6 誕生日パーティー【挿絵付】
◆◇◆
翌日曜日の夕方。
俺と女の子5人と氷室さんがダイニングテーブルに勢揃い。
俺はお誕生日席に座らされている。
今日は俺の17才の誕生日。女の子たちがお祝いをしてくれるという。
座席は……
俺
桃香 | ̄ ̄ ̄ ̄| 麿莉奈
藍 |テーブル| ニーナ
千紘 |____| 氷室
となっている。
氷室さんが端になる以外は女の子たちがジャンケンで決めた。俺に近い方が良い席ってことらしい。あらゆる機会で俺とイチャイチャしようとしてくれている。
テーブルには七面鳥の丸焼きやらステーキやらのご馳走が並ぶ。
みんな私服だけど、麿莉奈は着物姿で気合が入っている。
「ゆきと、おめでとー」
「おめでとうございます、幸斗さん」
「先輩、おめでとうございます」
「ゆきとさん、おめでとうございますです」
「幸斗、おめでとう。大きくなったね」
「みんなが俺を祝ってくれて幸せだよ……」
人生でこんなに誕生日をお祝いしてもらったことはない。俺の児童養護施設では誕生日会なんてなかった。千紘姉さんが祝ってくれただけだ。
「ふふ、幸斗様、おめでとうございます」
氷室さんも薄笑いして祝ってくれる。
「悪巧みしている顔に見えるんですけど……」
「こほん。一年後の今日、幸斗様の次の誕生日がお嫁様バトルロワイヤルの最終日ですから。いよいよ一年間のカウントダウンが始まるんだなぁと感慨深いです」
氷室さんの言葉で、場に緊張が走る。
タワマンに引っ越して3週間ほど経った。これまでは助走期間。これからが本番と言いたげだ。
「もう氷室さんたら、幸斗さんの誕生日やというのに……盛り下がることを言わんでもらえますか」
麿莉奈がちょっと怒る。
「失礼いたしました。せっかくあなた方が楽しい誕生日会にしようと考えたのに。部外者は黙っていることにしますね」
氷室さんは飄々とグラスに入った水に口をつける。
「今日はな、あたしたちが、ゆきとに喜んでもらえることを考えたんだ」
「そうなのです。氷室さんにやれって言われたわけじゃないのです」
女の子5人が自主的に誕生日会の企画を考えてくれたらしい。
氷室さんが仕切ると……俺が最も喜ぶプレゼントを渡した子が勝ち、みたいな競争を女の子にやらせそうだ。
俺の誕生日までバトルロワイヤルの材料にするのは止めて欲しいから、良かった。
「5人で分担を決めたんだ。ケーキを作る係とかプレゼントを用意する係とかね」
千紘姉さんが教えてくれる。
「へぇ」
「やりたい係がかぶっちゃうのもあったから、結局ジャンケンで決めたけどね」
「俺なんかのために頑張ってくれて、ありがとう」
感激である。
壁には『六文銭幸斗様♡ お誕生日おめでとうございます』と墨汁で横書きにされた紙が貼られている。堂々とした達筆である。
そして折り紙を切って作った輪っかが鎖のように繋ぎ合わされ、壁や天井に張り巡らされている。フラワーアレンジメントも飾られていて、パーティー感が満載。
「飾り付け係は藍ちゃんなのよ」
「ええっ!?」
俺はちょっとびっくり。
「先輩からすると、自分が女の子らしいことをするのは意外ですよね」
藍が澄ました顔で言う。
「確かに折紙の輪っかとか、お花は女の子っぽいけど、藍は女の子だし驚くことないよね。ごめん。墨で、『お誕生日おめでとうございます』って書いてくれたのは、和風な感じで藍らしくていいよ」
「自分は料理ができないし、飾り付けのセンスがいいとは言えないので、プレゼント係が良かったのですがジャンケンで負けてしまいました」
藍としては飾り付け係は不本意だったらしい。でも頑張ってくれて俺はうれしい。ほんとに女の子どおしで熾烈な係の奪い合いがあったんだな。
「素敵じゃん。俺は感謝の気持ちでいっぱいだよ」
「どういたしまして」
「料理は私が作ったんだ」
千紘姉さんがちょっと緊張の表情。
「なんだって!? 俺は料理係は麿莉奈だと思ったよ」
「うん。麿莉奈ちゃんが作った方がおいしいからね。私もその方が良かったと思うけど、麿莉奈ちゃんはプレゼント係Aを選んだから。私は料理係を選んだんだ」
「へえ」
麿莉奈はプレゼント係Aを選んだってことは、他の子がプレゼント係Bをやっているってことらしい。プレゼントは2つもらえそうだ。何だろう。わくわく。
知人の絵師さんから麿莉奈のイラストをいただきました。




