがって…


70:名無し

ムチャしやがって…


71:名無し

ムチャしやがって…


72:名無し

そういやあの子ものすごい早撃ちだけじゃなく

飛んできた矢を捕まえて打ち返してたよな


73:名無し

そんな曲芸してたの?

エリナ嬢が飛んできた矢を打ち落としたらしい事は聞いたけど…




以下たわいもない話題がつづく…



防衛戦さらっと終わりました。

ちなみにELラインを入れるのは表の人はあんまり存在を知らない過激なタトゥーを入れてるくらいのイメージです。

踊り子さんが一時的に入れたりはするけど常時入れてる人はめずらしいですね。

ゲーム内でまでそれを表示する人はなお稀。


あとサンダーさんのイメージは某堀出土の方。

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