7 女の子たちが俺の誕生日のために頑張る
俺は麿莉奈が得意とする料理を選ばなかったのは何かの策略かと思う。他の女の子に料理を作らせて、麿莉奈より劣ることを認識させるためかな。
時々、麿莉奈は没落令嬢とはいえ負けず嫌いで、他の女の子にマウントしているように見えることがあるからな。でも明からさまじゃなく、さりげなくやるのが、麿莉奈のしたたかなところである。他のヒロインをいじめる悪役令嬢っぽい。
しかし麿莉奈が策略を巡らすのも俺のお嫁様になりたいと強く願っているからなので、悪い気はしない。
それに千紘姉さんが料理係を引き受けたことで、麿莉奈の策略は不発に終わっている。
千紘姉さんの料理の腕は、麿莉奈の想定をきっと超えているだろう。何より俺が幼い頃から食べているお袋の味って感じなのだ。
千紘姉さんは麿莉奈の策略を阻止するために、料理係を選んだのかな……?
千紘姉さんはやさしいから、他の女の子が料理で苦労しないように気を使った可能性は高いと思う。
かえって千紘姉さんのやさしさを引き立てる結果になってしまったな。
「さ、みんな、召し上がれ」
千紘姉さんに促されて、みんなが「頂きます」をする。
「すごいなぁ。こんなに作るの大変だったでしょ」
俺はテーブルいっぱいに並べられた料理に感嘆する。
「七面鳥の丸焼きはお店で買ったけどね。他はだいたい私が作ったよ」
千紘姉さんは事も無げに答える。
俺はまずハンバーグを箸で切って口に運ぶ。肉とデミグラスソースのハーモニーが口中に広がる。
「めちゃくちゃおいしい」
「ほんと? よかったぁ」
千紘姉さんもがぱあっと明るい顔をする。
「おいしいです。千紘先輩は料理が上手ですよね」
藍も同意見。
「まりなの料理はプロっぽいんだけどなー ちひろさんの料理は家庭的で、しかも美味いんだよ。ゆきとの心をがっちりとつかんでそうだぜ」
桃香はよくわかっている。
母親を幼い頃に亡くした俺は千紘姉さんが母親代わり。料理の腕では麿莉奈が勝っていても、愛情に飢えている俺は千紘姉さんの料理の方が温かみを感じてしまうのだ。
「さすが千紘さん。うう……ウチも見習って家庭的な料理を作った方がいいんやろうか」
麿莉奈が敗北感に打ちひしがれている。
他の子に料理を作らせる策略が裏目に出たと悟って、落ち込んでいるのかもしれない。
いつも料理を頑張ってくれている麿莉奈には申し訳ないが、千紘姉さんを甘く見てはいけない。
千紘姉さんは圧倒的に俺と過ごした年数が長いからね。俺の舌は、千紘姉さんの料理によって調教されているのだ。
五つ星シェフが作ったどんな素晴らしい料理でも、毎日食べてたら飽きる。千紘姉さんの料理が食べたいなぁってなってしまうので、誰にも勝てないんじゃないかな。
唐揚げに、カボチャスープに、シーザーサラダ。どれもおいしい。
七面鳥を切り分けて、みんなで食べる。
…………
「ふぅ お腹いっぱい」
俺は大満足。
「ゆきと、ケーキがあるんだ」
「まさか桃香がケーキを作ったのか!?」
「うまく作れなかったけど食べてくれるかな」
桃香が心配そうにする。
「もちろん。ありがたくいただくよ。デザートは別腹だし」
「じゃあ持って来るぜ」
桃香が冷蔵庫の方へ走って行く。
「驚いた。桃香がケーキ係をやってくれたなんて……」
俺は振り返って、桃香の背を見ながら呟く。
「桃香ちゃんはジャンケンで最初に勝ってケーキ係を選んだの。幸斗に作ってあげたくて、頑張ったのよ」
千紘姉さんが教えてくれる。
桃香の俺への熱い気持ちが伝わってきて、じーんとなる。
桃香は金髪ギャルだけど、外見からは想像がつかないほど家事をよくやっている。仕事で大変な母親の代わりに家事をやっていたから。
でもケーキを作るっていうイメージはなかった。桃香がやる家事は必要最小限で、趣味に走る感じではない。俺の誕生日は特別に頑張ろうってなったのだ。
「俺はケーキ係はニーナちゃんだと思ったんだよね」
レストランのシェフの娘だから、ニーナちゃんがケーキ係をするのが順当なところだ。
「わたしはプレゼント係Bなのです」
ニーナちゃんが笑顔で打ち明ける。
女の子5人が本来のキャラとはちょっと違う係でも引き受けてたのだ。俺の誕生日のために尽くしてくれたことに感動する。
今日は1時間おきに16回くらい投稿したいと思います。
お読みいただきますとありがたく存じます。




